魔法少女の兄も魔法少女

@gurenn1950

プロローグ

 月の光もなく、黒い雲に覆われた空。

 冷たい雨が降っており、強い風が吹いている。

 普通の人であればホテルや家の中ですごしているだろう。

 だがある一人の少女は違った。

 彼女は激しい雨の中、体長十メートル以上の黒い化け物達と殺し合いをしていた。


「邪魔だ。どけ雑魚ども!」


 銀色の装甲に覆われた機械仕掛けの鎧。

 それを纏う美しき少女は、雨で濡れた白銀のツインテールを揺らしながら、チェーンソーを振るう。

 超高速回転する無数の刃が、黒き獣の肉を斬り裂く。

 悲鳴が響き渡り、地面が赤く染まる。

 銀髪の少女はチェーンソーで次々と化け物達を屠った。

 獣の血と雨で濡れながら彼女は進む。深い森の中を。


「頼む、無事でいてくれ!」


 そう願いながら、焦燥に満ちた表情で少女は森の中を走る。

 走って、走って、走り続けて数十分後……彼女は足を止めた。


「……」


 少女の手からチェーンソーが滑り落ちた。

 今、彼女の耳には激しい雨の音も、強い風の音も聞こえない。

 鎧を纏った少女の銀色の瞳に映っていたのは、血塗れで倒れていた女の子の姿だった。

 その女の子は右腕と左脚を失っており、顔や胸などには深い傷跡があった。

 女の子の近くには、砕けたステッキが落ちている。


「あ…ああ…」


 地面に両膝をつける銀髪少女。彼女の身体が浅く光り出す。

 少女のツインテールが黒いショートヘアーへと変わり、機械仕掛けの鎧が黒いズボンとフード付きコートになった。

 そして顔つきが少女のものから、少年のものへと変化する。


「り…り……さ」


 少女から少年に……いや、少年に戻った彼は震える手で地面に倒れている女の子を抱き締めた。


「あ…ああ…あああ……あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」


 雨が降る暗い森の中で、黒髪の少年は叫びながら涙を流す。

 その叫びには、大切なものを失った悲しみと大切なものを守れなかった己の無力さに対する怒りが宿っていた。


<>


 魔導神聖歴485年、5月10日。

 日本の都市と言われる東京。

 その東京の空高く上に、浮遊する巨大都市が存在していた。

 都市の名は、浮遊学園都市『大和やまと』。

 大和には多種多様な種族の少女、女性が住んでいた。

 ケモ耳や尻尾を生やした者や翼を生やした者、普通の人間もいる。

 そんな色々な人が住む都市にある学生寮。

 その寮の扉から、青と白の制服を着た少女が慌てて出てきた。


「遅刻だあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 焦った表情で全力で走る短い緑髪の少女。

 瞳がルビーのように赤く、耳が細長いのが特徴。

 そんな彼女はポケットからスマホを取り出し、時間を確認する。


「まずいまずいまずい!あと五分しかない!」


 必死に走り続ける緑髪の少女。

 だがこのままでは学校に間に合わないと彼女は察する。

 故に、


「仕方ない。本当は駄目だけど、使うしかない!……【獅子の戦士ヘラクレス】!!」


 少女が叫んだ次の瞬間、彼女の両腕が黄金に輝き出した。

 光が収まると、少女の両腕には金色のガントレットが覆われていた。

 ガントレットに覆われた両腕を構え、彼女は言う。


「変身!」


 直後、少女の足元に黄金に光る紋様ーーー魔法陣のようなものが出現。

 その魔法陣から粒子が発生する。

 粒子は少女の身体を覆い、黄金の鎧と赤いスカートへと変わった。

 両肩の装甲は獅子の顔を模しており、彼女の緑髪の一部が金色に染まる。


「変身完了!よし、いっくぞ~!」


 鎧を纏った少女は足に力を籠め、弾丸の如き速さで駆け出した。

 学園に向かって高速移動する鎧少女。

 道路を走る車を追い越し、景色が流れる。


「見えた!」


 高速移動する少女の視界に、城の如き大きな建物が映っていた。

 その建物こそ彼女が通う学園にして、学園都市『大和』の中心部。

 

 魔法少女育成学園ーーー『三日月みかづき』。


 少女ーーー魔森まもりエイナは三日月に通う女子学生だ。


「よし!門はまだ開いてる!」


 急いで学園に入ろうとした。

 その時、エイナの進路上に黒い小さな猫が現れ、歩いていた。


「ウソォォォォォォ!?」


 このままではぶつかり、子猫が死んでしまう。

 そう思った彼女は子猫とぶつかる寸前、力強くジャンプした。

 おかげで子猫は無事…なのだが、エイナは違った。


「わわわわわ!止まってえぇぇぇぇぇぇぇぇ!」


 力加減を間違えたエイナは止まることができず、そのまま学園の窓ガラスを突き破った。

 パリィン!と甲高い音が鳴り響き、彼女は床に転がり、壁に衝突する。


「いってててて!…ここは?」


 ゆっくりと立ち上がり、エイナは周囲を見渡す。

 そこは大きな黒板といくつも並べられた机と椅子があり、青と白の制服を着た少女達が驚いた表情でエイナを見ていた。

 その少女達はエイナがよく知っている人達だった。


「ここは…私のクラス?」

「その通りよ、エイナさん」

「!!」


 聞き覚えのある女性の声が後ろから聞こえた。

 エイナは顔から滝の如く汗を流しながら、ゆっくりと振り返る。

 後ろにいたのは、額に青筋を浮かべた若い女性教師。


「ずいぶんと派手な登校ね、エ・イ・ナ・さ・ん?」

「せ、先生…これには事情があってですね」

「あら、どんな事情なのかしら?」

「いや、それはその……」


 担任教師から感じる威圧に、身体を縮こませるエイナ。

 そんな彼女に顔を近づけ、女性は告げる。


「後でお説教ね」

「す、すみませんでしたああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


<>


「はぁ~……めちゃくちゃ怒られちゃった」


 椅子に座って、机に頭を伏せるエイナはため息を吐いた。

 先程まで彼女は担任教師に説教されていたのだ。約一時間ぐらい。


「窓ガラスを壊した罰として、一ヶ月トイレ掃除に宿題倍か…いやだな~」


 二度目のため息を吐くエイナ。

 そんな彼女にクラスメイト達は心配そうな表情で近づく。


「大丈夫、魔森さん?」

「元気出してください」

「こういうこともありますよ」


 励まそうとするクラスメイトの優しさに、エイナは嬉しくて笑みを浮かべる。


「心配してくれてありがとう。でも大丈夫。私は元気だから!」


 明るく振舞うエイナ。

 そんな彼女の頭に手刀が落とされた。

 エイナは「いたっ!?」と声を上げ、頭を押さえる。


「元気だからじゃないよ。少しは反省しなよ、エイナ」


 エイナの頭に手刀を落したのは、身長二メートルはある褐色肌の女の子。

 茶色の短い髪とスイカ並みの大きな胸。そしてボーイッシュな顔立ちをしていた。


「いたいよ修~。親友に酷くない?」

「親友だから僕は叩いたんだよ。まったくいつもいつも遅刻ギリギリに到着して」

「うぐっ」

「しかも人助けや魔獣との戦闘以外で魔法少女に変身」

「うがっ!」

「そして今日は窓ガラスを壊す」

「ぐはっ!?」

「ハッキリ言ってダメダメ」

「い…痛いことを言わないでよ」


 正論という名の刃に心を斬り裂かれたエイナは、胸を押さえる。


「で、でもでも仕方ないじゃん!私、朝メチャクチャ弱いんだよ!?」

「まぁエルフと吸血鬼のハーフだからね。エイナは」

