ふざけんじゃないわよ、わたしはお前のトロフィーじゃない
「お前が欲しい」
問題の遺跡。
「お前俺の女になれ。お前みたいな美人は俺の横がふさわしい」
そこで異様な肉眼でも見えるオーラを纏った男(と女)と黒髪茶目の巫女装束の女が相対していた。
相対している女の名前は水鏡冬華。
美人だが気が強い事で街で有名になっちゃうくらいである。
そして友達の桜雪さゆからは半竜と言われている。それは半分竜神だからであり、地球の幕末の時代に戦火に呑まれた際に命を落としかけ、人に化けて通りかかった
そして地球の2011年に地球を見限って
そんな彼女はふんっと鼻で目の前の男を笑い飛ばし憎まれ口を叩いた。
「この距離じゃあツバ吐いても当たらないわね。近づきたくないって思ってた弊害ね」
そう言いつつ腰の刀を抜く。
「右に差してる?」
男は冬華の刀の差し方に疑問を持った。
(普通は左利きでも右と同じように差すんじゃなかったっけ?)
左手に握られている刀を見つめそう思う。
「おい、そこのちんくしゃ」
「な、なに……! 俺がちんくしゃだと!
ていうかお前はどこかに恐怖心を置いてきたらしいな。
お前は交番に行くべきだ。
『あのーすいません、わたしの迷子の恐怖心ここに届いていませんか』
ってな!」
「笑わせないでよ。それちょっと笑っちゃったじゃない」
鼻から空気を出しそういう冬華。
「ふっ、そうか。
ならばこれを見せてもっと笑わせてやろう
恐怖でしか笑えないって意味でな!
これを見たら舐めてかかると死ぬぜ、っていうのが分かる!
スティィィイータァス」
男が耳元で囁くような感じでステータスと謎の呪文を唱えると虚空にゲームでよく見る四角でまとまったなんか色々書いてあるものがでてきた。
冬華は確かに笑いを堪えている。
いるが――
「あの、ごめ……わたし、それそのそれまでは真面目に応対するつもりだったんだけど」
「おう」
「ごめ……そのステータス……もっかい言ってみて」
「おう。
スティィィイータァス」
「ぶっ、ぶぶぶっつっつっっぅ。くひっ、ふふふふふ。
言い方。スキル剣Sとかじゃなくて発音Sとか取りなさいよ……ふふふはははあははは」
またスティィィイータァスと囁くように言う男を見て、我慢できなかったようで、冬華は笑いを堪えきれず、でも笑いを堪えようと無駄な頑張りを見せていた。
「ごめん。わたし負けたわ。こんな負けかた予想してなかったわふっふふふふふふふふふっあはははははははっこんなん卑怯だわふははひぃひぅひひひひひひっ」
冬華と男は両人とも顔赤くしていたがその意味は違った。
冬華の腹抱えてうずくまりそうな姿を見ればその意味は分からないわけがなく。
男はさすがに美人だ結婚してくれ的に言い寄った相手にここまで笑われると恥ずかしいものがある(理屈じゃない)
「そ、そんなに言い方が気に入ったか。もう一度いってやろうか」
「ごめんもうやめてふははひぃひぅひひひひひひ、はぁはぁ、それ以上言わない方がいいわよもうさすがに慣れて慣れてなぶっっななれてなぶっっ」
「…………」
男はちょっと涙ぐんでるように見えた。でも涙ぐまれても冬華の面白おかしさは止まらない。この笑いだし衝動はそう簡単に腹の中で大人しくなってくれそうにない。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
ようやく笑いが収まった冬華。顔つきも真剣に戻っている。がそれは喉まで出かかっていたものを力ずくで腹の内に抑え込んで真面目な雰囲気に戻したって感じである。
ちなみに彼と彼女が出会ってから30分である。その大半が笑いである。冬華は
(自分てそんな笑い上戸じゃないよね……)
という自己確認を胸の内で何度も何度も繰り返していた。
「あの……負けたって認めてくれたなら俺の女に」
「いや。あなたの発音センスに負けを感じたのは確かだけどそれでそうは無理よ」
掌を男の方に向け冬華がきっはり言い切る。
「正直あと1回くらい聞いたら真顔で流せそうだもん。
面白いけど。慣れやすいのが玉に瑕ね~」
そこで疑問に思ったのが女。男に縋りついてる女。
この女自分が笑い転げていた時も少しも笑わなかった。
(いや、笑いのツボって十人十色どころか千人万色だけど、この女――)
水鏡冬華には男につき従ってる女が自分の意思を持ってる女に見えなかった。
それは魔法での精神操作かもしれない。それかとりあえずの生活確保かもしれない。
男をおだてておけばあのルシファーから授かったクソパワーで毎日贅沢できる金取ってきて自分を養ってくれる。
そうならべつに……。という心理は分からなくもない。わたしだって女である。
(わたしはそういうのあんまり好きじゃないけどね!
ふざけんじゃないわよ、わたしはお前のトロフィーじゃない
女はお前を彩るトロフィーじゃないっつーの)
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