第8話 アンデット系の異常氾濫

「ロゼット▪フォン▪ロデス子爵様、初めまして子爵邸を預かる執事のゼバスで御座います!宜しくお願い致します」

「ご覧の通りの未熟者だ、ゼバス、領地運営の手助け期待して居る」

「はっ!」

 ゼバスはうやうやしく馬車の扉を開け、俺が入ると扉を閉じ親父に深く一礼し、御者台に身軽に座った。

「発車致します」

 俺に声掛して馬車を走らせた。


 俺が新生児の時に一度だけ通った王都貴族専門の門を抜けた。

 5分ほど経ったころ「ここから子爵様の領地で御座います」御者台のゼバスが説明してくれた。

 結構大きな町だが、子爵領都ではないようだ。

『門前町』と説明された俺の統治町を通過、更に村を二つ通過した先に仰々しい防壁に囲まれた都市が見えて来た。


「子爵様、ダンジョン氾濫が起こったようです」

「状況が分からん、御者席に移るぞ」

 前部の扉を開け、御者席に移動した。

「子爵様危険です!」

 緩慢な動きの白骨や腐った死体が防壁に取り付いている。

「ゼバス、こんな事よくある事か?」

「いえ、数年無かったことです、氾濫の規模的に10年前ヘイボ子爵様が統治を放棄逃げ出した時の状態に見えます」

「ヘイボ子爵?聞いた事があるような」

 ロゼットは忘れたようだが『適正魔法検索の儀』でリミ姉の前呼ばれた、子ブタ鼻垂れ小僧がヘイボ子爵の三男だった。


 門から入らないように、やる気の無い防戦をしている常駐騎士達が見える。

 門に入れない状態で、立ち往生している。

「おい!常駐騎士の団長は誰か!」

 貴族馬車だが御者席にのる子供が偉そうにと、いった感じ憮然とした顔で髭面親父が言った。

「団長は自分シラノ▪ド▪ベンゼン騎士爵で有ります」

「私は子爵領を下賜された御殿医ロゼット▪フォン▪ロデス子爵だ!加勢する!!」

「子爵様でありましたか…加勢?危険で有ります!」


 制止するシラノ団長を無視して、御者席から飛び降り親父から授かった聖剣を抜剣し、ユッタリ向かって来る白骨の頭部から股まで両断した。

 白骨はダンジョン魔物らしく消滅し、アイテムらしい物が残った。

 コーヒー紅茶に入れる、スティックタイプのグラニュー糖が一本と、せこいアイテムだ。

『聖魔法が開放されました』

 頭に響く謎のメッセージ(聖魔法が開放?)

「聖魔法が使えるなら!」

 俺は生活魔法の照明に聖魔力を目一杯込めて、魔物の群れを照らした。


 聖波動の光が辺りを包み、光が消えた後にはグラニュー糖スティックと、指の先ほどの皮膜に包まれた蜂蜜が無数転がっていた。

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