「それに頑張って毎日夜遅くまで勉強してるんだよ!」

「それは偉いね。で、どんな勉強していたの?」

「妹が兄を自分のものにする方法ふぎゃ!?」


 大きな少女ーーー大石修は先程よりも強く、エイナの頭にチョップした。

 エイナは頭を押さえて、涙目になった。


「なんで叩くの!?酷くない?ねぇ酷くない!?めっちゃ痛いんですけど!?見てよ、たんこぶができたんですけど!?」

「バカなことを言っているエイナが悪い」

「バカとはなんだバカとは!こっちは本気で自分の兄を私のものにしようとしてるんだよ!!」

「余計にダメだって言ってんの!兄妹が恋愛しちゃダメ!!」

「いいんです~!血は繋がってないからセーフです~!」

「それでも仮にも兄を自分のものにしたいとか、頭おかしいよ!」


 ギャーギャー!と騒ぎながら、睨み合うエイナと修。

 そんな二人を見て、クラスメイトは「また始まった」と苦笑する。


「それにしても魔森さんってお兄さんがいたのね」


 クラスメイトの問いに、エイナは「うん、そうだよ」と答える。


「一つ年上の兄でね。種族は人間。とても優しくして、自慢の兄なんだ。見た目は普通なんだけど、そこがたまらなくいいというか……食べちゃいたい」

「え?」

「なんでもない……この学園に通えているのも兄のおかげなんだ」

「へぇ~いいお兄さんね」

「そうなのそうなの!」

「ちょ、魔森さん!?」


 興奮した様子でエイナは、クラスメイトに顔を近づけて饒舌に語る。


「私が困ったときはいつも助けてくれるの!悲しいときは悩みを聞いてくれたり、頭を優しく撫でてくれたりしてくれるの!あとクリスマスやハロウィンや誕生日とかは美味しい料理を振舞ってくれて」

「はいストップ、エイナ。落ち着いて」


 エイナの首根っこを掴んで黙らせる修。

 まるで猫のようにぶら下がるエイナは頬を膨らます。


「む~。せっかく蓮兄れんにいの良さを教えているのに」

「教えなくていい。みんな引いてるから。先輩の良さは僕も知ってるから。それとそろそろチャイム鳴るよ」


 修がそう言った時、キーンコーンカーンコーンと音が鳴り響いた。

 チャイムの音を聞いて、教室にいた女子生徒達は自分の席に座る。


「ほらエイナ。自分の席に座る」

「分かったよ。だからそろそろ降ろしてよ」


<>


「ーーーでは、ホームルームも終わったことだし、授業を始めるわよ。はい皆、歴史の教科書とノートを出して。今日、やるところは26ページ」


 女性教師の言われた通りに、エイナを含めた女子生徒達は教科書とノートを取り出した。


「さて今回、学ぶのは基本中の基本。魔法少女の誕生についてよ。なんで魔法少女という存在が生まれたのか?はい、魔森さん。答えなさい」

「え?私ですか?」

「そうよ。なにか問題でもあるかしら?」

「問題大ありですよ!昼寝ができないじゃないですか!!」

「魔森さん。宿題二倍から四倍ね」

「すいません。喜んでやらせていただきます」


 エイナは椅子から立ち上がり、答えた。


「今から485年前……つまり西暦2025年の頃、突如世界中に異世界とつながった謎の穴、ゲートが出現。そこから黒い怪物が現れました。その怪物の名は魔獣。魔獣は多くの人々の命を奪い、あらゆるものを破壊しました。人々も抵抗しましたが通常兵器では効果がなく、敗北。人々は死を待つことしかできなかったのです」

