ぼっち大学生が不思議なサークルと出会った話。

Enjoy!上越!

1 プロローグ

 "大学受験に失敗したらインドに行こう"


 高校3年の夏、僕は決意した。

 現代文のテストで引用されていた遠藤周作の「深い河」。この本を読んで、ガンジス川と共に生まれ、生き、そして死んでいくインドの人々と暮らしを共にしたい。と思ったからだ。


 無論、現実逃避である。

 人の一生を決める大学受験―と、世間では言われているが、全くそうは思えないイベントに対し、僕はささやかな反抗心を抱く。

 そのために遠藤周作と深い河を利用した。決められたレールの上を走る人生なぞ糞喰らえだ。ハリボテで作られた現代社会に迎合しなくても自分は生きていける。それを証明するために、自分はインドに行くのだ。


 もちろん、これも嘘である。

 インドに行くのは大学受験に失敗した場合の話だ。本当はレールを外れて生きる覚悟なんてない。

 "大学受験に失敗したらインドに行こう"

 この言葉は、社会と対決する無頼漢を演出しつつ、その裏では手堅い生き方に落ち着くことが示唆されている。そのうえ勉強に打ち込むことも回避できるという、まさしく三重の策であった。


 かくして、僕は勉強もほどほどに地元の大学に合格し、敷かれたレールの上を進むことになったのだ。もちろん、今もインドには行っていない。

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