第57話 事後処理
「終わりました」
……研究所の外で待機していたモロス君と、その他顔を知らない数人の黒づくめ人間……ヒュームと、ケットシー……に、僕は仕事が終わったことを報告した。
「案の定だったか」
「ええ」
モロス君の言葉に、僕は頷く。
流石に粛清クラスの裏切りをしているのがほぼ確定でも、勝手にはできないしね。
根回しはしてから挑んだよ。
「まあ、着替えは用意して来たから、とっとと着替えな」
僕はそう言われ、返り血で汚れた黒服を脱ぐ。
安物だ。
……こういう事態が予想できたから、黒っぽい色で安いズボンとシャツを着て来たんだよね。
動きやすくて、かつ捨てても良いやつ。
モロス君が持って来てくれたのはワンピース。
色は黒。
「ちょっと待てや」
……すると。
モロス君に咎められる。
見ると、モロス君と男性陣があからさまにテレてる表情で目を逸らしていた。
……あ、ゴメン。
僕は心は男だから、性的興味がない成人男性相手だと、男同士の感覚で接してしまうんよな。
良くないの分かってるけど。
僕は着替えのワンピースを持ち、下着姿で研究所の建物の影に駆け込んだ。
あの後。
この街的にはレクイエは失踪したということになった。
それに対して疑問を差し挟む人間はいない。
ここはそういう街だ。
で、後任の所長はウチの研究員の中で誰が選ばれるんだろうかと思っていたら。
「まさかウチになるとはなぁ」
……ヒュウマさんが抜擢された。
ここは力さえあれば大概のことが許される、ルール無視の街だけあるのか。
女でも普通に出世できるのよな。優秀だったら。
そこだけはまあ、感謝。
ヒュウマさんなら納得だし。
で、新所長の下でのボクの最初の仕事は
レクイエの血で汚れた所長室の、報告書の書き直し。
これだった。
「えらい派手にやられたんやな」
ヒュウマさんも手伝ってはくれるんだけど、内容の確認をするばかりで、それ以上は手伝ってはくれない。
多分、秘密保持の関係だろうと思うけど。
……これ、大変だけどさぁ……
僕的には願ったり叶ったりだったりもするんだよね。
何故って……
「所長になったせいで、この研究所内部の状況は把握できたわ」
僕の書き上げた複写の報告書を見て、ヒュウマさんは満足げ。
僕も同じ気持ちだよ。
血で汚れた報告書を書き直すことで。
この研究所内の内情が分かって僕としては助かる。
棚ボタだよねぇ。
まぁ、大変ではあるんだけど。重ねて言うけどさ。
ヒュウマさんと一緒に勧めていた研究テーマは、ほぼ僕1人でやらなきゃならなくなったし。
……新しいパートナーが欲しいわな。
なかなか難しいだろうけど。
皆、テーマがあるからね。
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