マーダーミステリーの作り方

もくはずし

前書き

前書き① マーダーミステリーとは何か

はじめに

 本文はもくはずしによるマーダーミステリーの作り方における考え方を示すものである。 筆者が最近流行りのシナリオアンチ、やれ「エモ」だの「RP重視」だの「ストーリー重視」といったワードが入ったシナリオすべてを敵視しているため、そういったシナリオを信仰している方は読まないことをお勧めする。誹謗中傷をぶつける相手を探しているのであれば、その限りではないが。


 本文は「① マーダーミステリーとは何か」のために書き始めたものであるからして、それ以降の具体的な項目に関しては気分が乗らない場合更新されない。つまり、本文を読んでも具体的なマーダーミステリーの作り方などわかるわけがなく、マーダーミステリーを今すぐ完成させなければならない、という方にとっては微塵も役に立たない。これは具体的な項目が追記されて尚、そうありつづけるだろう。

 また、本文は「マーダーミステリー」および「ストーリープレイング」に対する記述である。すべて記載するのはあまりにまどろっこしく、また筆者は「ストーリープレイング」をかなり軽視しているため、本文で記述する「マーダーミステリーの作り方」は「マーダーミステリーとストーリープレイングの作り方」に置き換えてかまわない。



以下本文



 マーダーミステリーを作りたいという人は、すでにどのような作品が作りたいか、つまり想像されるシーン、システム、世界設定、キャラクター等のうちどれか、もしくはほとんどに何かしらのアイディアがあるだろう。

 しかしそこで一旦足踏みをしてほしい。作ろうとしているのは「マーダーミステリー」というフォーマットでよいのか、ということを。


 マーダーミステリーとは何か。

 これについては様々な議論がある。定義するのはここでは止そう。

 しかし作家であれば、このフォーマットの特性は考えておくべきだ。

 サッカー選手になろうとしている人間は、いかにボールを手でうまく扱えるようになるかの練習に時間を捧げたりはしない。その競技で何が必要で、何が必要でないか。自作シナリオのルールを作る側であり、なおかつ「マーダーミステリー」のフォーマットによって定着している文化を拝借する以上、それは常に考え続けなければならない。

 慣習に従えというわけではない。慣習を理解しなければ、革新的なことは生み出せないということである。それはすでに手垢がついているかもしれないし、先人らの知恵により却下されているかもしれない。浅はかな「革新」を行う前にまずそれがきちんとPLを楽しませることができるものなのかを確認すべきである。

 尤も、著者はPLの過半数が楽しんでいる作品を唾棄すべきと考えている時点でその資格はない。


 さて、マーダーミステリーとは何か。これについて外れない事項がいくつかある。もしかすると例外があるかもしれないが、私の数少ない遊戯体験上、これらのフォーマットはすべての作品に存在した。


① PCの設定書があること。

② PC間における議論の時間があること。

③ 投票、あるいはそれに準ずる意思決定があること。


 この3項目はすべてのマーダーミステリーに存在するといっていいだろう。

 逆に言えば、マーダーミステリーに共有されるフォーマットは上記3つである。

 殺人事件が起きる、またはそれを示唆する状況でない作品も数知れず、「マーダー」という名前はもはや定義に入れなくてよいとすら思えてくる。そして意思決定によって自ずと勝敗、成立不成立、生存死亡などが分岐するゲームだ。


 さて、この文書は「マーダーミステリーの作り方」である。

 この3つの定義から、シナリオを作成するにあたって考えるべきことがある。

 それは、「実現しようとしているアイディアは、マーダーミステリーというフォーマットと合致しているか」である。

 何を当たり前な、マダミスを作ろうとしているのだから当然そうに決まっている、と思うかもしれないが、考え直してほしい。

 世の娯楽は飽和しており、当然マーダーミステリーにも似たような分野が隣接している。用いるアイディアが、それらを使わずにマーダーミステリーで行う強い利点があるか、ということは必ず考えてほしい。


 私が思いつく限りで、隣接領域は5つある。

〇 小説

〇 ゲームブック

〇 TRPG

〇 声劇

〇 人狼系ゲーム


 TRPGとマーダーミステリーは何が違うのか、という話は宗教上の抗争を招くため回避し、循環参照になってしまうが、ここでは単に「TRPGとしてルールブックが存在するあらゆるシステム」を"TRPG”と呼ぶことにする。主にGMとPCとの会話のやりとりでシナリオが進行していくという特徴がある、と思ってほしい。

 先ほど規定したマーダーミステリーの共通フォーマットとの差異を考えよう。この4つにあってマーダーミステリーにないもの、逆にこの4つになくてマーダーミステリーにあるものが理解できれば、そのアイディアをマーダーミステリーで行うべきかが見えてくる。


 結論から書けば、当然マーダーミステリーのフォーマット②と③は、マーダーミステリー特有のものであり、隣接領域には存在しない、もしくは重要度が低いということである。そしてマーダーミステリーにおいてはこの②に割く時間が主なコンテンツということである。これは何を意味するかというと、