「その通りよ。それで?人々は死んじゃったのかしら?」

「いいえ。誰もが絶望していく中、ある少女達が立ち上がりました。その少女達は特殊な力を宿したアイテム、〈マジックアイテム〉を使い、姿を変えて超人的な力で魔獣達を倒しました。魔獣を倒す力を持ち、人々の希望となった少女達。彼女達を人々は、『魔法少女』と呼びました。魔法少女達のおかげで魔獣の数は減り、人々は平和な日常を取り戻しました」

「正解よ。ちゃんと勉強しているわね」

「まぁこれぐらいは」

「では次の問題。魔法少女は誰でもなれるのかしら?」

「いいえ、違います。魔法少女になれるのは、〈マジックアイテム〉に選ばれた女性だけです。〈マジックアイテム〉には意思があり、相応しいと思ったものの前に現れます」

「よくできました。もういいわよ」


 エイナは席に座り、フゥーと軽く息を吐く。


「皆も知っていると思うけど、魔獣が現れてから変わったことは魔法少女の存在だけじゃないわ。人間の一部が角やケモ耳などを生やしてエルフや獣人になる亜人化が起こったりもした。そしてここにいるあなた達や私は〈マジックアイテム〉に選ばれた魔法少女。あなた達の役目はこの魔法少女育成学園、三日月で素晴らしい魔法少女になることよ。いいわね?」

「「「はい!」」」


 立派な魔法少女になるために『三日月』に入った彼女達は強く返事をした。


〈〉


 午後三時三十分頃。

 全ての授業が終わり、放課後。


「やっと終わった~!さ~て、さっさと帰ろ♪」


 授業から解放されたエイナは背伸びをした後、帰る準備を始めた。

 だが彼女は忘れている。通常よりも四倍に増えた宿題の事を。


「四倍に増えた宿題は今、忘れてま~す♪思い出すのは明後日だ~♪」


 いや…忘れていなかった。

 ただ忘れているふりをしているだけだった。

 明後日には後悔して、エイナが泣くのは間違いないだろう。


「エイナ」


 帰る準備が完了したエイナが学生寮に帰ろうとした時、親友である修が声を掛けてきた。


「どうしたの、修?」

「明日、どこかに遊びに行かない?学校、休みだし」

「ああ、ごめん。明日は別の用事があって」

「用事?」

「うん!実は明日、東京で蓮兄と再会するの!」


 嬉しそうな笑顔を浮かべるエイナ。

 そんな彼女を見て、修は苦笑する。


「本当に先輩のことが好きだね」

「そりゃあ、そうだよ!なんせ私は超ブラコンだからね!」

「自分で言うかな、普通。でもそんなに好きなら先輩と離れなければよかったじゃない?」

「チッチッチッ。甘いよ、修くん。離れていれば、蓮兄は私のことを考える。『元気にしているかな?』『学校、ちゃんと生活しているかな』って。つまり、蓮兄は私のことばかり考えちゃうってこと!好きな兄の頭の中を私でいっぱいにするって、最高じゃない!!」

