陽だまりのにゃんこ ~デレた仔猫とテレる主人~ 完結済
七兎参ゆき
あいのものがたり 1/4
これは少し前のお話し。
それは
ちょっと照れ臭く
ちょっと赤裸々で
ちょっとじゃなくて凄く嬉しい始まりのエピソード。
少しばかり驚いて
少しばかり慌てて
たくさんの嬉しいを詰め合わせる日々へのプロローグ。
あたちから話そう。
私から話そう。
ふたりの始まりを一緒に語ろう。
壮大なスケールのエンターテイメントみたいな書き出しね。
あたちからすればそんなに身構えるお話しって訳じゃないのよ。
偉大な先生から拝借して引用すると『名前はまだない』そんな時のお話をしましょうと云うだけね。
簡単にまとめるとあたちからルイになりました。
はい終了。
これだとあまりにも中身が無さ過ぎるから、小っさい事をこれから長々と綴って行くけど宜しいかしら?
さて、どうしようかしらねぇ。
何からお話しすればと考えてしまうわ。
ありきたりだけどご主人と会った時の事が時系列的に一番最初だし、このエピソードにも適ってるし丁度いいかな?
それじゃ、あの日の事をお話しするわね。
まだ、あたちは小さかったから曖昧な所も在るのだけど、ご主人と会った日は雨が降っていてずぶ濡れになったあたちは寒くて震えてたの。
お腹も空いて灰色の世界にひとり取り残されたような気分だったわ。
大粒の雨が降り出す前には、凶暴な大きな黒い鳥に追い駆けられたから体力も尽きかけて、もうクタクタでヘタァって座り込んでたの。
そこは凄く嫌な臭いが鼻を衝いて不快だったけど、動く気力は残ってなかったから我慢してたわ。
そして少しでも雨が当たらないようにしながら『寒いィ』って何度も云ってた気がする。
小さな声でも出すと身体が温まっていく感じがして、少しだけど寒いのを凌げるからきっと無意識にそうしてたみたい。
それからどれ程時間が経ったか分からないけど、雨が突然身体に当たらなくなって不思議に思い見上げたら、ご主人が傘をさして雨を避けてくれてたの。
あたちは『ありがとう』ってお礼を云ったけど、やっぱり寒いのは変わらないからまたすぐに『寒いィ』って云ってたみたいで、ご主人はあたちを持ち上げて片手に抱いて暖めてくれたわ。
あたちをまじまじと覗き込んでる視線は感じるけど、その時は不躾な振る舞いに抗議する気力も体力も無く、そのまま眠ってしまって記憶がそこで途絶えてる。
いま思うとあの日のあたちは本当に幼く弱い存在で、体力だって比べ物にならないくらい貧弱だった訳だから、力尽きてしまったと云うのが真実なのかも知れないわね。
にゃんこに任せてしまうと『あたちからルイになりました』で完結してしまうので、ここからは私がお話の続きを引継いで参ります。
まだまだ幼児性の抜けない無自覚なルイのフォローに手を焼く事も多いけど、憎めない
さて、ルイと出会ったのは冬から春にかけて季節の変わり目のある日、何の変哲もなくゴミ出しをする為に外へ出た時でした。
その日は明け方になる頃に降りだし大粒の雨へと天気は崩れ、傘を差すのは面倒だなと思いながらも仕方ないと諦めるのと同時に、手早く済ませすぐに戻ってくれば鬱陶しい事は片付くと足早に向かった先での事。
集積場のカラス除けネットを捲りゴミ袋を置き再びネットを掛け気付いたのは、消えゆく燈火の様な弱々しい仔猫の鳴き声。
私には悲壮な響きを以って聞こえたので辺りに注意を向けると、手の平サイズの小さな命が尽きかけようとしてる姿を見つけたのだった。
咄嗟の事なので何を思ってそうしたか覚えて無いけど、仔猫に傘を翳すとしゃがみ込み様子を窺い、保護しなければと反射的に考え及んだ。
とは云え猫の飼育経験の無い私は何をどうしたら良いかも解かって無く、優先すべきは仔猫の体温低下を防ぐ事と食事を与えるくらいしか思い当たらなかった。
雨にあたらない様に傘の下に入れたまま片手で抱き上げ、家に連れ帰ると実行に移すべく行動を起こした。
暫定的に畳んだバスタオルの上に寝かせ、フェイスタオルでずぶ濡れになってる身体を拭いてあげる。
更に乾いたタオルを掛け布団にすると、他にしなければならない事や出来る事、逆にやってはいけない事を調べる為にネットで情報を漁った。
先ずは食事についての知識。
生後それ程経ってない仔猫には急場凌ぎとして牛乳を少し薄めて与えても良いとの情報に、特別ではないと安堵し冷蔵庫に在るか確認しに行った。
あくまでも急場としてなのでベストな食事についても引き続き調べたが、正確に生後の日数が判断出来ないので色々な情報に踊らされる結果になった。
やはり前提知識の無い私にとってネットで得られるものはこれくらいが限界だと思い至ったので、専門的な人の助言を得るためにペットショップと動物病院を検索し始めた。
何故ペットショップが真っ先に出て来たのかと云うと、ルイに出会った日が平日では無かったので、門外漢の私には動物病院イコール週末は休診と間違ったイメージを持っていたからである。
調べていく内に週末でも診療してくれる所も在る事を理解すると、地域を絞り動物病院を探した。
そして徒歩圏ではないが車を使えば遠くない病院を探しあて、仔猫の診療が可能か確認の電話をするのだった。
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