第8話

「ここね。 ここにくるまでに大きな穴がたくさんあった。 あれがモンスターの仕業かも」


 メリムがそう洞窟の前にたつ。 おれたちはここに来るまでに数体デカイネズミや角のあるウサギを倒してきていた。


(やはりメリムはかなり強いな。 モンスターを簡単に倒した)


 モンスターはほとんどメリムが簡単に倒してしまっていた。


(でも、かなりかたい地面に穴があった。 あれをあけられるなら人間にも穴をあけられるな......)


 慎重に暗い洞窟へとはいっていく。


「でもくらいね。 光をともしましょう」


 そういうと魔石を鞄から取り出した。 メリムが額にあてると、魔石が光を放ち洞窟のごつごつした岩肌を照らした。


「明るくなった!」


「魔石に魔力を込めて、明かりにしたの」


「どういう原理?」


「魔石は魔力を込めると、人の思いを叶えてくれる。 といっても小さな願いだけどね。 神剣についてるでしょ」


 そうおれの剣を指差した。


「ああ剣についてた宝石か。 これも魔石なのか」


「ええ、でも神剣の魔石は所有者しか使えないわ。 他の人にとっては無用ね」


(これなんの効果もないんだけど......)


 背中の剣をみる。


 メリムは光る魔石をかがけて、ゆっくり慎重にすすむ。



「傭兵も逃げ帰ったって何がいるんだろ?」


「まあ、私が知る限り、傭兵はそこまで強い人たちはいないから」


「そうなの」


「ええ、だからあまりあてにはできないの。 ほらあそこ......」

 

 メリムにそういわれてみた曲がり角のさきに、大きな何かがうごめいていた。


「あれは、蛇? 黒い鱗みたいなのが全身にあるけど?」


「......スケイルイールよ。 全身が鎧みたいな鱗でできてるウナギみたいなモンスターよ」


「また固いやつか...... ならさっきのを試してみるか」


「わかった! まず私が囮になるわ」


 メリムはスケイルイールを横切る。


 するとスケイルイールはメリムに気づき、地面に潜りながら、その体を上下させてすすんだ。


(よし! 次に地面からでたときだ!)


 剣を構えると脚と腕を限界まで縮めて、タイミングをはかり地面をけった。


 ビッュ!! バシュッ!!


 高速で後ろから地面からでたスケイルイールを切りつける。


「ギィィイ!!」


 鱗を切り裂くと、スケイルイールは激しく暴れた。


「任せて!!」


 鱗のはがれた場所をメリムは切りつけた。


「ギイィイイ!!」


 スケイルイールの頭が六つに開くと、そのままメリムに向かっていく。


「あぶない!!」


「大丈夫!!」


 メリムの剣が輝き光と衝撃が放たれる。 スケイルイールがのけぞり暴れる。


(今だ!!)


 空に浮かぶとスケイルイールの頭上まであがる。


(体を限界まで縮めて! 発射!)


 ドオン!!


 そして空気を貫くように飛ぶと、スケイルイールの頭にぶつかり、その体を地面へとめり込ませる。 


「ギィィイ!!」


 スケイルイールはそう声のようなものを発した。


 おれは地面でバウンドする。


「いたた! さすがに体が痛い! あいつは!」


「大丈夫! やっつけたよ!」


 地面にめり込んで動かないスケイルイールをみて、メリムはいった。


「ふぅ、よかった...... メリムさっきのは?」


「大量の魔力を消費して一瞬だけ魔力を放てるの光の衝撃波ね」


「それで、あのモンスターが暴れたのか......」


「あっ!」


 走りだしたメリムの方をみると、奥の台座に刺さる剣をみていた。


「よし! 試そう!」 


 メリムは剣の柄をもちひっぱる。


「ぐぎいい! はぁ、はぁ、ダメだ! これも違う......」


「まあすぐ見つかるものでもないよね」


「トーマも試してみてよ」


「えっ? でもおれもうあるけど?」


「複数の神剣を持つ人もいるの。 さあはやく」


「さすがに......」 


 おれはあり得ないといいながら、その短めの剣をにぎる。


 スポッ!!


「あっ! 抜けた」


「えええ!! なんで!! トーマばっかり!!」


 メリムが地団駄をふんでくやしがっている。


「いや、おれにそういっても」


 困惑しながらおれたちはスケイルイールを引っ張って町まで向かった。



「嘘だろ...... こいつを二人で、しかも神剣までぬいちまうなんてな」


 喜ぶ町の人たちの中、スケイルイールをみて酒場の店主は驚いている。


「正直逃げ帰ってくんじゃないかとおもってたぜ! 悪かったな。 助かったよ! これは代金だ」


 じゃらじゃらと中身がなる袋を渡してくれた。


「ありがとう!」


 メリムが笑顔で受けとる。


「あのこれ」


 手に入れた剣を店主に見せる。

 

「そいつはお前さんのもんだ。 この町の奴らはだれもぬけなかったんだ。 その剣を人のために役立ててくれよ」 


 そう酒場の店主がいうと、皆が同意して歓声をあげた。

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