アーーーーーイ
ムーンショッター側。
春色の妖怪雪女にトップ2であろう2人があっという間にやられてしまい動揺が走っている。
遺跡の奥まで100人はいるが、あんな妖怪雪女にかなう力持ちは1人もいない。確かにあの女の言う通りあれは女神よりも強い。直感でそう思う。
「残るは、わたしだけか。女神から戦闘系スキルを与えられた中で、あんな化け物と戦えそうなのは」
「アーーーイ」
(……?)
腰まで伸びている自慢の髪、顔もいい感じと美人騎士の姿をした
(自分でいうか、とセルフツッコミする事も多いが鏡見てもいい感じなんだもん。
ムーンショット前と同じ外見だ。いや、髪の色は明るい感じがいいかな~って神様にベージュ色かそのくらい明るい色でって頼んだ。
自分がダメだったのは……掃除と料理と編み物。
スポーツは自信がある。背も167cmと女子の中では高い方だ)
そんな自分。その自分に尽き従う騎士の相槌がおかしい気がしたが、今はあのピンクの雪女からどう生き延びるか頭を働かせ中でそんな違和感に構ってなどいられなかった。
(だが思考が自由になったのは正直気分的に軽い)
そう、自分もあの鞭男に精神操作を受けていた。どうしてもあの男にべたべたするように思考が固定されるのは気持ち悪かった。
好きな男にならちょっと反応見ようかなでいたづら心でするけど(女子高だったので彼氏できたことないけど)、好きでもない男に霊気で操られてだからイヤイヤである」
だがその男もあの春色の妖怪雪女に殺されていない。
解けたということは死んだ後も残り続ける怨霊じみた能力じゃあない。
それがわかって安心した。
「正直、女としてはあのピンク女の言う事に100%同意なんだ……。
問題なのは正しいこと言ってる女がこちらを全滅状態にしようとしていることで……」
「アーーーーーーイ!」
「……ねえ。あなた」
「アーーイ?」
「……いやアーイだけで会話って無理だから。語尾上げても。ねえ。あなた。あの、あれ? そんな受け答えだった?」
「アーーーイ!!!」
「……おかしい感じがするけど、死が目前に迫っている状況ではそんなもんどーでもいいって感じがする……」
「いや、まともな態度見せれば殺しはしないだろう」
「!? なぜそんな事が。お前アイツを知っているのか」
彼女に膝間づいているアーイアーイうるさい男にこちらも目線を同じ位置にすべく彼女も彼と同じ視線になって顔をグンと近づけていく。
「アーーーーーーイ!」
「いやアーイじゃわからん。適当に言ってるのかはいの意味なのかすら分からん」
と言いつつじりじりと女騎士は配下の男ににじり寄っていく。
「視線の高さをこちらに合わせてくれるのは、こちらを気遣う態度が見えてありがたいけど、パンツ見えてます白アーーーーーーーーーーーーイ! セクシーなパンツが目の前にアーーーーーーーーーーーーイ!」
「ぅわあっ、ん~~ゃあっ!」
迎え来るかもしれない死の恐怖が心の中を占めていて、ミニスカートでいる自分はしゃがむ時足どうすればいいかとかに気が回らなかった。
「あっ、ううぅ……ぐっいまのはわしゅれろ!」
なんか舌まで噛んだし。
「で、でも忘れないでもいいかも……ここがわたしたちの最期の場所って言うなら、男はそれくらいの役得あっても良いか……。
女の役得って何なんだろうな……死ぬ前に役得欲しいな……」
「いや、だから、まともな態度見せれば殺しはしないだろうと言っとる」
「いや、あのお前さっきから変だぞ。
これを聞きたかったから視線合わせて下着見せる気なかったのに見せちゃって、お前に顔を近づけたんじゃないか。
お前別世界で奴と友達に……なった……とか?
なら嬉しいお前が説得してくれればわたしどころか100人の命の恩人だ」
「アーーーーーーイ!」
「いや、だから、アーイじゃわからん。適当に言ってるのかはいの意味なのかすら分からんてさっきやったよなこのやり取り」
と言いつつじりじりと女騎士は配下の男にさらに迫るようににじり寄っていく。
そしてアーイアーイうるさい配下の男の手を掴み自分の手と重ねさせた。
「ほら、すごい震えてるだろ。わたしの手。
転生前から結構かっこいい言われる美貌でそれをちゃんと自分で自覚して周りから、女子グループで時々バレンタインのチョコも女だけどもらっちゃうわたし。
これなら神とやらに戦闘スキルさえ頂ければこの美貌に似合う劇団の主役みたいな活躍をリアルでこなせるんだって意気込んだ結果がこれだ。
口調も女騎士っぽく変えてみたけど、本当の死の間際では真似じゃあ勇気出てこないものなんだね……。
モテモテ(街で声かけられるくらいだけど、誘いに乗るのは怖くてやめておいた)なのをいいことにあまり突っ走るもんじゃないな。
転生時に不細工にしてッて言えばよかったかな……。
美人はいい事も拾いやすいけど悪い出来事も寄ってきやすいって友達の忠告聞いておけばよかった。
ううっぅ……。ぐずん……。
ふええぇ、わたしあんな風に弾けどぶよおにじにだくないぃ…………やだぁ」
「いや、だから、まともな態度見せれば殺しはしないだろうと言っとる。
と何度言っても聞いたふうじゃないな。
こりゃ、さゆにちょっと言っておくか……?」
アーイアーイ男の正体は密偵ギルドでちょいと一手ご教授頂いた公爵ミハエル=シュピーゲル=フォン=フリードリヒだった。
(行けそう?)
そう思い素直に聞いてみるミハエル。
「ムーンショッターと言う事は、名前複数持ってたりする? アーイ!」
「え……わたし?
どうせあのこわい雪女に殺されるんだから別に言ってもいいよっ。バレてもいいよ。
日本て分からないか。そこにいた時は、
「秘密にしてた事ありがとう。
女が秘密を自分から話してくれたんだ。
そのお礼として雪女に命助けるよう嘆願するよ」
そう言ってミハエルは呆けたようにこちらを見てくるパオラ・ディ・タリアピエトラ(水野陽夏)に同じ目線で微笑んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます