第10話 初恋の相手を寝取られた幼馴染の気分で
魔境と化したフィロネシス王国地下。
その最深部である巨大な空間に異次元よりの侵略者たち、
異形異様の超存在たち……。
その首魁は1匹の巨躯の魔族。
大将軍フォルドーマ。
見上げんばかりの巨躯は膨れ上がった分厚い筋肉に覆われており全身の青い肌には灰色の紋様が刻まれている。
1つの頭部に2つの顔面、4本の腕、4つ足の魔獣の下半身を持つ異形の魔族。
2つの顔面はそれぞれ左右の斜め前を向く形で並んで配置されており、左の顔面はたてがみのように分厚い髪と髭で輪郭を覆ったごつごつとした彫りの深い武人風。
そして右の顔面は細く吊り上った目に薄笑いを浮べた線の細い男のものだ。
腰から下は
下半身部分は恐竜のような蒼黒い鱗に覆われた爬虫類風の生き物であり長い尾がある。
その大将軍を中心として周囲に7つの影がある。
壁の突起に立つ者、腰を下ろす者、床に立つ者、浮遊しているもの……それぞれまちまちにその場にいる。
「大将軍閣下、我ら7名集いましてございます」
その中より1名が進み出て恭しく頭を下げる。
自らを文官と称する魔族パロドミナスである。
「うむ……」
フォルドーマの左の顔が重々しくそれに応えた。
「お前たちの内何名かが許しを得ずに地上に出向いておるようだが……」
ギン、と鋭く目を光らせて同胞たちを順に見る大将軍。
「重ねて言っておくが自重せよ。今はまだ我らが動く時ではない」
「けどよぉ、せこせこ送り出してる魔物どもはあんま役に立ってねえぜ~?」
不満げに口を開いた女魔族メルドリュート。
「それでいいのだ」
「はァん?」
大将軍の言葉にメルドリュートが眉を顰める。
「キヒヒヒッ、あんなもんが戦力にならねえ事なんざわかってるに決まってんだろうがッ!! あれは牽制だ……連中に余計な事を考えたりしでかしたりする時間を与えねえ為に出してんだよお!!」
今度はフォルドーマの右の顔が甲高い声を張り上げた。
メルドリュートは忌々しげに表情を歪める。
(交互に喋るんじゃねぇっての……鬱陶しい!)
右の顔が黙り再び口を開く左の顔。
「わかったかメルドリュートよ。地元の皆さんの足止めになればよいのだ」
「地元の皆さんって……」
半眼になるメルドリュートである。
そこに横壁の突起にいた魔族が1人飛び降りてくる。
自分のすぐ近くに着地したその姿にメルドリュートはギョッとして目を見開いた。
「うおっ! クオン!!」
そこに立つ者……それは全身を装甲で覆った鎧騎士のようでもありまた人型の甲虫のようでもあった。
頭部には短い触角のようなものがあり赤く鋭い大きな目が一対ある。
クオンと呼ばれた装甲の魔族はメルドリュートを一瞥すらせずに大将軍へ向けて一歩進み出た。
「少々慎重が過ぎるのではないか、フォルドーマ」
無機質なエコーのかかった声で言うクオン。
「生温いと言いたいのか?」
「少々の妨害はあって然るべき。それを力を持って粉砕せよとの命を受け我らはこの地へ赴いたはずだ」
わずかな間両者の間に沈黙が舞い降りた。
……『闘神』クオン。
戦う為に生まれてきたような魔族たちの中でも飛びぬけて高い戦闘力を持つ者。
その実力は大将軍の位に就くフォルドーマと互角ともそれ以上とも言われている。
この両名の対峙を他の魔族たちは無言で見守っている。
「地元の皆さんをそこまで警戒しているというわけではない」
「わかっている。お前の頭にあるのは
そこにいる者たちはフォルドーマら
