#私たちの新しい世界

 明け方の靄がまだ街を包む中、「カナリア」の暖かい灯りはひっそりと消え、葵樹と柊晶は夜の静寂を背にその場を後にした。

 重厚な扉が閉まる音と共に、二人だけの世界が始まる。

 タクシーで二人は葵樹の部屋へと向かう道すがら、夜が明けるのを待つように街は静かに息を潜めていた。

 彼らの足音だけが、絶え間なく続く時間の中で響き渡る。

 部屋に着くやいなや、お互いの理想を映し出す鏡のような存在に、心から引かれ合った二人は、互いの心象風景を深く理解し合うことで一つの融和を得ていた。

 そして、柔らかなベッドの上で生まれるささやかな接触が、やがて情熱的なキスへと変わるのにそれほど時間はかからなかった。

 自らの意外な行動に最初はとまどっていた二人だったが、目の前にある「理想の自分」と交わることにもはや躊躇はなかった。

 気がつけば「悪魔が着せた鎧」として嫌悪していたはずの自らの肉体を、お互いの前にさらけ出し、そしてさらには強く求めあっていたのだ。

 樹は晶を情熱的に迎え入れ、晶は樹の柔らかな肉体の上で静かに果てた。


 その瞬間、信じられないことが起こった。

 彼らの魂は寄り添った肌の温もりをともなって静かに


 混沌とした感情の渦中、二人は悲しみも喜びも含めた全てを共有する。

 葵樹は、突然変わった自身の体型、力強い肢体、それまで感じたことのない力と自由をその身に宿していました。

 その身体は、かつて憧れ、そして今は自分のものとなった理想の男性像を具現化したかのように、彼に圧倒的な喜びをもたらしました。

 彼は、部屋の鏡に映る自分の姿を見つめ、目を細める。

 そして関節一つ一つ、筋肉一つ一つに確かな男性の存在感を覚えた。

 柊晶もまた、樹としての身体に吸い込まれながら、女性らしい曲線美を持つこの新たなる肉体に自己を見出し、彼女の魂は歓喜に満ち溢れていました。

 鏡に映る美しく新しい自分に手を触れ、滑らかな肌の感触に戸惑いながらも、内に秘めた感情を表に現すことのできる喜びを噛みしめる。

 この事件は二人にとってまったく新しい始まりを告げるものだった。

 肉体の呪縛から自らを解放し、違う一面を教えてくれる。

 彼らは長年苦しみ抱えてきたジレンマから解き放たれ、真実と向き合うことを学びました。

 この不思議な出来事により、葵樹も柊晶もそれぞれの心の底にある願望を受け入れ、新しい自己の形を見つけ出した。

 外界の眼など気にせず、ただただ内面の声に耳を傾ける。彼らの魂は肉体を超えた絆で結ばれ、その絆は時を超え、形を変え、かけがえのない理解者として、これからも互いのそばにいるだろう。

 夜が明け、日の光が部屋に差し込む中、葵樹と柊晶はお互いをじっと見つめていた。

「彼らの魂は、今や互いに適した肉体で永遠の夢を見ている」といえるのかもしれない。

 そして、新たな日常が、彼らの心に新しい物語を刻み、永遠に続いていく。

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