みんなの危機一髪

ろくろわ

始まりの日

 ある日の遡ること三時間前。

 とあるアオンモールと呼ばれる商業施設で、及川おいかわは日本最大級の危機に直面していた。その事件が発覚したのは一日前、宇宙からの飛来物等を観測する沢山のモニターの一つの電源が切れている事に気が付いた。「どうせ何もないだろう」とゆっくり電源を入れた及川の目には、日本に向かって真っ直ぐに飛んでくる隕石の姿が見えた。そして隕石を発見した時には既に時遅く、緊急避難をした所で間に合わないところまで迫っていた。

 観測を見逃した明らかなヒューマンエラーであった。

 及川は直ぐに政府へ緊急宣言を行ったが、世界中にこんなミスを知らせるのを躊躇った政府は、自国で何とかすることにした。幸いな事に政府には、戦力を持たないが自衛のため、宇宙空間に防衛衛星を飛ばし、一回限りだが強力なレーザーを撃てる秘密兵器があった。


 対防衛レーザーシステム衛星機器『一発』


 全くもって皮肉な名称だ。

 だが及川の危機は隕石を見逃した事だけではなかった。あろうことか対防衛レーザーシステム機器『一発』の唯一のコントローラを少し目を離した隙に無くしてしまったのだ。見た目が仁天堂のスコッチライトにそっくりだった為、誰かに拾われたのかもしれない。起動には国家レベルのパスコードを入力しないといけない為、貴重な一発を発射されることは無いのだが及川が発射することも出来なくなっていた。時間はもう残されていない。


 及川は無駄だと分かっていたものの、発射コントローラによく似た仁天堂のスコッチライトを買い、青い顔のまま発射装置のコントローラーを見付ける為に、楽しそうにスコッチライトで遊んでいる子供達を横目に商業施設を探しまわるのであった。




 第二のみんなの危機一髪へ続く。

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