第4話 格好付かなかった

ユウキを制服に着替えさせた後、二人で食堂へと足を運んだ。


「この外道がっ!」


食堂に入った途端に浴びせられた罵声と共に、ユウキが俺の下から去っていった。

厳密に言えば、ジャンヌによって引き剥がされた、という表現のほうが正しいのだが。


おいおい、外道とは何のことだ?

俺はそんな事言われるような真似はしてないぞ?


「しらばっくれるなっ!このド畜生鬼畜レイパーめっ!」


ただの外道からほんの少しの間にえらい進化したものだ。

確かに俺はエロいことはよく考えるが、そういったことをした事など前世も含め当然ありはしない。

俺は困惑しながら周囲を見渡すと、このパーティのリーダーである綾香をはじめとして、俺を憐れむような視線が向けられていた。

勿論、俺を疑ってのことではなく、いつものやつなんだろう的な。


ということは。


「ゴニョゴニョゴニョ………なんですよぉ」


「ほほぅ、それは興味深いですな」


食堂の調理場に視線を向けると、おっぱい好き妖精のリョクが先生セバスティアンにヒソヒソ話をしている最中であった。


「おい」


俺はリョクの後ろ頭にデコピンをする。

勿論、力は超落としている。


「あたっ!………あ、蒼治良そうじろうさんじゃないですかぁ」

「おはおっぱいっ!」


リョクは大してありもしない自身の胸を中央に寄せて谷間を作る。


「あぁ…おはおっぱ…っ、じゃないっ!」


あぶないあぶない。

もう少しで仲間内だけの場とはいえ、女性陣の面前でおっぱいって言うところだったじゃないか。


「お前だな。ありもしない噂を流したのは」


「やだなぁ。ユウキさんをお姫様抱っこして猛ダッシュで彼女の部屋に押し入ったのは事実じゃないですかぁ」


今日はユウキと一緒に来てないな、と思ったらどっかで見てやがったのか。


「あれはだな……ユウキがはだ…ぐっ…ぅっ!」


ユウキが裸エプロンをしていたからだ、と言いかけようと喉のあたりまで出かかったところで止める。

流石に、そんな小さなおしりをぷりっと出したエロい格好をしていたなんて言うわけにはいかない。

俺はあえて泥をかぶることにした。

そして、黙っている俺にジャンヌの罵声が更に浴びせられる中、一人の小型生物が口を開いた。


「裸エプロンの私を着替えさせるために部屋まで連れて行かされた」


と、ユウキはあっさりとゲロってしまい、結果、俺の濡れ衣は晴れたのだが何だろう、黙ってジャンヌの罵声を浴び続ける俺カッケーって心の中で思ったのが馬鹿みたいじゃないか。

まぁ、いいけどさ。

そう思いながら俺は、ジャンヌから開放されて戻ってきたユウキの頭をなでたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る