一夜明けて
「ふわぁ……」
王都の歓楽街の中でも最高店のベッドで最高の夜を過ごした僕は普段通りの時刻ピッタリに目が覚めて意識が覚醒していく。
「……すぅ、すぅ、すぅ」
裸のまま起き上がった僕の隣にはこれまた全裸で眠っている嬢の姿がある。
昨晩は互いに盛り上がって夜の営みを楽しみ、そのまま疲れて二人で裸のままで寝てしまったのだ。
「まだ起きそうにないな」
随分とぐっすり眠っている嬢をわざわざ起こす必要などないだろう。
僕はベッドで気持ちよさそうに眠っている彼女のさらさらの髪を少しだけ撫でた後、ベッドから這い出る。
「風呂に入るか」
僕と嬢のいる個室の中にはしっかりとお風呂も完備されている。
「ふんふんふーん」
裸の僕は軽い足取りで風呂場へと赴き、自分の体にかかっている様々な汁を洗いながし、綺麗さっぱりする。
「まだ起きないか」
風呂で体を洗い、魔法で体を乾かした後にしっかりと服を着こなした僕は未だベッドで眠りこけている嬢の方へと視線を送る。
「……まぁ、良いか」
わざわざ気持ちよさそうに寝ている彼女を起こすまでもないだろう。
テーブルの上に金貨を三枚、ごく一般的な四人家族が一か月生きていくのに必要な金と同額を置いた僕はそのままこの場を後にしたのだった。
■■■■■
僕が寝室の方から表の方にある大会場へとやってくると共に視界に入ってくるのは半裸で酔いつぶれて気持ちよさそうに眠っている祖父の姿であった。
「何しているんだ、このジジイ」
「あっ……お連れ様。申し訳ありません。今、こちらの方はお眠りになられておりまして」
祖父の周りで淡々と片づけをしていた嬢の一人が僕へと話しかけてくる。
「……それは、見ればわかるよ。それで?君たちってば、これに何か迷惑なことされなかった?」
「いえ、我々の仕事は人々の欲望を受け止めることですから。迷惑なんてとてもとても」
「はぁー」
僕はため息を吐きながら眠っている祖父の懐から財布を抜き取り、中を確認する。
「ほい、チップだ。これの相手をした嬢全員で分けてくれ」
そして、中に金が入っていることを確認した僕は一人の嬢に財布ごと渡してやる。
「……えっ!?えっ!?」
「ちゃんとみんなで分けてね?まぁ、一人でそれを全部貰うのは流石に剛の者な気がするけど」
「えっ、いや!その……こ、こんな大金!」
「僕らとて貴族だ。ケチケチするつもりはないよ。あぁ、忘れていた会計したか?」
「あっ、それは……昨日のうちに、そちらの方から」
「あん?そこらへんはしているのか……なるほど、理解した。それじゃあ、自分たちはこれで失礼するよ……また来るかもしれないか、その時はよろしく頼む」
「あっ、はい!こちらこそまたのご来店をお待ちしております!」
「あぁ、そういってくれると助けるよ……っと。ほら!起きろジジイ!!!いつまで転がっていやがるぅ!」
「ぬぉ!?」
僕は眠りこけている祖父を叩き起こしながらこの場を後にするのだった。
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