「そうだ。奴らの動向にだけは気を払わねばならん。確かに戦えば連中は取るに足らん。だがそれだけに連中は搦め手を良く使う。忘れてはおるまいな。そもそも我らが何故他世界への侵略にこれ程までに苦労するようになったのかを……」
「……………………………………」
沈黙するクオン。
全ての魔族には彼らが『呪い』と呼ぶ輝光界の光の神々による制約を受けている。
他次元に移動しようとすると大きな負荷がかかるのだ。
これに耐えられずほとんどの魔族は砕け散る。
耐えて他の世界へやってこれるのは上位のほんの一部の者たちだけだ。
「耐えるのは今だけだ。あの御方がこの世界にいらっしゃれば輝光界の皆さんなど最早問題ではない。この世界が第二の我らの故郷……第二の
「楽しみだなぁお前らッッ!! キヒヒヒヒヒッッ!!!」
フォルドーマの左右の顔が交互に声を張り上げた。
「それで、大将軍閣下……あの御方は、女王様はいつごろおいでになりますでしょうか?」
尋ねるパロドミナスにフォルドーマが2面の頭部を傾ける。
「そうだな……間もなくのはずだ。最後にお尋ねした時には『行けたら行くわー』とおっしゃっておられた」
「はァ!? それ来ないやつじゃねえか!!」
素っ頓狂な声を出すメルドリュートを大将軍がジロリと睨んだ。
「無礼な事を言うでない。後、貴様水場を使うときに乱暴だから跳ねて汚れるとか、足音がうるさいから寝付けないとかあれこれ文句が出ておるぞ。改めよ」
「ああぁ!? 誰だよそんな細けぇ事を!!! 誰だ言ったヤツ!!!」
叫びながらメルドリュートが周囲を見回す。
「……………………………」
無言でクオンが手を挙げる。
「お前かよッッッ!!!!」
女魔族の絶叫が周囲に木霊した。
────────────────────────
地上、ロンダン近郊の荒野。
乾いた風の吹く茶色の大地に2つの人影がある。
「天気も良くて絶好の実験日和だな! よし、早速いくとするか。準備はいいか?」
1人はゴーグルを額に掛けた白衣のドワーフ。
橙色のあちこち跳ねた髪の毛が風に靡いている。
科学者にして発明家のマキナ教授である。
そしてそのマキナが従えているのは白銀の機械兵。
彼女の護衛にして従者にして忠実な助手であるコテツ。
鋼鉄の戦士は天を突く巨大なランスを構えていた。
螺旋状に深い溝の掘られている円錐状のランスである。
「試作E-9調子良好。行けます、マスター」
コテツが手元でスイッチを入れるとランスは高速で旋回を始めた。
それは唸りを上げて風を巻き取り虚空を抉らんと勢いを増していく。
標的は前方の大岩だ。
大人5人が並んで歩ける道を塞げるほどの巨岩である。
それを持っていたペンで指差すマキナ教授。
「よしやれ!! 初恋の相手を寝取られた幼馴染の気分でやれ!! あいつがその幼馴染のカレシだ!! 風穴開けてやれ!!!」
「申し訳ありません。その感情は良くわかりません」
理解が及ばない事を口にしながらもコテツは地面を抉るほど強く踏み込んで渾身の力でランスを突き出した。
轟音が響き渡り激しい砂埃が舞う。
それが収まった時、大岩には向こう側まで貫通する大穴が開いていた。
「よしよしよしよし、いいじゃないか! 上々だぞ!! この新兵器の名は「HNO」(ハツコイイノアイテヲ、ネトラレタ、オサナナジミ)にしようじゃないか!! はっはっはっは!!」
無残な命名をされた新兵器。
その威力に製作者はご満悦のようだ。
……その時、不意にその場に舞い降りてきた者がいる。
音も無く、静かに。
上空から真っ直ぐに腕を組んで直立したままの姿勢で。
