第32話 なまえを聞いても分からない。
ターボン学園ショップスペース。ここには、様々なお店が並んでいる。
そんなショップスペースの一角、服屋区にて、1つの事件が起きていた。
「おい、ねーちゃん。」
「な、なんですか?」
「俺にぶつかったぞ。」
「そ、それは、すみませんでした。」
どうやら、服屋に買い物に来ていた女子生徒がガラの悪い男子生徒にぶつかってしまったらしい。
服屋区に訪れ、色々な服を眺めていたお客様たちは、騒ぎに気付き、離れていってしまっている。
「あァん? 謝るだけで全てが解決するなら警備隊なんて必要ねェんだよ!」
「は、はひッ!! す、すみません!」
そして遂に、人が完全にいなくなった。
それもそのはず。
現在、服屋区に蔓延るのは、巷で話題になっているチンピラ。魔法は使えない
なぜなら、たとえ
彼らは魔法が使えない分、他が優れていた。
「100万持ってこい。今すぐにだ。」
「む、無理ですよ! そんな事!」
「無理だァ?」
「す、すみません!!」
「まぁ、いいさ。俺もそこまで悪じゃない。金が払えねェなら、体で払ってもらうしかないけどな。」
「んんッ!?」
チンピラが突然、女子生徒の胸を服の上から触った。
「や、やめ――」
「おいおい、じゃあねーちゃん。ここで脱いでくれよ。」
「それも......でき」
「出来ないわけないよな? それとも、今すぐに100万持ってこれるのか?」
「んん、んんん。」
女子生徒は泣いてしまう。
「たっく、しゃーねー。サンドバッグになってもらうしかねェよなァ!!」
痺れを切らしたチンピラが女子生徒の顔面へ拳を走らせた。
「ヒッ!」
「【
女子生徒が手で顔面を守ろうとした時、誰かの詠唱とともに目の前で爆発が起きたような音がした。
「ガフッ!?」
「女の子ってのは恐怖に支配されると何も出来なくなっちゃうの。たとえ、魔法が使えたとしても。」
女子生徒の目の前に誰かが立つ。
「だからこそ、そんな時には誰かが守ってあげないといけないわけ。分かった? カメノスケ。」
「う、うン。」
その誰かは、肩に喋る亀を乗せていた。
「じゃあ、カメノスケ。よく見ててね。」
「う、うン。分かっタ、結衣。」
結衣は右手をチンピラへ向けた。
「【
すると、結衣の右手に粘着性のある【
「【
その詠唱とともに、結衣の右手から粘着性のある
すると、チンピラはその場から体を動かせなくなった。
「君はそこでしばらく反省してな。」
結衣がそう言った時、結衣の肩の上で目を輝かせている"1匹"が突然、叫び出した。
「す、すげぇぇぇぇぇぇぇぇぇェ! 凄い、凄いよ結衣!! いや、師匠! 師匠と呼ばせてくれ!!!」
「う、うん。好きに呼んで、いいよ。」
「あ、ありがとぉぉぉぉォ!!」
そして、10分ほどが経過した。ターボン学園のショップスペース、服屋区に警備隊が到着した。
「あ、あの、警備隊さん。」
既に結衣とカメノスケはその場から居なくなってしまっていた。
「あなたが、被害を受けた方ですか?」
その場に残っていたのは、被害を受けた女子生徒のみ。
「は、はい。そうなんですけど、実は。」
女子生徒は警備隊に事情を説明した。
「え、えぇぇ!? 犯人が逃げた!?」
「は、はい。私が目を離している隙に逃げられてしまいまして。」
「そ、そうですか。」
あのチンピラは、結衣の【
――――――――――
ここは、とある路地裏。この路地裏には、複数のチンピラ達が集まっていた。
そんな場所に、1人のチンピラを抱えた男が現れた。
男は抱えているチンピラを適当にその場に投げ落とす。
「がふ!?」
「おい、テメェ。たかが女に負けてんじゃねーよ。」
「す、すみませんでした! それでも、あの女、確実に強かったんですよ!」
「知らねーよ。そんなこと。それよりも、お前の処罰についてだ。」
「なッ!?」
「ただな、」
男は、【
「アイツの肩には、俺らの標的が乗っていた。テメェは良い働きをしてくれたってことだ。1発で許してやる。」
「ヒッ!?」
男がそう言うと、チンピラは男の部下のような人たちに、路地裏のさらに奥へと連れていかれた。
「さてと、待ってろ亀野郎。テメェが見たその全てを、テメェの存在ごと記憶を消してやる。」
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