二十三年 十二月 河豚

 河豚は知ってます。知ってはいますが顔馴染みではないです。

 三十年ほど昔、九州の福岡で暮らしていたことがありました。近所のスーパーに行ってビックリしたのは、魚のコーナーに河豚の開きを売っていたことです。「カナトフグ」という種類でした。なんでも日本近海産のカナトフグは肝臓だけが強毒で、肉、皮および精巣は無毒なんだそうです。千葉県のスーパーで河豚にお目に掛かったことはありませんでしたから、さすがは九州だと感心しました。お手頃の値段で淡泊な味が美味しかったです。カナトフグ、実は房総の海にもいるんですけどね。


 高級魚の河豚の方には縁もゆかりも無い庶民に、河豚の句を作れって言われても、釣りだってしないのに無茶振りだよなあ。もうひとつ言わせて貰えれば、河豚に感動はしないでしょう、ということです。でも詠みます。



 悔しくて猶も膨らむ釣れし河豚


 河豚が釣れたところは見たことがあります。びっくりするくらい膨らむのですね。 うっかり釣られてしまった悔しさが河豚をパンパンに膨らませます。こうも感情を露わにされると、なんだか、かわいそう。没句。


 縄文の貝塚掘れば河豚の骨


 これは最近のニュースで知ったのですが、縄文人のゴミ捨て場は「貝塚」と呼ばれ貴重な研究の対象ですが、ここから河豚の骨がよく出土するそうです。毒は大丈夫だったのかな。心配ですよね。経験値でカナトフグの肝臓以外の身を食べてたのかも知れませんね。そんな大昔から危険を冒して河豚を食べていた祖先に感動したのですが、没句。


 ☆ 河豚の歯やニッパーのごと尖りたる


 これは知人の釣り人から聞いたことなのですが、河豚の歯って、もの凄く鋭くて丈夫なんですって。硬い甲殻類や貝類を主食にしているのでバッキバキに硬いそうです。「河豚の歯」で検索すると出てきますが、養殖している河豚はお互い同士を傷つけないように「歯切り」ということをするそうです。それで、切ってもまた生えてくるんだよ。河豚って恐ろしいですね。感動しました。佳作でした。

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