第14話 来た時の話とゴブリンの話
それは、夏の出来事だった。
リョクに転送されて、この世界へと初めてやって来た時の事。
「いぃーーーーーーーやぁーーーーーーーっ!!!!!!!」
転送されて僅か10秒足らずのうちに、俺は強い衝撃と共に空を舞っていた。
正直、何が起きたのかは俺にも分からなかった。
バッシャーーーン
そんな音が実際にしたわけでは無いが、盛大に俺は水の中に落ちた。
「塩辛ぇーーーっ!!!」
げほりげほりと盛大に口の中に入った水を吐き出す。
そして、ぶっ飛ばされる前にいた所…前方に視線を向けると、俺をぶっ飛ばしたと思しき女が顔を真っ赤にしながら興奮気味にこちらを睨んでいた。
それが、ジャンヌとの初めての出会いである。
後でユウキから聞いた話では飛ばされた先にジャンヌが居て、そのジャンヌを押し倒した感じになっただけでなく、俺のアレなアレがちょうど彼女の目の前で挨拶をしてしまっていたらしい。
そう、偶然が重なった事故なのであるが、以来、彼女から完全に拒絶されていた。
「いやぁ、アレは悲劇的でしたねぇ」
いや、お前のせいだろ。
ともかく、今日は何をしているのかと言えば、ゴブリン退治である。
昨日の帰りにギルドに寄った時のことである。
「おぉ、ボン。丁度良いところに来たのぉ」
そう言ってパタパタと歩きながら近づいてきたのは、見た目は本当に幼女にしか見えないギルド長のロリーナ・コドモンである。
「ん~?何かまた失礼な事を考えておらんかや?」
「気のせいです」
「そうかのぅ。まぁ良いわ」
「そんな事より、ちょうど良かったわい」
うわぁ…嫌な予感しかしない。
「大丈夫じゃ、安心せい。今回はゴブリン退治じゃ」
ゴブリンと言えば、あれかな。
男は容赦なく殺して、女と見れば見境なしにえちぃ事をした挙句子供を産ませたりするという。
「えらく知識が偏っているようじゃが…まぁ、間違ってはいない箇所もあるかの」
「ともかく、ナントーの村にそやつらが出没してのぅ」
ナントーの村と言えば、前にサカリの付いた
「早急に退治してほしいという依頼が入って来たんじゃ」
「成程、それでは…綾香さん…ってあれ!?」
ついさっきまで一緒にいたはずの綾香だけでなく、
「あー…
「という訳で、ボンたちに頼みたいのじゃが」
「拒否権はあるのですか?」
「しても良いが、次から報酬は半額査定じゃ」
酷い権力の乱用だ。
というわけで、仕方なく受けて現在はゴブリンが居るという洞窟の前にある茂みの中にいる。
今回はパーティは、あの4人を除き更に馬車の番をしている
「何の役にも立たないとは失礼ですね、ぷんぷん」
だから、人の心を読まないで欲しい。
「とりあえず、もう一度確認したいのだが、本当にゴブリンは弱いということでいいのか?」
「問題ない。大して強くない蒼治良でも余裕」
大して強くないは余計だろ。
事実だから仕方ないが。
「ぐずぐずせずにさっさとしろ!」
語気を強めて言ったのはジャンヌ。
流石に気付かれるとアレなので、声はかなーり押さえてはいるが。
そんなわけで、俺達は奴らが潜んでいるという洞窟に突入したのだが。
「すっごーい、久々の男のヒトだわぁ♪」
「うぉーーーっ!!!べっぴんの姉ちゃんが4人もいるぜっ!」
とまぁ、大量のゴブリンの群れに襲われたのだった。
なお、俺の知ってるゴブリンとは全然違い肌の色こそ俺の想像どおりだったが、見た目はごく普通の女児と男児である。
これを退治しないといけないのか?
そんな事を思っている間にゴブリン娘たちに取り囲まれる。
「蒼治良はん、大丈夫や。頭にちょこんとチョップするだけで退治できるから」
背後から聞こえる千里に振り返ると、本当にチョップをかましていた。
とはいえ、本当にポンと叩いているだけであったが、叩かれたゴブリン(男)は『わーん』と泣きながら戦線を離脱していった。
そして、その場に『青リンゴ』だけを残して。
周囲を見渡しても、全員同じように淡々と作業のようにしていていた。
まぁ、ジャンヌだけは苦虫を噛みしめ苦渋の決断の末での行動であったのだが。
俺もそれらに見習ってゴブリン娘にチョップをかませようとした。
「お兄ちゃんは、そんなことしないよね?」
ゴブリン娘たちは上目遣いで俺を見ながら言う。
うぉーーーーーーーっ!!!
出来るかーーーーーーーっ!!!
とまぁ、躊躇している間に、俺は大量のゴブリン娘に襲われた。
「それーーーっ!やっちゃえーーーっ!!!」
あ~れぇ~やめてぇ~。
群がって来るゴブリン娘の前に、俺は押し倒されて脱がされ始める。
とはいえ、最後のパンツ一枚のところで何とかとどまっていた。
「あのぉ…そろそろ助けて欲しいんだけど…」
・・・・・・・・・。
そして、帰りの馬車の中。
「貴様は温すぎるっ!」
馬車の中央で四人に囲まれながら、俺は正座をさせられていた。
ちなみに、馬車の運転は熊猫の
「そんな事で、この世界をだっしゅ…ったっ!」
ジャンヌが言い終わる前に、俺を囲んでいた一人であったユウキがいつの間にかジャンヌの背後まで移動して、彼女の頭上にチョップをかましていた。
「だっしゅ…って何?」
「何のことか分からない」
俺は千里とおっぱい風呂に浸っているリョク、続いて拇拇に視線を向けると、視線を向けた瞬間に彼女達は全員目を逸らした。
怪しい…。
結局『だっしゅ』が何なのか聞き出すことは出来なかったのだが、おかげで俺の反省の正座もうやむやに出来たのであった。
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