第6話 離したくないけど、嫌われたくない By 三和
「どうして、泣いていた、鈴?」
俺は彼女に泣いていた理由を訪ねた。
久しぶりに、彼女の名前を呼んだ。
俺の問いかけに、鈴は悲しかったからとこたえた。
何が悲しいのかと更に聞くと、
俺が鈴を忘れていると思ったと、鈴はうつむきながら教えてくれた。
俺は、鈴を抱きしめていた。
自分でも、無意識だった。
いつもなら、今までなら、きっと、
『何を言ってんだよ』って、笑っていただろう。
なのに、今回は笑えなかった。
笑うなんてどうやっても出来ない、胸が痛くて痛くて、仕方がなかった。
「忘れる訳ないだろ、バカ」
鈴を俺が忘れられる訳がない。
その事を、鈴は知らない。
知らないどころか、忘れられていると思っている。
その事が、辛かった。
「ちょ、ちょっと、悠矢・・・・」
「何?」
「離して。これは、良くない」
鈴が、俺に抱きしめられていると気がついたのか、急に赤くなって、そう言った。
「嫌って言ったら?」
「え?」
俺だって、恥ずかしくないわけじゃない。
けど、また会えたんだ。
俺はもう、鈴を離したくない。
けど、嫌われる方がずっと怖い。
「・・・・悪かった。急にこんなことして」
鈴が俺の言葉に止まってしまったので、俺はもう少し抱きしめていたかったが、鈴を離した。
「わ、私、離れたくない・・・・」
その小さな声を、俺は聞いた。
「え?」
「・・・・勘違い、じゃ、ない、よね?」
「は?」
「悠矢は、怖い男の人じゃないよね?」
怖い男の人・・・・
その言葉に、鈴は、ついさっきまで抱きしめていたことが怖がっていたのではないかと不安になった俺だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます