静かなまぼろし

海翔

第1話

 年末も、後3日で仕事も終わり、今年は久々に実家に帰ろうかと思っていた。

そんなところに母から電話があり「詩織さんからこちらに帰ったら連絡もらいたいと言われたので、電話してやってね」と言われた。

 さっそく、詩織に電話したら「正月にみんな集まるので会いたいな、、なかなか会えないのでこんな時しか会えないので帰ってきてもらいたい」と言われ、さやかは「うん私も久々にみんなに会いたいから正月にはそちらにいきますね」

「正人や祐司、圭そして、真理も、みんな元気ですか?」

「正人と圭は地元にいるので良く会うけど元気です。一応、みんなに連絡しておくので、必ず帰ってきてね」そう言われ

「うんうん」と返事をした。

 28日に仕事納めで、1月の9日までの長い休みに入った。

29日に部屋の中を片付けて、翌日の朝に車で実家に向かった。

さやかの実家は東北道を通って松尾八幡平から30分のところにあり、雪の回廊を抜けて松川渓谷に立地した静かなところに実家がある。

 近くには松川温泉がある。ここの温泉は乳白色で岩風呂が有名だった。さやかは家を朝早く出て午後の3時過ぎに無事に実家に帰ることが出来、そのまま詩織に会いに向かった。

 家に帰る前に詩織には、電話しておいたので、行き付けのレストランで待ち合わせした。レストランに入って奥の方に変わりない服装の詩織がいた。

「さやかお久しぶりやっと会えた。一応、みんなに連絡をしておいたから」

「うんうん、ありがとう。もう5年振りですね」

さやかは「東京の生活に慣れすぎてしまった。でも、ふっと、感じるときに故郷を思い出す時があるのそんな時に帰りたくなりますよ」

「でも、こうやって故郷があることは嬉しいことですね」

「明日みんなに会えるのが楽しみですよ」

 詩織が「さやか今日はうちに泊まらない。たくさん話したいことあるので、、、」

「うん、何もないから、親に電話して置きますね」

さやかは家に電話して「今日は詩織の家に泊まるから」そういったら、母親から「わかりました。迷惑かけないでね」と、釘を刺されました。

 食事はこのレストランで、途中、お酒とつまみを買った。

ここから10分ぐらい山のふところに詩織の家があった。

実家の横に新しく建てた家で温泉も引いてあった。

いずれ結婚したらここに住めるようにと親が作ってくれた。

 さっそく詩織はさやかに「うちの温泉に入ってください」と言ったら、外は寒かっただけに「すぐに入っていいですか?」と、聞いたら「どうぞ」と場所を教えてくれた。

さやかはスエットとバスタオルを借りて、浴室に向かった。

 浴室の中は硫黄の香りがした温泉だった。

裸になって浸かっていると、その後から詩織も入ってきた。

「こうやって入るのはもう、6年振りですね。あの時はお互い好奇心で、、詩織はさやかのことすごく気になっていたの」

「何となく私の体成長が遅いのかと思って、さやかとお風呂に入ったの。でも、変わりなかったので安心した」

「今もこうやって一緒に入ったけど、さやか体つきが丸みを帯びた感じで大人っぽくなった感じね」

「詩織さんこそ均整の取れた体になったのでは、、」

「あの時レズっぽいことしていたけど、本当は恥ずかしかった。でも、興味はあったのよ」そういいながらさやかは詩織の体に触れて口づけをした。

 柔らかな肌に触れた瞬間に鳥肌がたち始めた。

詩織は興奮して二人は絡み合うように体を密着してきた。

触れあった部分はお互いの体の温度で温め合いながら体を触れあっていった。

さやかが詩織の性器を刺激し始めた頃にはびっしょり濡れて愛液が溢れ出していた。

そして、一気にエクスタシーへと導いた。

その後を追うように詩織はさやかに同じように刺激をして行くと大きな声を出して悶え始めたのでそのまま一気に快感へと導いた。

 二人はそのまま湯に入り、あっさりと浴室から出てきた。

バスタオルで拭いて居間に移動した。

 そして、お酒とつまみを用意して学生時代のことを話した。

さやかは「私その当時、圭と付き合っていたの」

詩織はそれを聞いて「私は正人と付き合っていたわ」

「でも、進展がなく半年付き合って別れたの、そんなときに失恋の寂しさから祐司と一夜を共に過ごしてから今も時たま会っては一夜を過ごす仲なの」

「でもこの間、祐司から一緒にならないかと言われて、そろそろ身を固めてもいいかなと思ってるの」

「そうだったの」

さやかは「私も圭と付き合い初めてから1月後に圭に抱かれたの」

「私、圭が好きだったからすべてを彼に与えたの、初めてだったけどその痛さが愛に変わるのかと思いすべてを彼に、、、ひとつになった時はもう、何も言えないくらい嬉しかった」

