第33話 わんわんわわーんわんわんわわーん。

「さぁて、今日も委員会へと行こうかな〜。」


「そうねェ。最近、仕事がないから楽なんだけどねェ。」


「このまま、何も無いほうがいいんだけどな〜。」


 ある日のターボン学園。

 1日の全ての授業を終えた結衣たちは、風紀委員の活動室へと向かっていた。


「それにしても、カメノスケの飼い主どうやって探すんだろう。」


「私も不思議だわァ。」


 結衣とイリスは、カメノスケの話をしながら活動室の扉を開けた。


「お待たせ、カメノスケ〜。」


 結衣がカメノスケに声をかけた。

 だが、、、


「あらァ? どこにもカメノスケがいないわァ。」


「え?」


 結衣たちは、活動室を探索した。

 どこかにカメノスケが隠れているのではないかと考えたからだ。

 だが、結局、どこにもカメノスケは居なかった。


「ねぇ、イリス。」


 しかし、結衣が何かを見つけた。


「なにィ?」


「ここ見て。」


 結衣はそう言うと、活動室の窓に指を指した。


「窓が割れてる。」


「ホントだァ。」


「どこかに遊びに行っちゃったのかな。」


「いやァ、部屋の内側にガラスが飛び散ってるゥ。だからァ、もしかしたらァ、誰かに連れ去られてしまったのかもねェ。」


「え!? それ、ヤバくない? 早く、ミラン先輩に伝えないと。」


「待ってよォ、飼い主が取りに来たって可能性もあるでしょォ。」


「でも、飼い主は捨てていったんだよ。正直、そんな人にカメノスケは任せられないって思うんだよね。」


 結衣とイリスは顔を見合せた。


「ミラン先輩に伝えよう。」


「その心配はないさ! ボクは全部聞いてたからね!」


「ミラン先輩!?」


「そして、ボクは既にカメノスケの居場所を知ってるからね!」


 ミラン先輩が活動室の扉を開けてそう言った。


「信長くんも連れてきた。さぁ、行こう! カメノスケを取り返しに!」


「「おー!!」」


「なんで、我まで......?」




――――――――――




「久しぶりじゃねーか、亀野郎。」


「オレはキミが嫌いダ!!」


「俺もおめーがきれーだよ。ただ、おめーが見た、あの装置は他所にバレちゃいけねーんだ。」


「あっ! 地震発生装置のことだネ!」


「まさか、あの委員会の奴らには言ってねーよな?」


「まだ、言ってなイ!」


「そーか。じゃあ、とりあえずおめーには、ここで死んでもらうぜ。」


 チンピラたちのボスである男は、カメノスケへと近づき拳を振り上げた。


「ここで、死んじまいな。」


「逃げロー!!」


 カメノスケは、男から逃げる。

 男は、そんなカメノスケを追う。


「簡単に追いつけるわ、馬鹿野郎。」


 だが、男の拳は寸前まで迫ってきた。


「ヤバイ!」


 その瞬間、轟!! という音がその場に響いた。


「ナニガアッタンダ?」


 カメノスケはゆっくりと何が起きたのかを確認する。

 カメノスケの目の前に誰かが立っている。

 誰だ?


