第7話:傀魔。(かいま)

「ぎゃ〜誰か・・・だれか〜、ぎゃ〜」


「こっちに来ないで・・・助けて〜たふへて〜〜〜〜ひ〜〜〜〜」


誰でも、傀魔のその奇怪でグロテスクな姿を見たら絶叫せずにはいられないだろう。

そこに現れた傀魔は肌の色は乾いた血のように赤黒く、醜い顔には目が六つも

あった。


口が耳まで裂けそこからサメの歯のように鋭い牙が何本も前にせりだしていた。

手には獣のような鉤爪が生え、太い腕を一振りしただけで人の首など、簡単に

ちぎれ飛んだ。

武器は持たず、丸太のような太い腕でどんなものでもなぎ倒した。


それは傀魔と呼ばれる化け物の一体であって一定に限らずその姿はさまざまだった。


「うるさい・・・ぎゃ〜ぎゃ〜騒ぐんじゃない・・・女め」

「おとなしく食われろ」


そう言うと傀魔は女を襲おうとした。

まさに女は危機一髪。


その瞬間だった。

神羅と阿加流姫がとつぜん空間に現れ三日月丸が一閃ひらめいた。

足手まといになるといけないと神羅は阿加流姫からすぐさま離れた。


三日月丸に片腕を切り落とされた傀魔は、雄叫びをあげて阿加流姫を

にらんだ。


切られた箇所から、どす黒いの血が吹き出した。


神羅がはじめて遭遇した傀魔は人より少し大きいやつだった。


「ぐおっ・・・」

「おまえ誰だ・・・よくも俺の腕を・・・なんだこの匂いは・・・ぐえっ」


阿加流姫の匂い袋は傀魔が嫌う匂いを放っていた。


傀魔の大半は凶暴なだけで一部を除いて頭はあまり良くない・・・。

この傀魔は見境もなく、やみくもに阿加流姫に突進してきた。


傀魔は残った腕をぶんまわしたが、抵抗虚しく阿加流姫に交わされた。

阿加流姫は素早く傀魔を避けると、勢い余った傀魔めがけて三日月丸を

そいつの首めがけて横になぎ払った。

息つく暇もなく三日月丸の閃光が円を描くと傀魔の首がポーンと飛んだ。


まるで大根でも切るように、それは見事に・・・。


阿加流姫が地面に降りると同時に傀魔の首が「ぼとっ」と落ちた。

勝負は一瞬で決まった。


首が飛んだことが分からないのか傀魔の目がキョロキョロ動いていた。


「消えてしまいなさい!!」


しばらくあがいていた傀魔は蒸発するように消えていった。


普通の薙刀や刀で切られても傀魔が消えたりはしないが、神の魂が

淀っている三日月丸に切られると傀魔はチリのように蒸発した。


あっと言う間の出来事だった。

相手に対してもたついていては不利になるだけ素早い動きが勝敗を決する。


その間に神羅は襲われていた女性を助けようとしたが座り込んでいた女は

恐怖で腰が抜けて動けなかった。


「あなた、大丈夫ですか?」


「は、はい・・・だいじょうぶです・・・」


我に返っても女はまだ震えていた。


「神羅大丈夫ですか?」

「ああ、俺は大丈夫だ・・・新月丸を使うこともなく終わったな」


「とりあえず出てきたのが一体でよかったです」


神羅は、はじめて傀魔を真近で見た。


「今のが傀魔か?」


「そうです」


「アカルの言ったとおり、きみの悪い化け物だな・・・」


「傀魔には、さまざまな種類がいるんです」

「小さいのもいれば、大きいのもいます・・・痩せたのも、太ったのも

頭がいいのも・・・今日のやつみたいに勢いだけの傀魔も・・・」


「言ってなかったですけど、カイライの弱点は頭です・・・」

「足や腕は動きを止めるにはいいのですが、すぐに再生するので切っても

時間稼ぎにしかなりません」


「頭が胴体から離れればカイライは死にます」

「または脳を突き刺しても、切っても死にます」

「カイライは倒されると元いた異界に転送されていくようですね」

「何も証拠が残らないように、誰かがそうしてるのかもしれません」


「アカルは毎回、あんなのと戦ってたの?」


つづく。


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