「とんでもないことを言ってるよ、私の親友」


 エイナの発言にドン引きする修。

 教室にまだ残っているクラスメイト達もドン引きしていた。

 寧ろドン引きしない人はいないだろう。


「でも……やっぱり蓮兄とは一緒にいたい。できるのであれば、この学園都市で一緒に暮らしたかった」

「仕方ないよ。『大和』は女性以外立ち入り禁止だから」


 修の言う通り、浮遊学園都市『大和』は女性以外入ってはいけないのだ。

 一人だけ男性はいるが、それ以外に大和で暮らしている人は全員が女性。


「分かってるよ。『大和』のトップの人が決めたことだし仕方がないことは。それでも…蓮兄と暮らしたい」

「エイナ……」

「あ~あ。せめて蓮兄を監禁できれば」

「うん、ちょっと待って。なに言っているか分からない。え?なんだって?監禁って言った?今、監禁って言った?」


 恐ろしいことを口にするエイナは、言葉を続ける。


「そうだ!蓮兄のあそこを切って、女装させればいけるかな」

「ねぇ、あそこってどこ?どこを切るって?」

「いや、それじゃあダメか。チ〇コを切ったら、蓮兄の初めてが奪えない」

「エイナ。ちょっと黙ろう。女の子として言ってはならないことを言ってるよ?」

「それに蓮兄とのセ〇クスはよく味わいたいむぐ」

「よし、黙ろう!いったん黙ろう!」


 爆弾発言をするエイナの口を、修は手で塞ぐ。

 親友としては正しい行いだ。

 だが遅かった。クラスメイト達はエイナの言葉をしっかり聞いていた。

 誰もが顔を赤くしている。


「エイナ。どんなことをしても先輩とはここで一緒に暮らせないOK?」

「え?でも…」

「OK~?」

「わ、分かったよ」


 親友の圧に負けて、頷くエイナ。


「まぁとにかく、先輩と会ってくるんなら思う存分に遊んできたら?」

「うん。そうするよ」

「楽しんできて」

「うん!ついでに蓮兄の童貞を奪うよ!」

「ついでに奪うな!」


 修はエイナの頭を強く叩いた。

 叩いた彼女はなにも悪くない。

 少なくとも、クラスメイト達は修の行いを正しいと思った。


〈〉


 学生寮に帰ったエイナは早めに夕食とお風呂、歯磨きを済ませて、明日の準備をしていた。

 ベットの上には何着もの服を並べ、真剣にどれにすべきか考える。


「ん~どれにしよう。こっち?それともこっち?あぁもう、分かんない!!」


 まるで明日、彼氏とデートする彼女の如く悩むエイナ。

 愛する兄に少しでも可愛いと思ってもらうために、彼女はオシャレを本気でやらなければならなかった。

 血が繋がっていないとはいえ、妹が兄の童貞を狙っているのはどうかと思うが。


「とにかく蓮兄が欲情するような格好をしないと」


 妹が兄を欲情させてどうするの!?とツッコミたくなるようなことをエイナが言ったその時、机の上に置いてあるスマホから音楽が流れた。

『僕は妹を愛してる♪』と流れるそのヤバい音楽は、電話の着信音だ。

 エイナはスマホを手に取り、通話をONにする。


「もしもし?今、忙しいんだけど」

『え?あぁ、そうなのか。ごめんまたかけ直す』

「れ、蓮兄!?」


 スマホから聞こえたのは、少年の声。

 その声をエイナは知っている。

 なぜなら自分の兄であり、最愛の人ーーー魔森蓮の声なのだから。


「かけ直さなくていい!このまま話そ!」

『でも忙しいんだろう?』

「ぜんぜん忙しくない!たった今、終わったから!」

『そ、そうか。ならいいんだが』

「それでどうしたの、蓮兄?明日のこと」

『そうだ。集合する場所は分かってるか?』

「もちろん!集合する場所は、東京の秋葉原に立っている初代魔法少女達の銅像のところだよね。集合時間は午前十時」

『正解。大丈夫そうだな』

「バッチリ覚えてるよ。蓮兄のあそこの長さと太さも」

『あそこってなに?』

「そんなのチ〇コだよ!」

『エイナ、今すぐ忘れろ。あと女の子がそんなこと言っちゃダメ。絶対に』

「そんなことよりも蓮兄」


 スマホから『そんなことじゃないから』という兄の声を無視して、エイナは微笑みながら言う。


「明日…会うの楽しみにしてる」

『…ああ、俺もだ』

「じゃあ、また明日」

『また明日。それはそうと俺のあそこの長さと太さは必ず忘れるようーーー』


 兄が大切なことを言っている途中で通話を切ったエイナは、頬を赤く染めて「本当に楽しみにしてるよ。蓮兄」と呟いた。

 

「あ、そうだ。蓮兄のために買った精力剤、バックにちゃんと入れとかないと」


 エイナがとんでもないことを言ったような気がするが、きっと気のせいだろう。

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