「何この場所、変な装置もいっぱいあるし。」


「お、オマエは!? し、師匠!!」


「やぁ、カメノスケ。」


 結衣が放った魔法によって、カメノスケは救われていた。


「随分と危なかったようだな、カメノスケよ。」


「はぁ、信長かよ。」


「なんだよ! 我で悪かったな!!」


 カメノスケの背後から、信長がやって来た。

 その直後、信長とカメノスケのいるその場に魔法陣が描かれた。

 そして次の瞬間、信長とカメノスケは、別の場所へ移動した。


「信長くん、カメノスケくん。大丈夫?」


「だ、ダイジョウブ。」


「大丈夫だ。」


「じゃあ、ボクは結衣くんとイリスくんのところに行ってくるね。」


「分かった。」




――――――――――




 爆発による煙によって、視界が塞がれたが、それも晴れてきた。


「いてーじゃねーかよ。」


「痛くしたんだもん。当たり前でしょ?」


「ははは、そーか、そーか。」


 晴れてきた煙の奥にいるのは、チンピラを仕切っている男。確実に球を当てた。

 なのに、なぜ。


「この人、無傷なのよ。」


「これが、俺の魔法【防壁】だ。」


 男がそう言った時、男の背後から女の声が聞こえた。


「ふーん、それならァ、その【防壁】を打ち破ればいいんだねェ。」


 その女は、全身に雷が帯びていた。


「【雷剣サンダーソード:抜刀術】」


「いけ! イリス!!」


 イリスは、ひと踏み込みで男の間合いへと入る。

 そして、電撃となるイリスの持つ剣が、男へと襲いかかった。

 それも、目では追いつけない程の速さで。


「【防壁】!!」


 しかし、イリスの攻撃は男の【防壁】により、守られてしまう。


――パリンッ!!


 だが、イリスの攻撃は男の【防壁】を割った。


「良くやった、イリス! 喰らえ!! 【発射ショット】!!」


 【防壁】が破られた男は、結衣の【火球】を真正面から受けた。


「グハッ!!」


「安心してよ。この球は柔軟フレキシブルだから、柔らかい。死にはしないよ。」


「う、うるせー。これでも、喰らえ!!」


 ダメージを受けた男は、最後の力をふりしぼり、男のポケットに入っていたボタンを取り出し、そして、押した。


 次の瞬間、轟!! という音と共に、地面から大きな機械が現れた。


「なに、これ。」


「へっ、ただの地震発生装置さ。もう、起動はした。誰にも壊すことはできねーよ。」


「う、そ。」


 丁度その時、結衣とイリスのいる所へミラン先輩が到着した。


「間に合わなかったか!」


「ミラン先輩知ってたんですか?」


「うん、ボクが最近ボコボコにしたチンピラから聞いてたからね。」


「......。」


 どうしたらいいの。

 結衣は、心の中でそう呟いた。


 その時だった。


「いくぞ、我の親友。カメノスケよ。」


「おう、マイブラザー信長。」


 地震発生装置と呼ばれる機械に、信長とカメノスケが近づいていた。


「信長! カメノスケ! 危ないから離れて!」


 結衣はそう叫ぶが、信長たちにその声は聞こえていなかった。


 信長たちは、両手をとある形に作った後、腰の右側にその両手をまわした。

 その姿は、まるでドラゴンのようなボールのような何かのような者に出てくるキャラクターそのものだ。


「かー!」


 と、信長。


「めー!」


 と、カメノスケ。


「はー!」


 と、信長。


「めー!」


 と、カメノスケ。

 ここまで、叫んだ2人の手元には青白い光が発生していた。

 そして、最後。


「波ァァァァァァァァァァ!!」


 その瞬間、信長とカメノスケの手元から青白い光が一気に発射された。




――――――――――




 次の日。


「今回も信長の手柄ってわけだけど。」


「なんだか不服そうじゃないか。」


 無事に事件を解決した風紀委員は、今日も活動室に集まっていた。


「あの技は今後、絶対に使わないでね。」


「えー、せっかく我の親友と編み出した技なのに。」


 丁度その時、活動室の扉が勢いよく開けられた。


「君たち!」


 ミラン先輩が入ってきたのだった。


「結局、カメノスケくんの飼い主は見つかっていない!」


「ま、まぁ、確かにそうですね。」


「なので、これからもカメノスケくんを飼っていくとする!」


 ミラン先輩がそう言った時、カメノスケがミラン先輩の大きな胸の中から、顔を出した。


「これからも、よろしク。」


 か、カメノスケ!? なんで、また先輩の胸の中に!? あー、なんかあの時の信長を思い出してきたわ。やっぱ、許せなくなってきたわ。

 という結衣の心の声が信長にも伝わる。


 あれ、結衣。なんか、怒ってない? なんか、魔力が溢れてない?


 風紀委員は、今日も騒がしくなる予感がしていた。

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