「それから数ヶ月に1回ぐらい会っては愛を確かめあっていたの。私も早く圭のお嫁さんになりたい、、」そしてその夜は遅くまで話して夜が更けていった。


 翌朝はいい天気で目を覚ましたら、詩織はシャワーを浴びてスッキリした顔で朝食を作っていた。

 さやかは眠い目を擦りながらぼーとしていると詩織は「シャワー浴びるとスッキリするよ」と言われ、浴室に向かった。

 浴室で裸になり頭からシャワーを浴びて行くと昨日のことが流されていくようだった。

暖かいシャワーの飛沫が体に当たり弾けるように乳房の先から流れていく、まだまだ私は若いんだと再確認した。

 スッキリさせてバスタオルで拭いて居間に行くとコーヒーの香りとサンドイッチが出来ていた。

 スエットに着替えて、二人で朝食を食べた。

食事が終わり夕方に会う約束をして、さやかは実家に帰ることにした。


 家に帰ると両親が居間でお茶を飲んでいた。

父親は「東京の生活はどうだ、、」そう言われ、

さやかは「毎日忙しくてここに来ると気持ちまで洗われる感じです」

父親は「そろそろ身を固めてもいい時期では、誰か好きな人でも出来たのか?」

さやかは「そんな余裕がないです。そろそろとは考えていますが、、、出来たらきちんと連絡しますから」そういって自分の部屋に向かった。

 荷物を片付けてゆっくりしていると時間の流れが早く進み、もう、夕方になってしまった。

 時間が近づき、ひとまず駅前にあるかまくらと言う店に出掛けると、正人、祐司が先に着いて待っていた。

そこに加わって、しばらく話していると、真理、詩織、圭の3人が入ってきた。

 圭は「みんな元気ですか?」と言ったら「はーーい」と返事が返ってきた。

さやかは6年ぶりに圭に会った。

あの当時よりは逞しく見えた。

 圭は「さやか東京の生活はどうですか?」

「うん、ただ忙しいだけでみんなに会ったらここに帰りたくなってしまったの、、、」

正人は「東京では何もなかったの?」

「一度は恋愛したけど、何となく別れてしまったの」

真理は「私は5月に結婚することに決めた。先日、お見合いして決めました。相手は父親の後輩で昌也さんと言う人です」

「これはおめでとう」と、祐司はそう言って拍手してくれた。

 正人は「2年前から親父の仕事の後を継ぐために毎日が勉強ですよ」

「そう言えば正人の家は食品添加物を作っている会社でしたね。結構大きな会社と聞いていたけど」

「その分大変ですよ」

詩織は「みんな少しずつ生活気付いているんですね」

「確かに6年もしたらお互いに変わりますね」お酒を飲みながら話していくと過ぎて行く時間は早く過ぎ、10時を回ったところでお開きになった。

 さやかは帰りは圭と同じ方向だったので、一緒に帰った。

圭は「もしよかったら、うちに来ないですか?少し話したかったので、、」

「うん、、、」

「一緒にいると6年前に戻ったような気持ちになれるね」

「私も、、、お互い何も変わっていないもね」

「ただ時が過ぎていっただけだよ、、」そういって、圭はさやかに口づけをした。

ふっと、あの時に戻ったような気持ちになった。

そのまま部屋の中に縺れるように入り、扉を閉めて、ベッドの部屋へと移動して、お互いに着ているものを脱がして裸になり、ベッドに横になった。

口づけをしながら二人の胸が重なり、ふっと、さやかは圭の暖かさを感じた。

指先が巧みにさやかの性感帯を刺激して行き、さやかは微かに悶えながら濡れていくのがわかった。

圭は透かさずさやかと一つになり、最高の喜びを与えてやった。

二人はそのまま天井を見ながら静かな時間が過ぎて行き、さやかはしばらくして、浴室に向かい、頭からシャワーを浴びて6年間の時を流した。

そこに圭も入ってきてシャワーを浴びた。

二人で抱き合って、熱い口づけをした。

 さやかは「圭と一緒に居たかった。圭、もう一度6年前に戻して、、、」でも、圭は何も言わなかった。

 浴室から出て、さやかは服を着て何も言わず圭の家を後にした。

さやかはやりきれない気持ちで目に涙をためて家に着いた。

 部屋に入り何も着替えないで布団に潜り涙を流して泣いた。そして、いつの間にか深い眠りに着いた。

 眠りに就いてしばらくしたらさやかは夢を見た。

圭が「さやかと一緒になろう、君と家庭を持ちたい」そう言われ、さやかは夢の中で涙を流した。

「私、圭のお嫁さんになりたかったの」そういって、大きな瞳に涙を流した。

その時突然さやかの携帯が鳴った。

 さやかは寝ぼけ眼で携帯を取り出したら、詩織から電話で「さやか、落ち着いて聞いてね。今、正人から連絡があり、圭が自殺したと連絡が来たの、これから病院に行くのだけれどさやかも来てちょうだい」

 突然、詩織から聞かされてさやかは目の前が真っ暗になってしまった。

たった数時間前まで会っていただけなのに、、、さやかは持っていたものをもって病院に向かった。

 病院には、みんな集まっていた。

さやかはみんなの顔を見て大きな声をあげて泣き出してしまった。

「みんな私が悪いの、、圭に無理を言ったから、、圭、許して、、、」そういって涙に濡れた。

 しばらくして、警察とのやり取りがあり、さやかに圭からの遺書が渡された。


 遺書には、

 さやか、君と一緒になれなくて、ごめんね。

 東京で株に手を出して大きな借金を作り、どうにもならなくなってしまった。

 もうこれ以上は生きていけない。

 自分のわがままを許してください。

 最後にさやかに会えて嬉しかった。

 さやかは自分よりもいい人を見つけて結婚してください。

                           圭

と、書いてあった。

 さやかは涙を流しながらそれを読み続けた。

周りのみんなも涙で濡れていた。

そして、荼毘に付された。

 

 あれから1年が経ち、さやかは実家に戻った。

しばらくして、親の勧めで見合いをして、さやかは結婚をした。


 その後改めて5人で集まる機会があり、圭の墓に行き思い出話をした時、

さやかは「圭の亡くなる前に夢を見たの」

「圭に求婚された夢を、、今ではまぼろしに終わったけど、、、何となく切ないです」

「でも、来年私に子供が生まれるの,今は幸せな家庭が持てて嬉しいです」

そういって、さやかは空をあおいだ。

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静かなまぼろし 海翔 @ukon9

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