青黒い装甲で全身を覆った異形の戦士がその場に降り立つ。
「ふおッ!? なんだ!? 虫人間??? いや……」
表情を凍て付かせたマキナの頬を汗が伝う。
その彼女の前に庇うようにコテツが立った。
「……魔族、か」
掠れ声で呟くマキナ。
『闘神』の異名で畏れられる魔族クオンがそこにいた。
「先程から見ていた。面白い事をしているな」
抑揚の無いエコーの掛かった声でクオンが言う。
そして魔族はコテツが手にしたランスを指差す。
「試し撃ちならば我が相手になろう。撃ってくるがいい」
「……ななななな、なんですとー!?」
マキナは目を白黒させている。
無理もない。眼前の魔族は奇妙な事を言っている。
「どうした……その奇天烈な武具は我らと戦うために用意したものだろう。ならば試射に最適な相手が目の前にいるのだ。遠慮はいらぬ。我はかわさない」
僅かな間逡巡していたマキナ。
やがて彼女は何かを決意したように眉根を引き締めた。
「……やるぞ、コテツ。アイツに吠え面かかせてやるぞ!!」
「わかりました。マスター」
身構えたコテツがドリルランスを起動する。
腰を落とし膝を曲げ、突進からの刺突の姿勢になる機械兵。
……クオンは……。
動かない。
腕を組んで自然体でただそこに立っている。
一瞬の静寂。
次いで爆音。
大量の砂埃を巻き上げ銀色の疾風となってコテツが駆ける。
眼前のクオンへ向かって一直線に。
高速で旋回する先端が魔族に炸裂する。
「……………………………………」
宣言した通りに不動でクオンはその一撃を受けた。
凄まじい金属音と飛び散る火花。
無数の破片となってランスは周囲に撒き散らされる。
「あちゃー……」
飛び切り渋い顔をしてマキナが舌を出した。
「ふむ……」
攻撃を受けた箇所の装甲を確かめるクオン。
「こんな所か。悪くはないが……」
引っかいたような傷が表面にいくつか付いている。
汚れた、という言い方をしても遜色の無いダメージとは程遠いものだ。
「見ての通りだ。我に傷をつけるには及ばん。さらなる研鑽を積め。次はもう少しマシなものを用意するのだな」
ふわりと浮遊し浮き上がるクオン。
「おい、待て待て……待ちたまえよ」
呼び止めるマキナ。
彼女はトコトコ歩いてきて浮かぶクオンのすぐ下までやってくる。
「何で私らの戦力増強を希望するんだお前は。普通逆じゃないのか?」
怪訝そうな彼女をクオンが見下ろした。
「我は戦うためにやってきた。戦いとは双方の実力が近くなければ成立しない。蹂躙や虐殺には興味がないのだ」
踵を返しクオンは上昇していく。
「せいぜい励め。しばらくは待つが見込みがなさそうならば殲滅するだけだ」
バン!!! と破裂音のようなものを響かせて一瞬で加速したクオンは一気にマキナが目視不可能な距離まで飛んでいってしまった。
最も彼女はその時の衝撃波で吹っ飛んで地面を転がっていたのでどちらにせよ飛び去る魔族の姿を目で追えはしなかったのだが……。
「ええいクソッ!! なんてやつだ……ぺっぺっ!!」
起き上がって口に入ってしまった砂を吐く教授。
そして彼女は足元に転がっていたランスの一部をカンと蹴り上げた。
「この失敗作め! やっぱ幼馴染を寝取られるようなやつは役に立たんな!!」
「自分で名付けておいてそりゃひでえ」
ぷんすか怒りながら毒づくマキナに思わずツッコむコテツであった。
────────────────────────
「筋肉ーーーーーッッッ!!!!」
「ファイッ!! オウ!! ファイッッ!! オウッッ!!!」
