通勤電車にて

文尾 学

大事な面接①

満員電車だ。

これだから通勤時間になんか電車に乗りたくなかったのに。だが、小生は就職活動の身。我儘など言っていられない。午前中の時間しか面接時間が選択できなかったのだ。それも運命だと受け入れることにして、朝七時半の電車に乗った。

そして、今、小生は脂汗を流している。

電車に揺られること二十分。腹が痛くて仕方がない。

なんでこんなことになったのか。昨日何を食べたのかすら、腹が痛くて思い出せない。そんなことに頭を使ってしまうと、肛門を閉じている電気信号が途切れてうんちが流れ出てしまうかもしれない。

危ない状況だ。

一瞬の油断も許さない。肛門の穴にとにかく全身の力を込める。お尻の強度は鋼にも匹敵しているだろう。それでもギリギリだ。

新宿駅に着くまで残り四十分。果たして耐えられるだろうか。面接時間は九時十五分。かなり余裕を持って電車に乗った。予定では八時半頃着いて、そこから面接会場まで十五分程歩く。会場付近に三十分前には着いている予定で動いていたが…。

「ふーーーー」

サラリーマン包囲網によって身動きは取れない。ずっと同じ体勢というのは腹に負担がかかる…。そして、右隣のサラリーマンがとてもタバコ臭い。

いや。他のことを考えるのは止めよう。お尻のことだけ考えなければ。目を閉じ、お尻の穴に更に力を込めた。


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