第一幕「白鳥の湖」
「ねえ、ツバサ、今週の土曜日、一緒に『白鳥の湖』観に行こうよ! 私の友達が、“オデット” を演るんだ!」
マーケティング総論の授業が終わり、眠たい目を擦りながら学食へと向かう俺を、黒のレースアップブーツを履いた
(ああ、昨日、コイツに告白されて、OKしちゃったんだっけ……)
「えーっ、やだよ、俺、バレエなんて興味ねーし。女の友達誘って行けよ!」
俺が、生欠伸をしながら、気怠そうに答えると、里奈はぽってりとした唇を尖らせながら言った。
「友達に、彼氏連れて観に行くって言っちゃったんだよー。チケット代は、もちろん、私持ちだし、ランチもゴチるから、お願いっ! 女同士の付き合いもいろいろ大変なんだからさぁ。協力してよー。“彼氏” でしょ?」
くだらない女同士の見栄の張り合いに辟易しながらも、俺は、結局、里奈に押し切られるような形で、『白鳥の湖』を観に行く羽目になった。
皮肉なことに、俺は、『白鳥の湖』の舞台を観に行ったことで、”エリカ”という、俺にとって最初で最後の”女”と出逢い、そして、里奈は、女同士のくだらない見栄の張り合いが災いして、俺に、こっ酷くフラれることとなった。ある意味、里奈は、俺と”エリカ”を引き合わせてくれた天使だったのかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます