第30話 あなたのおうちはどこですか。

「おい信長。」


「なんだ上から目線で偉そうな亀。」


「オレには『カメノスケ』というナマエがあるのだから、そう呼べ!」


「はいはい。それで、カメノスケよ。我になんの用だ?」


「そうだっタ。オレはある日、このような事を思いついたんダ。」


「なんだ? 早く教えたまえ。」


「かめはめ波が打ちたイ。」


「......」


「なぜ、ダマるんダ?」


「我も打ちたい。」




――――――――――




「という会話をしていたんだ。」


「ちょっと、待ってぇぇぇ!? それ、ヤバい単語だよ! めちゃくちゃヤバい単語だよ!」


「いやいや、我の読んでいるフライにも同じ技が登場している。だから大丈夫だ。」


「どこが大丈夫なんだよ!!」


 信長から相談を受けていた結衣は、ため息をついた。


「カメノスケくんにかめはめ波なんて打てませんって伝えておいて。」


「いや、結衣よ。」


「何、まだ何か企んでるの?」


「我もかめはめ波を打ちたい。」


「だから?」


「科学の力というモノに頼ろうと思う。」


「は?」


「科学部へ行こう。」




――――――――――




「ここが科学部。」


 結衣は、科学部の活動室の扉の前でそのように呟いた。


「失礼するぞー。」


 と、信長は何も考えずにその部屋へと入っていった。

 結衣もその後を着いていく。


「誰か居るか?」


「あ、はい! 居ます! 居まーす!」


 すると、部屋の奥から1人の女の子の声が聞こえた。

 それと同時に。


 ガシャンッ!!


 という音が聞こえた。

 とても大事なものを落としてしまったかのような音だ。


「ちょ信長! 様子見にいくよ!」


「え、我も行くのか!」


 結衣は、信長の制服を引っ張り科学部の部屋の奥へと進んだ。

 そして、そこで見たのは。


「だ、大丈夫ですか!」


「う、んーん。だ、大丈夫じゃないよー。」


 頭から薬品を浴びてしまっている女の子がいた。

 だが、幸いな事に女の子が浴びた薬品は、危険なものでは無かったらしく、怪我はしていない。


 女の子は、ほうきで落としてしまった実験器具の破片を集めていた。

 そんな女の子は、頭から薬品を浴びてしまっていたため、服が濡れてしまっていた。そのせいもあり、女の子の来ている服が透けていた。


「ちょ、信長! 目を瞑って!」


「ああああ、わわわ、分かっぞ!」


 信長と結衣は、慌てる。


「え、えっとー、女の子さん? 一旦、着替えを――」


 と、結衣が女の子に言いかけた時、女の子がそれを遮った。


「あれ!? あれあれあれ!? よく見ると信長様じゃないですか!」


 自分の名前が呼ばれた信長は、瞑っていた目を開けた。


「モノカではないか!」


 モノカとは、信長たちの同級生で、過去に化学の実験中に全身が凍ってしまっていた彼女を助けてあげた事がある。


「信長様! 遂に私のところに来てくれたのですね!!」


「そうだ、実はお主に頼みがあって。」


「え!? 私のところに来てくれた!? つまり、私の事が好きってことですか!? あああああああ!! 私も信長様が好きですゥ!!」


「お、おう。」


 この様子を見ていた結衣は、信長を一時退室させた。


「ねぇ、なんで私と信長様を離れさせようとしたかな。」


「いや、その前に。1つ頼みたいことがあってここに来たんだ。その頼みを聞いてほしい。」


「それ聞いたら、信長様と会える?」


「もちろん!」


「じゃ頼みを聞こう!」


 結衣は、モノカにカメノスケの事とかめはめ波の事を話した。


「いやいや、今の科学じゃかめはめ波は打てないよ。」


「だよね。」


「はい、話は終わり。じゃあ、私は信長様と運命の再会を果たしに行ってきマース!」


「はーい、」


 モノカは急いで科学部の部室から出て行く。

 モノカが出たいった事を確認した結衣は、自分の後ろに隠れていたとある人に合図をする。


「信長、もういなくなったよ。」


「そうかそうか、これで安心だな。」


 信長はそう言うと、隠れていた場所から出た。

 その瞬間だった。


「信長様ァァァァァ!!」


「ッ!?」


 信長は声のした方を向いた。

 そして、その声のした方とは天井だった。

 信長の真上に、モノカがいた。天井から顔だけを覗かせているモノカがいた。


「ギヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!

 怖すぎ!! 怖すぎだよォォォォ!!」


 信長は急いで部屋から出ていった。

 その後ろを、天井から落ちてきたモノカが追いかけて行った。


「信長様ァァァァァァァァァ!!」


 結衣は、ただその様子を眺めることしか出来なかった。

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