最終話 私は、私達は再会を・・・・

私達がテーブルに戻ると、少年と悠矢はとても楽しそうに話していた。

「あ〜、なんでそんなに楽しそうなの?私も鈴さんの彼氏さんと仲良くなりたい〜!」

「それを言うなら由希子もだよ?一人鈴さんと仲良くお話してきたんでしょ?」

「うん。でも、元から仲がいいからよ!」

ああ、少しこうなることを予感してはいたけど・・・・。

「悠矢も、少年と仲良くお話出来たなら良かったよ〜」

「ああ。聡くんとはとても気が合う」

「へ、へぇ・・・・」

私としてはあんまり嬉しくないような・・・・。


「鈴さん」

「何?」

お店を出る時、少年が私に声をかけて来た。

「僕、この奇跡を大切にします。だから、鈴さんも大事にしてください。僕の友達、幸せにしてあげてください」

「ちょっ・・・・」

「ええ、わかったわ。ふたりとも、とっても仲良くなれたのね〜」

「あ、いや、これは・・・・」

悠矢の赤くなって慌てている姿は、昔を思い出させてくれた。


「悠矢」

「なんだ?」

「あの子達、いい子でしょ?」

「そうだな」

「・・・・奇跡」

「奇跡って、こんなにあるもんなんだな」

知らなかった。私にはこんな日が来るなんて思ってなかったから。

「・・・・大切にしないとね」

「そうだな」

悠矢のその声と同時に、私の唇に温かいものが触れた。

人生初のキスだった。

世界でただ、一人の大好きな人からのキス。


「・・・・ご、ごめん」

「・・・・何謝ってんの?」

「き、許可無くき、キスしたから」

あ〜、いつの間にか、悠矢にあの頃の格好良さなんて無くなっている。

けど・・・・

私はうつむいている悠矢の頬にキスをした。

「・・・・っ!」

「こんな事に、許可なんて必要?」

「たしかに、いらないな」

悠矢はそう言うと私にキスをした。

私は、バスケットボールを楽しそうにしている悠矢も、彼氏としての悠矢も大好きだ。


再会は、世の中にありふれたものなのかもしれないけれど。それでも、私は、私達は、その再会を奇跡と呼びたい。

《完》

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逢はむとぞ思ふ 一ノ瀬桔梗 @ItinoseKikyou

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