いつかかならずころしてやるからな。

鳳 繰納(おおとり くろな)

現在:骨董屋にて

 夜明け前の歌舞伎町かぶきちょう乱痴気らんちき騒ぎから日常に戻る人の波を遡上そじょうして、一人の男が雑居ビル群に向かっていく。ビルの地下に降りる階段の横に「antiqueアンティーク SUWA」と書かれた看板がかかげられている。ぱっと見ではわからないような小さな看板だ。

「どうも」

錆びついたドアを開けて、男が店内に入る。店の中には売り物の骨董品こっとうひんが並んでいて、壁際では天井に届くほど高く積み上がっている。

「ああ、大仁ひろとさん」

ガラクタの山から店主が顔を出す。

「しばらくぶりですね。二、三年ぶりくらいですか?」

店主の声かけにも反応せず、大仁は店の商品を物色している。

「何か良いものは入りましたか」

山と積まれた商品に視線を向けながら、大仁は平坦な声で店主に問いかけた。

「そりゃ、良いものは色々入ってきますけどね」

店主が雑然ざつぜんと積まれた商品の中からいくつかの品物を選び取る。

「大仁さんがお探しなのはアレでしょう?『神殺し』。色々入ってますよ」

そう言って店主が取り出したのは、様々なアニメ・ゲームの武器を模した装飾品そうしょくひんだ。

「……ま、いわくばかりが先行してるまがい物ばかりですがね」

店主は小瓶をモチーフにしたなりきり玩具を両手に持ち、困った顔で振ってみせた。

「そうですか」

特に落胆らくたんした様子もない返答。

「ま、どうせハナから期待はしてませんよね。大仁さんが世界中探し回って見つけられなかった代物シロモノが、こんなところに持ち込まれるはずもないでしょうし」

大仁は軽口を叩く店主から目をらす。

「では、また。何か入ったら連絡れんらく下さい」

「ありがとうございました」

店主の挨拶あいさつを待たずに大仁はドアを閉めた。

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