蒼天に響く野太い男たちの声。
筋骨隆々の男たちの集団がトラックを走っている。
全員白鶯騎士団所属の傭兵たちだ。
本来、傭兵たちにトレーニングの義務はない。
オフの過ごし方は各人の自由である。
だが、一部部隊長の意向でこうした鍛錬が行われる事もある。
「……ほらぁ! ペースが落ちてるじゃないか!! 気合入れなぁ!! アンタたち!!!」
怒号に激しく地面を鞭で打つ音が続く。
厳しい顔でトレーニングを監督している褐色の肌にブロンドの気の強そうな美女。
部隊長のキリエッタ・ナウシズである。
「ウィース!! 姐さんッッ!! 筋肉ーーーーーッッッ!!!!」
更に奮起して加速する傭兵たち。
自主訓練という体ではあるが彼女の部隊の隊員は全員参加している。
強制されているというわけでもなく自主的にである。
「そうそう、男は筋肉だよ!! 大胸筋の分厚さが人間の分厚さだよ!!」
「……メチャクチャ言ってんなぁ」
なんとなくその様子を見物していたヒューゴが思わず呟いていた。
彼の率いる部隊も本日非番であるが、キリエッタ隊とは違ってオフは好きにさせている。
「いいんだよ別に。効果があればなんだって。アタシらは過酷な戦場を仕事場にしてるんだ。鍛えておくに越したことはないだろ?」
しっかり耳に届いていたらしい。
キリエッタが振り返ってジロっとヒューゴを見た。
「暇を持て余してんならアンタも混じってきな。指揮官だって身体が資本だよ」
「うげえ……ご遠慮させて頂くわ冗談じゃねえよ。あんなんに混じったらオジさん3分でゲボ吐くわ」
顔をしかめて舌を出すエルフ。
「フフフ、見てくれよ俺のこの上腕二頭筋」
「おっ、やるじゃねえか。だが俺だって負けてねえぞ」
小休止している傭兵たちがお互いに自慢の筋肉を見せ合っている。
(もう少し鍛えたら、キリエッタ隊長をデートに誘うんだ……)
そして大体皆同じことを考えているのだった。
「なぁ、お前さん交際する男もやっぱマッチョがいいのか?」
「う~ん、そうだねぇ……」
ヒューゴに言われてキリエッタは少し何かを考えるような仕草をする。
……ただ、それはフリだ。
実際に彼女は悩んではいない。
交際と言われた瞬間から彼女は1人の男の事だけを思い浮かべている。
小柄でスリムな赤い髪の男だ。
「いや、筋肉はいらないね。暑苦しいし」
「悪魔ですかお前さんは」
あっさり言うキリエッタにドン引きするヒューゴであった。
────────────────────────
地下よりの大侵攻が開始されてからロンダンの都の様子は一変した。
住み慣れた街を離れ他国や地方に逃げていった者が大勢いる。
そして逃げ去る者と入れ替わるようにやってきた者たちもいる。
多くは戦闘を生業とする者……そしてその戦士たちを相手に商売をする者たちだ。
「打ちあがったばっかの剣あるよー!! 軽くて切れ味抜群!! オマケに頑丈だ!! 見てってくれよー!!」
「鎧、鎧!! 鎧はいらねーか!! フルプレートも革のもあるぜ!! サイズ直しも格安でやってるぞ!!」
景気の良い呼び込みの声がいくつも木霊する街中を1人の少女が歩いている。
長い紫色の髪の毛を編み込んだ少女。
ベレー帽にパーカーで眼鏡を掛けているその少女は時折周囲に興味深げな視線を向けながらてくてく進む。
背負った水色のリュックにぶら下がったコミカルなキャラクターのキーホルダーが歩行に合わせてゆらゆらと揺れていた。
そして腰の後ろには一対の小さな翼……これもアクセサリーなのだろうか?
