はじめてのまほう
翌日、式隆と日奈美は再び戦士ギルドに訪れていた。
「いや…それ、俺に話しちゃダメなやつだろ…」
「あんたには知っといてほしくてさ」
目的は、ギルドマスターのダヴィドに計画のことを話し、協力を求めるためである。
「さすがに初対面のやつをいきなり全面的に信用とか無理だし、それにギルマスとしてじゃなくてダヴィド個人に話すだけだから」
「いや、だからなんでだよ」
「万が一失敗したらここには来れなくなるし、心配かけちゃうだろ?」
「……はぁ? なんで俺が心配すんだよ」
「俺だったらするし、ダヴィド面倒見良いから」
照れ隠しをまともに受け取られ、おまけに大真面目な顔でそんなことを言われて、思わず渋い顔になる。
「…わーかったよ。で、手伝ってほしいことって?」
「計画への協力とかじゃないんだ。ただ──」
「どう? 分かる?」
「──っは、い…! なんか流れてる、感じ、が、します…!」
式隆の求めた協力は、日奈美には魔力感知を、そして自分には身体強化魔法を教えてもらうことだった。
日奈美に魔力感知を教えるのは、魔法士ギルド紅彩級の鑑定魔法士、ウーノである。
「修得までにかかる時間は個人差あるけど、二日間はさすがに難しいかもしれないよ?」
「いえ、それでもやります。どうぞよろしくお願いします!」
そんなやり取りを経て訓練が始まった。
魔力感知の修得には、最低でも五日はかかるというのがウーノの認識である。
魔法士になるにはまず、自身の中にある魔力を感じ取り、操れるようにならなければならない。
そのためにまず、日奈美の体内の魔力を循環させて感じ取らせようとしていた。
(反応が良い…。魔力に敏感なのかな。これなら三日というのも夢じゃないかも?)
教えがいがある、とウーノは内心で笑った。
一方の式隆はというと──
「オマエ…教えてもらいに来たんだよな?」
「そのはずだったんですけど…」
ギルド内にある訓練場にて、巻藁を拳で粉砕していた。
初めは日奈美と同様に魔力の循環を行った。
しかし、式隆の背に手を当て魔力を循環させた指南役のランデは、眉をひそめた。
「いや…相当使い慣れてるだろ、身体強化」
「おぉお…!これが魔力ぅ……!」
式隆は興奮の表情を浮かべていたが、それは徐々に悲しげなものに変わっていった。
「すっげぇ慣れ親しんだような感覚…なんだろうこのコレジャナイ感…」
しかしすぐに表情を明るくする。
「まぁでも初めての感覚には違いない!よ~しやるぞ~!」
そして5分後、巻藁を粉砕し現在に至る。
やったことと言えば、身体強化魔法の概要と使い方を教えてもらった程度である。
身体強化魔法は、自身の体内にある魔力を強化したい部位に集中させ、その部位で循環させて強化するものである。魔力量と循環速度で強化度合いが決まるが、あくまでこれは体内での強化にとどまり、強化部位の体表に行き渡ってはいない。それ故、同時に体表の強化も行うことで、身体強化魔法は完成する。
二つの魔法を並行して発動しなければならないこと、他の魔法と違って本人の感覚に依存するものであることから、魔法の中では難しい部類に入る。
「記憶が曖昧、か。どっかで修得したんだろうけど、これはなかなか…」
「…まぁでも、使うまでに5分はかかったわけだし、取り敢えず咄嗟でも使えるようになるレベルを目指して頑張ろうかナー」
死んだような目で式隆はそう言った。
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