ちるらむ ちるらむ
喜島 塔
壱
―― ちるらむ ちるらむ
嗚呼、また、あの声だ。
私は、その声を無視して眠りに就こうと試みたが、声はどんどん大きくなり、少しずつ近づいてくる気配すらする。とうとう、声は、私の耳元にまで到達した。堪らず目を覚ますと、私の視界には、此処彼処を虫に食われたような模様の天井が飛び込んできた。思わず、ギャッと声を上げると、病棟を巡視中の夜勤の看護師さんが薄緑色の間仕切りカーテンの中に入ってきて、
「
と尋いてきたので、私は、
「いえ……大丈夫です。痛みはないです……ただ、変な声が聴こえてきて眠れないんです。お薬の副作用なんでしょうか?」
と尋いてみた。
「うーん。彩織ちゃんが服用しているお薬の中に、幻聴の副作用が出るものはない筈なんだけど……」
看護師さんは処置ワゴンの上に置かれたノートパソコンで私の個人情報を見ながら答えた。
「明日、
そう言って、看護師さんは優しく微笑んだ。もしも私に大人になる将来があるのなら……看護師になるのもいいな、と思った。
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