小柄な彼女の向かう先は白鶯騎士団の本部であった。
「団長、お会いしたいというお客さんが」
ノックして言う団員に執務机のフェルザーが顔を上げる。
「何者だ。約束はないはずだが」
「なんか若い女性……っていうより女の子らしくて。
フーッと長く重い息を吐いてフェルザーがうつむいた。
「虚しい……。お引き取り願え。生憎と天国などには縁遠い男だ。死後も間違ってもそこへは行けまい」
こういった話はたまにある。
神の使徒を名乗るものがやってきては寄付を募るのだ。
付き合ってやる義理もその時間もない。
「まあまあ、そうおっしゃらず」
「!!」
顔を上げた時にはもうその少女は目の前にいた。
執務机のすぐ前に立ち眼鏡の奥の涼やかな瞳にフェルザーを映して彼女は立っていた。
「団長? どうなさいました?」
ドアの外の団員は誰かを室内へ案内したわけでも何者かに脇を通過させた覚えもない。
彼は室内に起こった異変には気付いていないようである。
「お望みでしたら死後と言わずに生きてる状態でご案内もできますよ、天国。……貴方がたが思っているほど楽園でもありませんが」
無表情で眼鏡の少女が言う。
なんと返答するべきかフェルザーが考えあぐねていると……。
「名乗りもせずに失礼しました。私はアメジスト……
アメジストと名乗った少女の腰で小さな翼がぴこぴこと羽ばたいた。
「おや? なにやら頭のネジがぶっ飛んだやべー美少女に絡まれてしまったどうしようと言ったお顔をされてらっしゃいますね」
「何分、初めて聞くことばかりでね」
さすがにあり得ないことへの遭遇にはある程度耐性ができてきたフェルザーは既に落ち着きを取り戻しつつある。
「伝承に言う魔族とは、異界からの侵略者たちの事だった。ならばお前の言うような世界もどこかにあるとしてもおかしくはない……とは思う」
「いい柔軟性です。その頭の柔らかさは話を円滑に進める上で極めて好ましいですよ」
そう言いながらアメジストは背負ったリュックを下すと中から綺麗に包装紙で梱包された平たい箱を取り出す。
「つまらないものですが……」
「これはご丁寧に」
菓子折りを受け取るフェルザー。
そしてやや眉をひそめた団長。
……なんというか、装丁に酷く既視感がある。
「銘菓のえびせんべいです」
「この街の銘菓だよ! つまらん言うな!」
思わず声量が上がってしまったフェルザーである。
彼にしては珍しいことだ。
そんなに地元の定番土産を大事に思っていたのかと自分でも不思議に思う。
「そうですね。近所で買ってきましたので」
しれっと言うアメジスト。
無言でフェルザーは包装を解くと来客用の菓子鉢にせんべいを入れて彼女に差し出した。
器は洋風なのでせんべいが合わないことこの上ない。
「いただきます」
遠慮もなく自分の買ってきたせんべいをぱりぱり食べ始めるアメジスト。
「上品なしょっぱさで美味しいですね」
「それは何よりだ」
お茶を淹れているフェルザー。
紅茶なのでこれまたせんべいに合っていない。
「それで、とりあえず私は上司に言われて現地を確認しに来たわけなのです。本当にヴァルゼランがこっちに来て何か悪さをしているようなら色々とルール破りなので我々
「力になってくれるというのかね」
フェルザーの問いに「はい」と無表情のアメジストがうなずく。
「これから私が
「よくわかった。適当にやってくれたまえ。それ食ったら帰れ」
一気に扱いがぞんざいになった。
「これこれ美少女をそんな風に無体に扱ってはなりませぬ」
「生憎と忙しい身でな。遥か遠い未来の援軍の窓口を賓客としてもてなしている時間はない」
フェルザーは中断していた書類仕事を再開する。
そんな彼の様子を気にするでもなしにアメジストはせんべいを食べている。
「そうでしょうね。思ったよりも事態は深刻でした。今から輝光界に戻ってあれこれしている余裕はなさそうです。仕方がないのでこのまま私はここで皆さんのお力になろうかと」
「連中を追い払ってくれるのか?」
わずかな光明に書類から顔を上げる団長。
「それは無理です。私たちは戦闘はからっきしなので。まあその代わりと言ってはなんですが色々と小賢しいちょこざいな事ができますのでそちらでお役に立とうかと」
「ちょこざいって……」
自分で言うのか、と思うフェルザーだ。
ドバン!!!!!!
そこへ慌ただしくドアを開け放って転がるように室内に突入してくる者がいた。
「おーい団長!! 初恋の幼馴染を寝取られた奴が死んでしまった!! 代わりがいるんだ予算をくれ!!!」
「……何やらいきなり修羅場なのですが」
叫んでいるマキナを尻目にアメジストは静かにティーカップを口に運ぶのであった。
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