第53話 主人公の覚醒の瞬間が一番生を実感する。
一夜城の屋根の上から豊臣秀吉が戦いの様子を眺めていた。
その後ろから声が聞こえた。
「やはり、あなたでしたか。」
「この声、久しぶりじゃな、明智光秀。」
生徒会に報告が入り、会長様から命令があったので、風紀委員活動室にやって来たところ、なんだかんだあって一夜城までやって来てしまった。
そしたら、豊臣秀吉と偶然の再会してしまった。
「高みの見物ですか?」
「どうだろうな、儂的にはあの結衣ちゃんには生きてて欲しいんじゃが。」
「信長様のことはどうでもいいんですか?」
「まぁ、儂はあの"第六天魔王"のことなんて知らないから、どうでも良いんじゃ。」
「なに?」
どういうことなんだ。
秀吉様が、信長様のことを知らない?
何かがおかしい。
「それよりも明智光秀よ、1つ提案したいことがあるんじゃ。」
「なんですか?」
「お前も家康殿の所で共に戦わないか?」
「どういう、事ですか?」
「おかしいとは思わなかったか?」
「何がですか?」
「勝手にこの世界に呼ばれ、そして駒として扱われる毎日。いつから、自分たちが主導権を握れていると思っているのだか。儂は不思議でならなかった。だからこそ、儂たちはこのふざけた世界に1発博打を打とうと考えたのだ。」
その時だった。
光秀の後ろから更に人がやって来た。
「このふざけた世界を、ぶっ壊してやるのさ。」
「徳川、家康!?」
「明智光秀、素晴らしい提案をしよう。お前も一緒にこの世界を壊さないか?」
「私はそんな事、絶対にしない!」
「俺たちの一派に入らないというなら、殺す。」
「ッ!?」
「やれ、秀吉。」
――――――――――
「はァァァァァァァ!」
鉄と鉄がぶつかる音がする。
前みたいな派手な炎はない。
「舐めてんじゃねぇぞ! 織田信長!!」
蒼月華が更に襲いかかる。
使用者の感情を表すかのように、蒼月華は更にデカくなっていく。
「信長! 危ない!!」
「まだ、だぁぁぁ!」
蒼月華はデカくなる。だが、強くなってるわけではない。
おかしい。なんで?
「身体が追いつかない!?」
ラワが呟いた。
ラワの身体がとっくに許容量を超えたのだ。
それでも、蒼月華は更に大きくなっていく。
「今のうちだな!」
信長は剣を振るう。
ただ、仲間のために、自分のために。
「信長!」
結衣は叫ぶ。デカくなった蒼月華を危険だと判断したからだ。
「信長ァァァ!」
その時、蒼月華の影からツルが伸び、使用者であるラワを遠くへ吹き飛ばした。
「どう、なってるの。」
と、結衣は呟いた。
一方、その様子を屋根から見ていた家康は、呟く。
「おぉ、遂に蒼月華が真の姿になったのか。」
「あれが、蒼月華の最終形態!?」
光秀も呟いた。
そう、完全に自我を持った蒼月華は使用者を拒絶し、自ら破壊の刀となる。
この姿こそが、蒼月華の真の姿なのだ!
信長たちが立っている地面が、蒼く輝く。
「不味いよ、信長。早く、逃げないと!!」
だが、信長は立ち向かった。
「まさか、織田信長。」
家康は呟いた。
「蒼月華と戦う中で、戦いの記憶を呼び覚まし、"第六天魔王"を呼び起こしているのか。自ら、呼び起こすのか!?」
ドン! という音ともに、巨大な風が発生した。
「はァ!」
国を滅ぼせる力を持つ蒼月華の真の姿に、生身の人間である信長が対等にやり合う。
いや、信長の実力はそれ以上なのかもしれない。
信長は刀で蒼月華を弾き、回し蹴りで蒼月華から距離をとった。
その隙に、信長は構えた。
蒼月華が体勢を整えた時。
「【
信長の背後から【
刀に当たった【
「今だよ、信長!!」
「任せておけ、結衣!!」
燃えた刀を持ち、信長は走り出した。
「はァァァァァァァァァァァ!!」
信長の赫の刀と、蒼月華の蒼の刀がぶつかり合った。
キン! という金属音だけが響いた。
そして、蒼月華の折れた刃が地面に刺さっていた。
――――――――――
「大丈夫かい! 信長くん! 結衣くん!!」
遅れてやって来たミラン先輩だったが、折れた蒼月華を見て驚く。
「誰がやったの?」
「信長!」
結衣が食いつき気味に答える。
「やっぱり、信長くんは凄いんだね!」
「ま、まぁな。やる時はやるからな!」
信長自身、なんでここまで戦うつもりになれたのか分からなかった。
でも、戦って勝てたのだから良しとしよう!
「さぁ、帰ることにしよう! 信長くん! 結衣くん!!」
「はい!」
その時、信長がミラン先輩の背負っていたリュックサックを漁った。
そして、1本の酒を取り出し飲み始めた。
「の、信長?」
と、結衣が言う。
「いやぁ、これがないとやっていけないのだな!」
「そ、そうなんだね。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます