9 海賊姫の冒険

なんだかすごいことになって来た。台本の題名は「海賊姫」だ。これは実際に大女優のビビアンエルンストが舞台で代位評判をとったという作品で、このほかにも海賊の仲間、漁師、人魚族、船幽霊、悪の海賊ブロッケンとその海賊団、海の怪物カイザードラーケン、などたくさんの人形が出るようだ。

台本は、王家の船を沈められ、人質に取られた姫が若き海賊マリオンと出会うところから始まった。

「ほう、武術の心得もあるのか、なんとも勇ましいお姫様だな」

「小田満里奈才、この失礼な荒くれもの!私は弓術を鷹のナイト、スパイラルホークに、剣術を電撃のナイト、スタリオンパンサーに教えを受けたのです」

「ほほう、だが、勇ましいのもそこまでだ。もうお前の船は沈み、兵はすべて海の藻屑と消えた。お前の選択肢は、今ここで死体になって海に投げ込まれるか、一生奴隷となるか、2つに1つしかない、はあっはっはっは」

「…どちらも拒否します」

「な、なにいい」

「あなたも海賊男爵と名をはせた海賊なら、この私と剣術で勝負しなさい。私が負ければそれはそこまで、海にでもどこにでも投げ捨てればよい。でも私が勝ったら…」

「ほほう、お前が勝ったらどうしろというのだ」

「この海賊団の乗組員として仲間に入れてもらいます」

「ほう、面白いやつだ。いいだろう、いい直しは効かないぜ!」

剣術が得意な日寝泊まり音は、さっそく剣の勝負となるが、その内容は互角、力で押し込まれたり、投げナイフで命を落としそうになるが、姫はその都度スピード技でやり返し、決してあきらめなかった。

根負けしたマリオンが最期負けを認め、姫はその日から海賊姫と呼ばれたのだった。だが実は、強力な艦隊を持つ隣国のネロメキアに、姫はマリオンの力で報復しようとしていたのだった。

「へえ、これがミュージカルになるの?もちろんロマンチックな場面や恋のかけひきなんかもあるみたいだけどなかなかの冒険アクションものね」

モリーはざっと読み終わっていろいろわかった。セリフを忘れても、すぐに画面にセリフや楽譜が出てくるし、極にもお手本やカラオケが入っていて、とても憶えやすく、それを使いながら本番に挑戦してもいいようだ。それにちょっとぐらい間違えても、音をはずしてもよっぽどのことがなければ叱られることも減点されることもないし、動きをわすれてぼーっとすれば、操り人形システムが動かしてくれる。でも、おもしろいのは、その人なりに歌やセリフ、動きを工夫して観客に拍手や歓声をもらえると、多くもらえるほどレベルが上がって、体つきや衣装がグレードアップしていくのだ。だからお客の反応はとても大事で、今から安い前売り券が売られ、人集めが始まっているという。

「フフフ、合唱団出身のモリーさんの力を見せてあげるわ」

モリーはやる気満々、練習にも力が入る。でも、勇壮な海賊の歌や、力が湧いてくる海風や大波の歌、海賊船の仲間の歌など、歌の場面は何とかなるとしても、未知数の剣劇やアクションシーンは特訓が必要だ。

だがそのアクションシーンでは、こころ強い応援団が現れる。なんと海賊姫の相手役マリオンの人形には、あのレイチェルの兄レオンが乗り移り、人形も青い瞳、プラチナブロンドに変り、顔つきまでレオンのように変わったのだ。

「ぼくはフェンシング部だから、アクションシーンはまかせて」

じつにたのもしい。実際に練習してみると教え方もわかりやすいし、第一にフェンシングノポーズガスベテかっこいい。しかもモリーのイリス姫とマリオンにはラスト近くで簡単なラブシーンもある。恥ずかしいけどわくわくもしてくる。

そしていよいよ本番が近づき、つかの間のブレイクタイムだ。

ところがそんなせわしい休憩時間にモリーはポケット絵本が光っているのに気が付いた。

「もう、じっくり読んでいる時間はないわ」

モリーはとりあえずさっと目を通すだけにした。


…第3章挫折

波乱万丈姫はお城に来た大興行師ローガンに誘われて1度だけ都の大劇場に出演する、はたしてミュージカルは大人気、まま母の女王はそれをいいことに姫をお城から追い出し、姫は名前を伏せて劇団員として劇場暮らしをする。

劇はなかなかの人気で、姫はさらに人気をだそうとするが、姫の美しさと人気に嫉妬した、女優のジェシカルーラーは、セリフも演技も全て決められた通りにしないといけないと演出のランデールと組んで厳しく接し、姫はそのうち少しでも言われたことと違うと厳しくしかられるようになり、そのうち心を病んでしまう。

そしてある日、姫はついに劇場を飛び出し、行方不明となる…。

「あら、お姫様はどうなってしまうのかしら」

モリーは波乱万丈姫の話も気になったが、さすがにもう本番、人形劇の舞台へと上がって行ったのだった。人形劇場の窓の外にはあの劇場街の人通りが見える。

人だかりの方を見るとおしゃれな屋台が家族連れを集めている。

「あ、おいしそう。何かと思ったら、あの店、あんじぇらのやたいじゃない」

それは通りでも片手で持って食べられる、ハンドパイだった。

甘じょっぱい味が癖になるクリームチーズパイとちょっぴり辛いチリアジのミートパイだ。

このパイもカロリーは通常の3分の1以下で、記事もふわふわもちもちで子供が食べても表面の木地がパラパラと零れ落ちることはほとんどない。

そしてついに時間だ。

本番の時間が来ると、子供を中心にたくさんのネット観客がなだれ込んでくる。

小さめの人形劇の舞台の背景は、マリオンの海賊船だ。人形に合わせて小づくりだが、精密でよくできている。

最初に舞台に上がって丁寧にお辞儀するかわいい人形たちにスポットライトが当たっただけで、小さな子供たちがわっと歓声を上げる!

「そうか、子供たちは、人形のかわいい歌声や、ヒョコヒョコふわふわした独特の人形の動きこそが、楽しいんだ。ようし」

モリーは、試しに、最初の海賊マリオンとのやり取りを、両手をあげて大げさに喜んだリ、片膝をついて大げさに悲しんだりしてみた。するとどうだろう、子供たちの反応が確かにいいのだ。そして、揺れる思いを歌いあげるミュージカルの歌を、しっとりと心を込めて歌いあげると確かにみんな集中してこちらを見つめているのが分かるのだ。うまくいかない時もあるが、それを続けて客席の反応が向上するほどに、アクセサリーが輝きだしたり、ドレスのデザインが美しく変わったりするのだ。

モリーがだんだん心得てグレードアップしていくのを見て、マリオン役のレオンも負けずにアクションシーンなどで熱演を始めた。海賊のナイフやバンダナがだんだんグレードアップして、こっちもさらにかっこよくなってきた。そして海賊男爵マリオン以外の乗組員たちともだんだん息があってくる。こっちはAIが台本通りにセリフを言ったり動かしたりしているのだが、さらにレイチェルローズウッドの操作と演出が加わり、どんどん生き生きと動き出すのだ。

頭がツルッぱげで愛嬌者の何でも屋スカルマーフィー、同じくツルッぱげで命知らずマッチョな小太りブルーとバーナード、クールな二枚目ナイフのスパークロベルト、怪力砲術師ブルックダイン、神秘の美人占い師タロットのアナスタシア、包丁遣いの名人ビッグシェフデルーカ、海賊男爵の手下たちは、個性的だが、みんな船長のマリオンを尊敬していて、いい奴ばかりだ。

そんなマリオン海賊団に最初の試練が来る。なんと敵国ネロメリアの艦隊が姫の祖国グリーンソニアの港を襲ったのだが、その混乱に紛れてマリオンのライバルガロア海賊団が湊のそばの市場や倉庫を襲い始めたのだ。

「ちくしょう、あいつらめ、こっちの軍隊はメロメリアの艦隊とやり合っていて手がまわらない。それをいいことに、漁師や商人たちを襲いやがって。この海賊男爵マリオン様が許さねえ」

そして背景は神秘的な水晶などが置いてある小部屋に移る。

皆はさっそくタロットのアナスタシアの所に集まった。今度は、背景に大きな2枚のカードが重なって見える。

「風邪を表すソードのカードと戦車のカードが出たわ…、これは風のように駆け付けて敵を撃て!の暗示、敵が油断しているうちに、先制攻撃が有効ね」

「よし、そうと決まったら、今すぐ出発だ」

マリオンの海賊船スカーレットバロンは風のように素早く敵に近づいた。

今度は敵の海賊船ブラックドレイクの甲板、酒樽とブタの丸焼きが並び、襲撃成功の第宴会だ。敵の船長ブロッケンがジョッキをかかげ大きな声で乾杯だ。

「今日は大成功、食べ物も酒も山のようにある、乾杯!」

だが大砲の玉が突然飛んできて船尾に命中。人形たちは吹っ飛ぶ。

ドッカーン!

「うわああ、大砲の攻撃だ」

「敵の襲撃だ」

「うわ、大変だ」

するとさらにそのすぐあと、人形劇の動く舞台背景、精巧な船体や絹で作られた帆や海賊気をはためかせ、スカーレットバロン号が、敵の船ブラックドレイクにぶつかって来た。

ズズズーン!

「うおおおおおおおお!」

大きく揺れる船体、転がる酒樽、驚いて走り出すブタの丸焼き!

「飛び移れー!」

すると舞台の隅に現れたスカーレットバロンから、渡り板がパタンと降りて、たくさんの海賊人形たちが飛び移って来て、あちこちで戦いが始まる。

スカルマーフィーとブルーとバーナードのツルッぱげコンビは、ダガーを振り回しながら敵が盗んだご馳走や宝物をちゃっかり、スカーレットバロンに運ぶ、ナイフ遣いのスパークロベルトは体中に仕込んだ投げナイフで柱の影から敵を次々に撃破。

ビッグシェフデルーカはフライパン1つで敵のナイフも剣もすべて跳ね返し、最期も中華鍋でぶん殴ってノックアウトだ。

怪力のブルックダインは、敵の両足をつかんで持ち上げ、グルングルンとジャイアントスイングでまわりの敵にぶつけ、5人、6人と、敵をどんどんぶっとばす。

そしてマリオンとイリス姫はコンビで突撃、華麗な剣さばきでどんどん敵を降参させていく。子供たちは大喜び、マリオン海賊団は、漁師や商人たちに盗まれた品物を届けて感謝され、敵のブラックドレイク号は、散々な目に遭って逃げていったのだった。

そして物語はいよいよ冒険アドベンチャーへと突入する。

ネロメリアの悪大臣ザニキエルが妖術師ムートラを使って海の神殿のオリハルコンの宝剣を盗み出したため海の神々が激怒、このままでは満月が7回巡る夜に嵐や津波とともに海の大怪物3つ首の龍魚が現れ、ネロメキアだけでなく姫の祖国グリーンソニアまで海沿いの街が壊滅的な被害を受けるというのだ。

それを阻止するため、マリオン海賊団は、7つの宝玉を集め、海の神々の怒りを沈める冒険の旅に出る。さてここからが背景がくるくる変わるCGの特性を生かし、テンポアップしてわずか30分ちょっとで7つの宝石のある7つの海を探検だ。

風光明媚な多島海では、人魚姫のオーロラ真珠を手に入れるため、オコゼやアンコウ、たこやウツボに似た半魚人軍団を撃破。

難破船の墓場では、不気味な歌声の船幽霊たちを蹴散らし、秘密の洞窟のローマ金貨と地赤サンゴのネックレスをゲット。イリス姫の美しい歌声が幽霊の歌を跳ね返した。

南の島では滝を遡り密林を探検、ワニや大蛇と戦いながらジャングルピラミッドのエメラルドをゲット。爬虫類嫌いのマリオンを助け、ツルッぱげコンビが大活躍。

海峡の大渦を乗り切りやっとたどり着いたネプチューン神殿では地下迷宮で牛の頭のミノタウルスと追いかけっこ。タロットのマリアの予言のヒントでやっと迷宮を抜け出し、3つ首のゲートの番犬ケルベロスの弱点をナイフのスパークロベルトがきっちり狙って倒し、ブルーサファイアを手に入れた。

火山が噴煙を上げる火山島の神殿では、ジャガーの瞳に埋め込まれた巨大翡翠を捜して毒ガスの谷や溶岩の皮を渡り、ついにジャガーの石像を発見、だが石像が動き出し危機一髪。怪力のブルックダインがジャガーの石像を投げた押し、ビッグシェフデルーカがフライパンでなぐって目にはめ込まれた翡翠をはずした。

大洋神殿では、身長20mの巨大神タロスの石像が襲ってくる。人形劇では石像の巨大な足が舞台を動き回る。怪力ブルックが岩を投げて足止めし、マリオンとアイリス姫がアキレス腱を切ってやっとやっつける。倒れた時、観客には初めてタロスの巨大な前進が見える。ダイアモンドの宝剣をゲット。

火山の麓にある炎の神殿の女神は、怒らすと怒りの形相になり、牙が生え、手が6本、剣も6本の怒りの女神に変身して襲い掛かってくる。実際の操り人形ではとてもできない6本腕が流れるように剣を振り下ろす、怒りの滝などの技を使う。みんなで力をあわせて立ち向かい、マリオンとイリス姫が剣攻撃で攻めているうちにブルックダインが柱を投げて足止めし、ナイフのロベルトが6本の剣をすべての手首を狙って地面に落とし、ツルッぱげコンビがロープで縛りあげてやっと動きを止めた。苦労して手に入れたのは、真紅の輝きのルビーだった。

これらの冒険エピソードのクライマックス部分だけを数分にまとめテンポよくつないでいく、それでまとまるのがさすが人形劇だ。ついに7つの宝石を集めたのだが、ぎりぎり間に合わず、海の大怪物カイザードラーケンは姿を現す。同時に嵐が訪れ、横殴りにたたきつけうるような雨の中、津波が置き始める。

カイザードラーケンは3つ首の龍の上半身とぎざぎざの大きなヒレ、タコのような吸盤の長い腕、巨大魚の下半身を持ち、体の全面すべてが化けクジラの大きな口の巨大魚で、海賊船ぐらいは軽く呑み込んでしまう化け物だ。

みんな緊張して、タロットのアナスタシアの小部屋に集まる。

「出たカードは…死神と塔のカードです」

「…それは不吉な…で、私たちはどうしたらよいのですか…」

マリオンが尋ねると、タロットのアナスタシアは、こそこそと意外な作戦を伝えた。

それが信じられない作戦だったので、みんな言葉を失った。しかしイリス姫は、

「私は仲間のアナスタシアアの言葉を信じる。いつも彼女の言葉に助けられたのだから」

姫の信じるという言葉でみんなの覚悟も決まった。みんなは7つの宝石を1人1つずつ持つと、嵐の中、スカーレットバロン号に乗り込んだ。

「スカーレットバロン号、出港!」

そして海賊男爵マリオンの合図1つで、船は海の大怪物カイザードラーケンに向かって出港していったのだ。

悪魔のような風雨を物ともせず、暴れ回る龍のような海原を突っ切って怪物に向かっていく。人形劇では舞台の半分を占めるほど大きな怪物に、おもちゃのような海賊船が向かって進んでいく。鳴り響く雷、押し寄せる大波、木の葉のように揺られながらスカーレットバロン号は何と真正面から怪物に体当たりを決行したのだ。でもこれでは怪物にもダメージはあるだろうが、自分の船もバラバラだ。いったいどうなる?!

