第28話 黒狼

「おいおい、集団で子供にたかって何やってんだ?」

「ああ?」


 俺の事を見て少し驚いたような顔してコソコソと話し出し、知ってるかだのチームに居ないだの何か喋っていたがコソコソ話を辞めて一人が俺の方へやって来て話し始めた。


「なあ兄ちゃん黒狼って知ってっか?」

「いや、知らねぇなぁ」

「そーかそーか知らねぇなら仕方ねぇよなぁ少し説明してやるよ」


 ここ墨田区にはカラーチーム黒狼と言うチームがあるらしい、その黒狼のチームの特徴は何をしてでも勝つ事を重要視しているチームであり全員が全身黒色の服を着ているのがメンバーの証らしい。

 それを知っていても知らなくても全身黒色の服を着て黒狼のメンバーの前に現れた場合は狩られても文句は言えないそうだ。


「なんだそれ、傍迷惑なルールだな」

「そうだよなぁだが決まりだから仕方がねぇよなぁ」

「んでその黒狼さんはなんで子供相手にイキってたわけ?」


 黒狼の男は簡単な話だと言ってマジックトイズバトラーを取り出し話し出した、マジックトイズバトラーは大会が近々あるらしくその大会の優勝賞金が100万円と子供や高校生には大金だ、それと出るためには勝率がまず7割を超えていないと予選も参加できないそうだ。


「だからそのガキ達にお願いしてたんだよガチマッチやってくれってな!その玩具が壊れるまでずううっとなぁ」

「「ぎゃはははははは」」

「あー……かーちゃんが言ってたのはコレかぁ」


 たしかかーちゃんが言ってたのは、都会に行けば色々な人間に会うだろう、そんな時は私の信条を思い出せ。


 一条、口だけの奴は殴って黙らせろ。

 二条、悪意を持って他人に接する奴は口で言っても分からねぇから殴って黙らせろ。

 三条、人数有利でイキってる奴が居れば殴って黙らせろ。

 四条、女に手を出す奴は殴って分からせろ。

 五条、子供をイジメるような屑は半殺し。

 六条、権力を使ってくるような奴が居れば私を呼べ、私がぶっ飛ばす。

 七条、気にくわねぇ事があっても筋が通ってねぇなら殴るな。

 八条、守りてぇもんがあんなら気にせず殴れ。

 全八条、武器を持たずに遂行しろ。


 武器を持っての戦闘は魔物相手か命を刈り取る覚悟があった場合のみ許可されているんだっけか。

 

「二条、三条、五条が合致してんな……」

「何ぶつぶつ言ってんだぁ?ああ?」


 俺に話しかけている黒服の男のこめかみを掴み店外へと連れだすために歩き出す、何すんだおめぇなど怒声が飛び交うが気にせずに店外へと連れだし人気の居ない駐車場に着くとそいつを投げ飛ばした。


「いってぇ……てめぇ黒狼にたてつくのがどういう意味かわかってんだろうなぁ!?」


 黒服の他の男たちも付いてきていて投げ飛ばした男の方へと駆け寄り安否を確認しているのか少し安堵した表情を見せ俺に向かって睨みつけてきた。


「睨むだけが黒狼なのか?」

「くそが、黒狼をなめるな!」


 こいつらの事は名前も知らないが子供に絡んでた奴をAとして他BCと名付けよう、まず黒狼Bがまっすぐ近づいてきて殴り掛かって来たのでその拳を避けてみぞおちに一発いれると黒狼Bはゲロ吐きながらうずくまってしまった。


「おい!」


 黒狼Aの一言で黒狼Cは俺の背後に回ってきた、背後から俺にタックルしてくるように見えたので横にズレて足を掛けると綺麗に転んでゲロがあった場所へと一直線に転げていった。


「うげぇきたねぇ」


 ゲロ吐いた男とゲロまみれになった男を見ていると黒狼Aが思いのほか近づいていたが俺の顔面目掛けて飛んできた拳を避けその腕を絡めとり一本背負いして黒狼Aを飛ばし飛んで行った方へ走って移動し黒狼Aのマウントポジションを取る。


「ぐぁっ…」

「さてっと、お前達が子供にやろうとしたことをしてやるよ」

「ちょっ待て!」

「壊れるまでなぁぁぁぁぁ!!」


 思いっきり拳を握って大振りで黒狼Aの顔面に振り下ろした……フリをして地面を殴る。


「なぁーんてな」

「ヒッ……」

「これに懲りたら子供相手にイキる…ん?」


 ちょろちょろと黒狼Aの股から音がすると思ったらションベンを漏らしてしまっているようだった。


「ションベン漏らしちゃってんじゃん、あーあぁきったねぇ、んじゃあ俺は飯食いに戻るからコレに懲りたらダサい事すんなよ」


 黒狼Aから離れると吐瀉まみれ男とゲロ吐き男、ションベン小僧は慌てて逃げ出した。

 遠くから子供達が覗いていたのか喧嘩が終わると子供が近づいてきた。


「あ、ありがとうございます!」

「おう、気を付けろよ」

「すみません家に帰る途中にファミレスに連れ込まれちゃって……」

「んな事してたのかよ……はぁ……まぁ怪我もねぇなら良かった」

「あ、もうこんな時間だ早く帰らないとお母さんに怒られちゃう」


  そう言って子供は走って帰っていった、自分が絡まれていたのに俺の事を心配して様子見ててくれたのかね、子供にしては良くできた子供だなぁと感心してオレはファミレスの中へと戻って飯を食う事にした。


 


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