 「マーダーミステリーというフォーマットの強みとは、議論を主軸とした謎解きや葛藤との向き合い、仲間づくり、アイテムや情報授受の交渉を楽しめること」


 ことであり、逆にいえば


 「マーダーミステリーの弱みとは、議論が主軸であるために遊戯時間内でストーリーを動かす動力に乏しく、またその制御が難しい」


 ということである。

 なぜそうなるのか。


 まず「議論」と「投票」は対になる存在である。議論なくして投票はなく、逆もまたしかりだ。「投票」は「議論」に追従するものであり、「議論」の結果を洗い出すものでしかない。以降、「議論」と記述する場合、その中には投票を前提としたものである、という意味を含有する。


 マーダーミステリー内における議論の動機を大まかに4通りに分類してみる。


〇 謎を解くための情報共有

〇 共通目的の回答を用いた説得

〇 利害関係による仲間作りの説得

〇 情報あるいは物品授受の交渉


 これらの要素は、PC対立系TRPGシナリオや人狼、それに類するボードゲーム以外にあまり見られず、TRPGもそこまでメインストリームな遊び方ではない。シナリオ付きのフォーマットでいえばマーダーミステリー特有のものと言っていいだろう。


 ここで問題となるのが、議論というものの特性である。

 先述した「ストーリー重視」等に対する疑念はここにある。

 議論とは、上記4つの目的のためになされるものである。それは、ストーリーを動かす力としては役に立たないのだ。


 つまり、ストーリーを動かすには「議論」と「投票」以外の力が必要である。そしてそれは、PCの設定書だけでは成立しないため、その他の要素、例えば ”長ったらしい読み合わせ” が必要になるということだ。


 それになしに、つまり議論上で背景にあるストーリーをPCの手によって引き出させる、というのは無茶である。すべてのPLが設定書を完璧に読み込み、場に出てきた情報を正確に読み解け、一寸の隙もない情報共有ができるなら兎も角、そんなことは現実的ではない。精々後から解説で「そんなことがあった」と書くか、どんな議論が展開されようと見えてしまえる程度の、底の浅い物語を展開するのが関の山である。


 マーダーミステリーに隣接するフォーマットを見てみよう。なんと、除外した人狼系ボードゲーム以外のすべてが、ストーリーを動かす力に長けている。これは説明不要であろう。没入という面で声劇に劣り、TRPGのような自由に行動する主体を制御する力もなく、小説のような凝ったストーリー展開もできない。冷静に考えればこれほどの文章を費やさずともわかることである。


 マーダーミステリーで必要なことは、いかに議論が楽しいものであるか、そこに注力すべきであるという結論を導きたい。


 議論の最終目標は、PC個人の目標達成である。多くの場合、それには他PCが持つ情報やアイテム、他PCもしくはキーパーソンPCの意思決定が必要となる。多くの場合、真犯人を突き止める、突き止められないようにするという対立構造から議論が成るわけで、この対立構造を補佐するために各種の情報・アイテムが存在するといってよい。この "議論導線" を設定することこそが、マーダーミステリーを作る人間にとっての最も重要な仕事である。断じて推理導線などではない。

 そして議論導線はそのすべてが真相に至るように作る必要はない。誤った道、行き止まり、回り道、模範解答ではない別解など、様々なものを用意する。それらはPCがどの議論を進行していくかの手札の枚数となる。議論の方向性は作者やGMが完全に制御できるものではないので、背景ストーリーを見出させるようなシナリオでは議論導線はどうしても少なくなってしまいがちである。

 議論導線は多ければ多いほど良いというものでもないが、この道筋が少ないシナリオは議論自体に頭を悩ませる楽しさがなくなってしまう。


 つまり、マーダーミステリーの構成要素のほとんどは、議論が如何に回るか、そしてそれをPLが楽しめるものにできるかにかかっている。筆者以外からも散見される、「ストーリー重視」等のようなふれこみの作品の議論がつまらない、という意見は、その構成要素が議論ではなくストーリーの構築に向かっており、その分議論導線が軽薄になっているからであろう。そんなものをわざわざマーダーミステリーで行う必要がどこにあるというのだ。声劇でも小説でもTRPGでも、シナリオ上生まれる葛藤を1人称視点で選択させる、というような体験を作り出すことはできる。議論の価値を高めることこそが、マーダーミステリーにおいては肝要である。


 最終的に考えなければならないことが、見えてきた。

 今用いようとしているアイディアが、「議論」のゲームに向いているのであればそのままマーダーミステリーにして良い。逆にそうでなければ、他フォーマットでの実現を視野に入れつつ制作を行うべき、というのが本章の結論である。

 

 考えついたマーダーミステリーに向いていないからと言って悲観すべきではない。マーダーミステリーは「議論」のゲームとはいえ、ストーリー、キャラクター設定、ゲームシステム等の多数要素が複合した遊びだ。いくらマーダーミステリーを作ることは簡単であるとはいえ、他ジャンルを通らずにいきなり良いものが作れるかといえば難しいものがある。

 今あるアイディアが自信をもって面白いと思えるのであれば、他フォーマットで完成させた後に、次のアイディアをマーダーミステリーで、という回り道もよいものである。創作は長い目で取り組み、創作によって削がれる精神・肉体を十分にいたわりつつ、のんびりノウハウを積んでいくくらいがちょうどいいと、私は思う。

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