『生徒会』篇

第36話 特大サイズって惹かれるよね。

「だァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」


 放課後のターボン学園。

 風紀委員活動室に信長の叫び声が響いていた。


「ど、どうしたの信長。」


 ちょうど、宿題をしていた結衣がそのように信長に問う。


「我の、我の、我の金平糖がなァァァァァァァァァァァァい!!」


「......。」


 結衣はすかさずイリスの顔を見た。

 イリスは真顔で結衣の顔を見つめていた。


「我の、我の、金平糖が......。我が残しておいた金平糖が.....。」


 信長は唸るようにそう言うと、カメノスケのいる所へと飛んで行った。


「お主だな! お主が食べたんだな!!」


「オレが食べるわけないだロ。オレが食べるのはエサだけダ。」


「じゃあ、誰が我の金平糖を食べたんだァァァァァァァァァ!!」


 またもや、信長の叫び声が活動室に響いた。


「の、信長。」


「なんだ。」


 すると、そこで結衣が信長にある提案をする。


「金平糖、買ってきなよ。」


「なぜ、我が行かなくてはいけないのだ。我のコンペ金平糖を食べた者が買いに行くべきだ。」


「あー、フードスペースに新しく開店した金平糖屋があるらしくてね。そこの金平糖が顔よりもデカいサイズって事で話題になってるから、信長もどうかなーって。」


「その金平糖は、美味しかったか?」


「うん! すごーく、美味しかった。」


「なら行ってくる。」


 信長は、その大きな金平糖を求めて活動室を飛び出して行った。


「あぶなかったー。」


 信長が活動室から出て行った事を確認した結衣は、そのように呟いた。


「まさか、あそこまで怒るとはねェ。」


 イリスもそう言う。


「まぁ、まさか信長の金平糖を私たちが間違えて食べたなんて、信長が思うはずもないだろう。」


 と、結衣がそう言った時、活動室の扉が勢いよく開けられた。


「やっぱ、お主たちだっのだな。」


 扉を開けたのは、信長。つまり、信長は今の結衣の言葉を聞いていた。


「あ。」


「お主たちが我の金平糖を食べたのだなァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!?」


 すかさず、イリスが信長の前に立つ。


「勘違いしないでほしいなァ。食べたのは、結衣だけだよォ。」


「は? イリスも食べ......。」


 信長の金平糖を食べたのは、結衣とイリス。そのため、結衣は反論しようとするが......。


「ほほう、結衣。良い度胸をしているではないか。」


「えへ、えへへへ。」


「ふざけるなァァァァァァ!!」


 怒った信長が結衣へ向かって飛んだ。

 だが、結衣は迷わず魔力を放出させた。


「【蓄積チャージ】【発射ショット】!!」


 結衣の手元に作り上げられた【水球ウォーターボール】が信長の体を優しく包んだ後、そのまま信長を活動室の扉から外へと押し出した。


「いったァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァいィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!」




――――――――――




「一応、同じ委員会のメンバーだぞ。魔法でガチで攻撃するとか有り得る!?」


 ターボン学園に存在するフードスペースへと向かう信長。その道中で信長はそのような事を呟いていた。


「お、あれが噂の煎餅屋か。」


 そして、信長はお目当ての店を見つけ出した。


「特大煎餅とやらが1つ欲しい。」

「了解しました。」


 いかにも煎餅屋の店主というオーラを醸し出している男から、顔よりも大きいサイズの煎餅を受け取った信長は、フードスペースの路地裏へと向かった。


「さて、この煎餅がどのような実力を持っているのか、試させてもらおうか。」


 信長はそう言うと、その大きな煎餅を1口食べた。


「こ、これはッ!?」


 普通の醤油煎餅!? だが、ただの醤油煎餅なのにこの大きさに魅了され、ただの煎餅よりもうまく感じている!?


「す、素晴らしい出来だ。」


 信長がそう言った時、信長の肩を誰かが叩いた。


「なぁ、にーちゃん。ここ、俺たちの溜まり場なんだけどよー、なんか俺たちに用か?」

「ん? 誰だ、お主たち。残念だが、我はお主たちを知らないから、お主たちには用はない。我は、この煎餅を食べたいだけだ。」

「そーかいそーかい。じゃあ、早く消えてもらおうか。」

「少し、待ってはくれないのか? 我がこの煎餅を食べ終えるまでとか。」

「早く、消えろ。」

「なぜ?」

「消えて欲しいからだ!」


 男はそう言うと、信長へ向けて拳を振り下ろした。

 信長はとっさに身を縮める。だが、その時に、信長の持っていた煎餅が男の拳に貫かれられた。


「だァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!?」

「うるせーぞ。」

「なんで!?」

「うるせーからだ。」

「......。」


 ここはやむを得ない。なんか怒ってるみたいだし、今すぐ逃げよう!


 信長はそう考えると、大通りの方へと走り出した。

 だが、その道が男の仲間たちらしき人達に塞がれた。


「ちょうど、俺たちも遊び相手を探していたんだよ。」

「へ?」


 男たちは一斉に信長へ襲いかかった。


「いや! いや! いやだァァァァァァァァァァァァ! 助けてェェェェェェェェェェェェェェェ!」

「叫んだって助けなんかこねーよ!!」


 男の拳が信長の顔面の直前まで迫るったその時。


――ドンッ!!


 男の拳が鈍器のようなモノで殴られた感覚を受けた。


「ッ!!」


 次の瞬間、そこ場にいた男たちが一斉に痛みを叫び出した。


「だァァァァァァァァァァァァ!?」


 男たちは何が起きたのかを理解できず、すぐにその場から逃げ去った。


「何が、起きたのだ?」


 結衣が放つボールでは無い。

 イリスが使う電撃では無い。

 ましては、魔法でも無い。純粋な、武器による攻撃。


「お久しぶりですね、信長様。」


 次に聞こえたのは、信長も聞き馴染みのある声だった。


「お、お主は......まさか......?」

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