仔猫のムーは夢を見る

猫目じろ

プロローグ

猫はよく眠る。「寝子」というぐらいなので本当によく眠る。

仔猫ともなると1日の半分以上を寝て過ごす。

空木うつぎ家の飼い猫ムーも例外ではなかった。

夜はもちろんぐっすり眠るし、朝早く起きて朝食の催促をするため、まだ寝ている家人を起こし、軽く運動をした後は日当たりの良い窓際で何時間も寝た。

日が落ちかけて来た頃に起き出し、夕食の準備をする家人を遊びに誘い、腹いっぱいになったらまた窓側へ行き、すっかり暗くなった窓の外を飽きるまで眺めて時折にゃおにゃおと呼びかけていた。そうして満足すると寝床へ行き、また眠る。

これがムーの1日のルーティーンだ。


ムーは時折夢を見た。

行ったことのないはずの外国の景色を眺めたり、見たこともない不思議な生物と出会い、時には二本足で歩き、華麗にステップを踏んでみせた。


夢の中ではなんでもできるのだ。


そして、このムーは本人こそ自覚していないが、不思議な能力を持っていた。

他者の見る夢と繋がる事ができるのだ。

本人が自覚していないのでコントロールする事はできないが、ラジオのチューニングを合わせるように、ムーが眠った時にたまたま波長のあった者と夢を共有していた。

悲しいかな、子猫の脳みそでは夢の内容を毎回忘れてしまうのだが、なんか寝ると楽しい事があるぞ、という感覚だけが残っているので、ムーはこのを楽しむために、また今日も夢の世界へと旅立つのだった。


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