第2話:召喚士。

「神羅・・・話がある・・・裏の蔵へ・・・」


そう言ったのは神羅の曾祖父だった。

曾祖父も神霊と一緒に召喚士の一人として傀魔カイマと戦った一人だ。

曾祖父の名前は「嘉幻斎」《かげんさい》」と言う。


しかし神羅の祖父、父親は召喚士の血統は継いだが、結局傀魔が出現しなかったため力を発揮することなく終わった。


曾祖父が神羅を呼んだのは、神羅の代になって傀魔がまた蠢き始めた

からだ。


最近の地球の天変地異による異常現象が傀魔を再び呼び覚ます要因に

なっているのかも知れなかった。


その他にも傀魔が人間界にやって来る要因があるのかもしれないが

今のところはっきりしたことは解明されていない。


召喚士には一般の人間には分からない傀魔の匂いを、いち早く嗅ぎ取る

能力が備わっている。


「神羅・・・最近までは、おまえが召喚士として働くときはないと、わしは

思っていた」

「このまま平和が続けば、おまえも祖父や父親のようにいらざる苦労を強いる

必要はないと思っていたが・・・、どうもそうはいかなくなったようだ」


「俺にもなんとなく分かります・・・何か異様なものを感じてたまに鳥肌が

たったり・・・嫌な夢を見たりします」


「そうか、それは生まれ持っての召喚士の感覚」

「傀魔と召喚士とのことは、以前におまえに話したことがあったな」

「覚えているか?・・・」


「覚えてるよ」


神羅は幼いときに過去に起きた傀魔と召喚士の戦いの話を曽祖父から

聞かされて育った。

だから今更、ことの詳細を知る必要もなかったが 何を持ってしてどう言う

方法で戦うかについては教えられていなかった。


「そこに座れ」


神羅が室内の中央に座ると嘉幻斎は蔵の奥に消えていった。

薄暗い蔵の中でロウソクの炎だけが揺らめいていた。


しばらくして夢幻斎は長い箱と小さめの箱をふたつ重そうに抱えて現れた。

嘉幻斎は二つの箱を自分の横に置くと長い方の箱の紐を解いてフタを開けた。


「この長い箱のほうには刀が入っておる」


そう言って箱の中から、一振りの刀を取り出した。

柄巻の色が紫で鞘には金塗りに複雑な模様が刻まれていた。


「刀の名前は「新月丸・静」(しんげつまる・しずか)」

「・・・・これからお前が持つことになる刀だ」


「刀・・・それで傀魔と戦うのか・・・」


「戦うのはお前ではない・・・この刀は、お前自身を守る護身用じゃ」


「召喚士が倒されたのでは、意味がないからのう」

「傀魔を倒すには並外れた持久力と運動神経、跳躍力が必要となる」

「人間では傀魔を傷つけることが出来ても、運動能力において神霊より劣る、

ゆえに、やつらを倒すことは難しい」

「傀魔は首を切り落とさねば倒せんからの」


「人間は、どの力においても神霊には及ばんのじゃ・・・」


「神霊は戦うことに集中するゆえ召喚士までは守れん」

「だから自分の身は自分が守る・・・お前に子供の頃から剣道を習わせて来たのは

そのためじゃ・・・」


「そうだったのか・・・知らなかった」


「そして、こちらの小さい箱に入っているのが、勾玉じゃ」

「この赤い勾玉の名は瑪瑙の勾玉(るりのまがたま)と言う」

「太陽神、天照大神の末裔、阿加流姫「あかるひめ」を召喚するための神器じゃ」


「たいようしん?・・・あかる・・・ひめ・・・?」


「って、なんだ?」


つづく。

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