第2話 郷に入れば郷に従え
ガチャ、、、バタン、、、
周りが多少騒がしくても少し気になる程度の音がする靴箱を開け、いつものように上履きを履く。
周りの高校生は靴箱付近でも、すでに仲が確立しているグループで集まり雑談をしたり、今日というくくりでは初めて会った友達に「おはよう」を言い交す。
じゃあ私は、どうなのかと問われるとそんな無駄なことはしない。
最初で説明した通り、人類はすべからく例外なく100年くらいで死に至ってしまう、なら友達を作る意味も何らかの活動を頑張る意味もないのである。
そうしているとふと
「おい、見ろよ。ボッチ姫のご登校だぜ。」
などという舐めたセリフが聞こえる。
「うるさいな、私の名前は山内 すみれだ。さんないだぞ、やまうちじゃないからな」と私は心の中で唱える。
ご察しの通りボッチ姫とは私のことである。この台詞を言ったのはおそらく一学年
下の入学ほやほや高校一年生のはずなのだが新入学生にまで広がるほど私の悪評は、轟いているらしい。
高校に、入学して初登校日にした自己紹介で言った「誰とも仲良くするつもりはないので」がよっぽど効いたのだろうか、、、
まあ、そうなのだろうが。
かといって、私は一つも気にしない。それは、もちろん入学当初から言われ続けていて変に慣れてしまったというのもあるのだろうが、しょせんこんなことを言われるのは、おそらく高校生活が終わるまでだからだ。
なので、やっぱり私は気にしないし何なら後輩の馬鹿に付き合ってやろうという慈悲にも似た気概まで持ち合わせているのである。
そうこうしているうちに、自分のクラス2-Aにつく。
このクラスは、一年の時からメンバーが一緒で底抜けに仲がいいため入ってきたのがだれであろうとその時点でクラスにいる人全員でおはようを言い合う文化があるのだが、私の場合は、というと、、、
ガチャ、、、
私が入ったとたんに案の定静かになるそれまで騒がしかったのに私が歩く音が響くくらいに静かになるという特典付きだ。
私が嫌いなら、静かになるでもなくただ無視しておいてくれよと思いながら私は、席に着く。もちろん、居心地はよくない。よくはないのだが実は、このクラスの人間でボッチ姫などと罵る人がいない。
それは、表立って言わないだけで裏では言っているかもしれないし、学校中で嫌われている私を、クラスぐるみで扱いに困っているだけかもしれないがそれだけでも、意外とこのクラスは、学校中が居心地のよくない場所の私にとってはまだ、居心地の悪くない場所になっていた。
キーンコーンカーンコーン
ホームルームの合図だ。私は、この合図が好きだ。
なぜって?もちろんホームルームや授業が始まってしまえば私は、誰とも接する必要がないからである。常識だ。
そして、この音を合図にいつもなら禿げ始めた我らが担任が入ってくるのだが、、、
ガラッ
やはり入ってきた。その担任は、額を伝ってきた汗をハンカチで拭いながらずかずかと入ってくる。それは、いつもの光景、、、のはずだったが今日は違った。
いや、担任はいつもと変わらないのだがその後ろには見慣れない顔のいい男子高校生が自信に満ちた顔ですたすたと歩いてくる。
「誰だ?」そう思ったのは私だけではないだろうおそらくクラス全員がそんな考えに支配された。そうして、疑問が困惑を超えるまでに担任は続ける。
「ゴールデンウィークも終わり五月も始まったばかりだがお前らに朗報だ。この、
加藤暖が転校生としてこのクラスにやってくる。ほら、自己紹介だ。」
担任は、ぶっきらぼうにそう言い放つと加藤は、軽く頷いてはきはきした声でこう続けた。
「加藤暖です。血液型はAB形で、趣味はスポーツ観戦と釣りです。このクラスは、一年の時から同じメンバーだと聞きました。新しく入った新参者ですがどうぞ仲良くしたやってください。」
実に、耳心地がいいみんなが仲の良い(私以外)このクラスならすぐにやっていけるだろう。わたしは、偉そうながらそう思った。
すると次に加藤は、こう告げた
「突然ですが、みんなに伝えておかなければならないことがあります。
それは、僕の寿命があと半年しかないことです。短い間ですが仲良くしてください。」
私は、リアルに意味が分からなくて困惑してしまった。
担任は、声を上げてびっくりしていた。
なんでお前もびっくりしてんだよ。担任なら聞いてるはずだろ。
しかし、クラス中がどよめきだしたのもお構いなしにすたすたと歩きだし、空いていた私の席の隣に座った。
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