第7話
「ここに神剣があるの?」
「ここから東にあるクアトロ洞窟にあるって聞いたことがあるわ。 でもその前に、仕事がないか探しましょう」
大きめの町を歩きながらメリムはそういう。
「そうだな。 さすがに旅の資金が必要か...... でもこんな子供に仕事なんてあるの?」
「トーマがいれば大丈夫」
おれが不安でつぶやくと、メリムがそう笑顔でいい、ある店の前にたつ。
「臭い、お酒か......」
「ええ、酒場、はいるわよ」
中にはいると男たちが明るいうちから、机で飲んだくれている。
「まだ昼だぞ......」
「前はこんなにいなかったけど」
そう不思議がりながらメルムはカウンターへと向かう。
恐ろしい人相のスキンヘッドの店主がこちらを、ギョロとみる。
(ひぇ、こわっ)
「どうした嬢ちゃん...... ここは子供の来るところじゃねえぞ」
「わかってる。 仕事がほしいの」
「ウェイターは間に合ってる。 今は不景気でね」
「ちがうわ。 ちょっとかして」
「あわっ」
メリムはおれの背の剣を抜いた。
「それ!? あんた神剣士か!」
「いいえ、剣を抜いただけ...... です」
「だが、すげえな。 始めてみたぜ」
興味深そうな顔で店主はおれをじろじろ見ている。
「ということは、ハントの依頼だな」
「ええ」
(ハント?)
「クアトロ洞窟に最近デカイモンスターがでてな。 そいつのせいで畑にでられない農夫があの様だ」
そう店主はアゴで机に突っ伏してる男たちをさした。
(それであの人たちは飲んだくれてるのか)
「依頼があるのね」
「ああ、だがもう傭兵もやってはくれん。 何人か受けていったが逃げ帰ってきた。 かなり強いやつらしい。 命がけだぞ」
「かまわないわ」
「ええ!?」
おれは驚いた。
「じゃあ、頼むぜ。 後払いになるがいいか」
「いいわ」
メリムはそう受けると、酒場の外へと出ていく。
「まさか仕事ってモンスター退治なの!?」
「ええ、そうじゃなきゃ私たち子供が食べていくのは無理よ」
「た、確かに...... そうかそれでおれならって言ってたのか」
「ええ、神剣はすごい力を持ってるからね」
「でも、大丈夫かな」
「あのアイアンクラブはかなり強いの。 ここらじゃ数十年は見ないぐらい。 それ以上じゃなきゃ私だけでも倒せるわ。 そのために何年も鍛練したから」
自信満々で力こぶをみせメリムはいった。
(確かにあの巨大なハサミを剣で受けきるメリムなら、モンスターとも戦えるか...... あの時おれはどうやって倒したっけ?)
考えながら、町の外へと向かう。
(えっと、神剣の魔力か...... いやちがうな。 体を浮かせて体をバネみたいに飛んで剣を......)
「そうか!!」
「きゃあ、急になに! びっくりした!」
「あっ、ごめん! ちょっと戦いかたを考えてて」
「戦いかた? アイアンクラブを倒した方法、よく覚えてないんだよね」
「ああ、うん。 でも思いだそうとしたら......」
(いや、でもあの浮くのとかをどう説明する。 何か力、そうだ!)
「多分だけど、神剣の魔力なんじゃないかな」
「えっ? 魔力」
「ちょっと思い出してやってみる」
そしておれはフヨフヨと浮いて見せた。
「すごい!! 浮いた!」
「魔力を込めると浮けるんだ。 そして......」
おれは腕四本をコートのなかで伸縮させ、足を支点に跳ねた。
「うお!」
ドン!!
高速で地面に落ちる。
「すごい! 速すぎて見えなかった!」
メリムが驚いている。
(タコの腕は柔らかいが90%は筋肉だったはず、それを収縮して解放、放出すれば高速で移動できる。 でも、地面に当たったとき受ける衝撃は少ないな。 これも柔軟性のなせるわざか)
「そうか! それであの固いアイアンクラブに剣を突き立てられてのね!」
「みたいだね。 でも手足がしびれるから、何発もは無理か、せいぜい二発かな」
「でもそれなら強いモンスターとも戦えるわ」
「うっ......」
(しまったーーー 余計なことをいったーー)
「それでその剣なんて名前にするの?」
メリムは聞いてきた、
「名前はないの?」
「ええ、ずっとあそこにあってなんの魔力なのかもわからないわ。 トーマが名前をつければいいよ」
「うーん、名前か......」
「なにか気になっている名前とかない?」
「そうだなメンダコ...... はだめ......」
「メンダコいいじゃない! その剣はメンダコね!」
「いや、う、うん......」
(ち、ちがうメンダコはだめだしって言おうとしたのに......)
「メンダコ、メンダコ!」
楽しそうに歌うメリムに後悔しながらついていく。
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