十七噺 ななとしち

 いちにさんしごろくななはち。

 こう幼稚園の頃に習ったと思う。こういう事を覚えているのには理由があって、この後小学校での衝撃があったからだ。


 私は「なな」で育った。訓読み文化を公立幼稚園ながら採用していたのだ。そう小学校の学習指導要領の罠に引っかかる園児を増やしてしまうことを知らずに。


 それは小学三年生の頃に起こった。

 掛け算九九ににんがし。と、いうやつだ。


 事件は「なな」の段で起こった。突然先生が「しちの段」と言い出したのだ。


 これまで七はななだった私は驚いた。そして私は滑舌が悪い。

 

 この「しち」や「ひち」が上手く言えない結果、七の段を言う時だけ現在に至るまで、しゃくれて言うくせがついてしまった。


 いいじゃんよ。ななでも予測変換出るじゃん。


 いつの間にか周りも「高校の同級生が東京に出て、久しぶりに帰ってきたと思ったら標準語で話し出した」感になり出した。


 悲しかった。

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