第66話 試験開始!だが、パーティメンバー同士で争い勃発!

「まずは筆記試験を始める!受験生は私について来るように!」


城の中庭に集められた俺たちは、試験会場へと進む。


先頭を行くのは、試験官のラインハルホ兵士長だ。

身長が二メートルもあり、顎髭が長い。

いかちい系の顔で、まさに脳筋って感じだ。

こいつをプレイヤーとして選ぶと、最初はそのパワーから無双できるが、成長力がぜんぜんなくて、病気がちだということが判明すると、途端に中盤過ぎた辺りからハードモードになっちゃうぞ。


他のプレイヤーを選び、学校イベントが発生すると、ラインハルホは試験官として存在感を見せつけて来る。


「うわぁ、あの試験官のおじさん、偉そうですね」


アオイが俺の右腕にしがみつきながら、ひそひそ声で言う。

緊張しているのか少し震えている。


「本当ね。あんな脳筋不細工じゃなくて、もっとイケメンの男を試験官にしてほしいわぁ」


エミリアが俺の左腕に自らの巨乳を押し付けながら言う。


「カイト、両手に花、ならぬ、両手にクズだな」


俺の背後からフィーナが低い声が聞こえてくる。


フィーナ、こえぇよ。


こいつ、いつでも俺の両脇の女どもを殺す気でいやがる。


「フィーナさん、なんですって?私がクズですって?」


ピクリとこめかみに青筋を立てるアオイ。


「アオイがクズなのはわかるわ。だけど、私に対してその言葉、許せないわ」


俺の左腕に更に巨乳を押し当て、闇のオーラを増幅させるエミリア。


「ふん。やるか?どうせ私には試験も学校も関係ない。この際、邪魔なお前らを殺してやろうか?」


フィーナ、売り言葉に買い言葉は勘弁な。


ほんと、お前らさ、


やめろ。


お前ら。


試験前に失格になるのだけはやめろ。


失格になったり、試験に落ちたら、お前らと、ここでお別れになってしまう。


つまりお前らとパーティ組めなくなる。


ゲームでもパーティだった奴が、試験に落ちたら、そこでお別れなんだからな。


「私もあなたのそのお澄ましした態度、嫌いだったの」


エミリアの黒いオーラが誰の目にも見える程立ち上る。

それはやがて悪魔が笑ったような形になって……


「エミリア、ここは私が補助します」


そっと、エミリアにバフをかけるアオイ。


やばい。


黒いオーラがサタンの形になってる!


てか、お前ら、共通の敵が現れると共闘すんのかよ。


ざわ、ざわ……


他の受験生も、異変を感じて騒ぎ始めた。


「来な」


フィーナの合図。


止めなきゃ!


「やめーい!貴様ら!神聖な試験を台無しにする気か!」


辺り一帯に響く美しくも凛々しい声。


俺たちの目の前には、顔を鉄仮面で覆い、そして甲冑に身を包み、白馬に跨ったパラディンがいた。


「私の名はエレキュシガル!本試験の監督を務めている!私の許可なく、受験生同士で戦うことは禁ずる!」

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