「あああ、船が怪物に飲まれる」

悲鳴にも似た観客の子どもたちの声。怪物は大きな口を開けると、海賊船をその場で飲み込み始めたではないか。子供たちの悲鳴がこだまする。

だが船が完全に飲み込まれた瞬間、海賊姫の鋭い声が響いた。

「…今よ、みんな自分の宝石を握って、私の歌に合わせて歌うのよ」

怪物のお腹の仲がうっすらと透き通って見える。

全員が握った宝石が明るく輝きだし、姫の歌「母なる大海原よ」が流れる。最初は姫だけだが、1人増えまた1人増え、最期は全員で大合唱となる。

すると7つの宝石の輝きが空中に上がり一つになり、そして夏空の花火のように輝きが空全体に広がって行った。

「ああ、怪物が消えていくぞ!」

すると怪物は光の粒子となって消えてゆき、穏やかな海原が広がって行った。

…神々の怒りは消え去り、嵐は過ぎ去った…。

スカーレットバロン号の甲板にマリオンとアイリス姫が出てくる。

「…ありがとう、君の仲間を信じるという力強い言葉があったからぼくらは救われた」

「いいえ、この船の仲間はいつでも船長に命をささげているからできたのよ」

姫がマリオンにそっと近づき、マリオンもそっと肩を抱き寄せる…。

勇壮な海賊の歌声とともに仲間がみんな出てきて全員で手をつないでお辞儀…幕。

1回限りの魔法の新アイテムのモニタリングは大成功。

メガネ娘のレイチェルローズウッドは、兄レオンとともにモリーにお礼を言いに来た。

どんどんグレードアップを続けていたモリーは最後の大合唱のころには、見違えるようなドレスやキラキラ光る宝石に包まれ、本人もうっとりするようなお姫様人形になっていた。レイチェルはお姫様姿の人形のモリーの写真を撮りまくり、最期はモリーの希望でレオンの人形と並んだカップル写真も撮りまくり、後でデータをモリーの携帯に送るという。

「モリーさんのイリス姫は、積極的で明るくてアクションも凄かったし、とても生き生きしてたね、魅力的だったよ」

レオンさんにそんなことを言われると、なんかドキドキしちゃう。

まあ今日はアンソニーゲオルギウスさんのしっぽもつかめたし、ライオンハート教授とも知り合いになれたし、何と言ってもプラチナテーブルがわかっただけでもけっこうな収穫だわ。まあいろいろあったけど、家に帰ってぱっと報告書を書き上げてさっと終わりにしちゃおっと。

モリーは家に帰る前に、気になっていた波乱万丈姫の物語の、さっきの続きを読んでみた。


…第4章、新しい船出

波乱万丈姫は、嫌みな仲間の女優や、一緒になっていじめを繰り返していた演出家ときっぱりとお別れし、劇場を出ていった。

すると心が軽くなり、すべてが変わった自分がいた。

「自由だわ、自分で考えた通りにしゃべれて、考えた通りに動ける。今までの私は、がんじがらめに糸につながれた操り人形、そこに、本当の自分はかけらもなかった。劇場のメンバーに、いいえ、お城から私を追放した女王に操られていた」

すべて操られたままの人形だった。

「あんなばかげたところにへばりついていた自分が情けない」

そして波乱万丈姫は、城にも帰らず、劇でマリオンの役を務めていた役者と新しい劇団を旗揚げし、貧乏のどん底から、何もないところから船出したのだった。

「でも、どん底の貧乏生活は、これからどうなるのかしら」

ポケット絵本ももうすぐ終わりを迎えようとしていた。

「ランちゃんお帰り、…また何か届いてるわよ」

家に帰るとまたママが何かが届いたと言って小さな品物を渡してくれた。

「あれ…これってなんだっけ…」

さっそく部屋に行って中を開けてみる。

「…今日、スターシードさんに送り先を教えてもらったので、さっそく送ります。今日は本当に有難う。とても楽しく、有意義だったです」

まさかのレオンバーゼルからだった。小さな包みを開けてみると、それはインカの黄金のペンダントだった。

本物だ。

「うわあああ、手に取ってみると、小さいけれどずっしりしていて、これ、本物の黄金?うおお、こんなすごいものもらっちゃってどうしよ」

でもとってもとっても嬉しかった。モリーは部屋の鏡の前に立ってつけたり、はずしたりしてにこにこしていた。

「ようし、明日もがんばるぞ!」

やる気満々のモリー、しかしその陰で悪の組織が一歩一歩知らぬ魔に動き出していたのだった。

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