第22話
大浴場のある町一番の宿。その大浴場に今、カトレアとフタバはいた。
カトレアは困っていた。自分の中身が男だと知ったら、殺されないだろうかと。そして女であることにホッとしていた。男だったら確実に股間のゾウさんがマックスパワーしていた。
フタバは美少女だ。背は小さいが、出るところはしっかり出ている。非常にメリハリのある体つきだった。何よりも、腰が細くてくびれが素晴らしい。
「めっちゃガン見してくるじゃん」
「っ! すみません!」
笑うフタバに謝るカトレア。
二人は体と頭を洗い、一緒に浴槽へ入る。それなりに大きい浴槽で、お湯は常時流されているため非常に清潔に見えた。だが、カトレアはそのお湯を全部自分の魔法で作った新しいお湯に総とっかえした。
フタバはカトレアのこの行為に激しく同意した。
「分かる。分かるよ、カトレア。その気持ち。この世界、お風呂事情がめちゃくちゃ悪くて、お風呂の中で一か月分の垢を落す人とかいるから。女性でも、だよ」
「それ聞いたら、もう溜まってるお風呂入れません」
「王宮でもお風呂のお湯張りはかなり大変で、頻繁に変えてくれなかったくらいだからね。たぶんこのお湯も流されてるだけで、循環してるだけだよ。だからお湯を換えてくれて助かる」
フタバとカトレアは笑いながら一緒にお風呂に入った。
しかし、それにしても、フタバの距離が近い。浴槽はそれなりに広いが、カトレアとフタバは肩が触れ合うくらい近い距離にいた。
カトレアは女子同士だとこんな近くでお風呂入るんだー、と呑気な事を考えていた。
フタバはカトレアの近くに寄っても拒否してこない事に安堵していた。
実はフタバは転生前の日本では男性よりも女性が好きな女性だった。つまりレズビアンと言われる者だ。それも、かなり手の早い方であり、気に入った女の子にはアタックしまくり、ノーマルの女の子をその道に引きずり込むような面も持ち合わせている。そんなフタバはカトレアの様子を見て「あ。この子、落とせる」と直感で感じた。これはフタバの持つスキルではなく、完璧に前世の経験則から来る勘であった。
フタバの手がススと動き、カトレアの手を握る。
ぴくり、とカトレアが反応するが、拒絶することはなく、握り返してきた。そして、二ヘラと笑みを浮かべる。カトレアは嬉しそうな顔をしていた。
「嫌じゃない?」
「え、別に嫌じゃないですけど」
カトレア的には美少女とお風呂に入れた上に、手までつなげてラッキー、くらいにしか思っていなかった。中身が童貞のおっさんであるため、女心を察するスキルは持ち合わせていない。
対してフタバは「これはヤレる」と確信していた。とんでもないメスである。
その後普通にお風呂を出て、カトレアが部屋に戻るとしばらくしてノックの音がした。扉を開けるとユウキが立っており、カトレアの様子をみて何やら言いたそうな顔をしていた。
「? なにか?」
「カトレアはフタバの事、どう思っている? あ、余計なお節介かもしれないっていうのを先に言っておくよ」
カトレアはさらに疑問符を浮かばせ「どういうことですか?」と聞き返した。
「フタバがカトレアを狙っていることには気付いてる?」
ユウキの言葉に対し、カトレアはフタバがお風呂に大変執着していることを思い出した。きっと水魔法が使える自分はフタバからすれば絶対傍に置いておきたいメンバーだろう。そういう意味では確かに狙われていると言えた。
「ええ。何となくは。必要と思われているようで、嬉しく思ってます」
カトレアの言葉にユウキは「そっか。分かってるならいいよ」と笑顔を浮かべる。
ここで両者の間には致命的な齟齬が発生していたが、訂正してくれる人物は近くにいない。
ユウキはカトレアに対し「フタバから性的な意味で狙われているよ」と伝えたかったのだが、カトレアは「お風呂要員で狙われている」と解釈してしまった。
そしてユウキが去ってしばらくしてから、フタバはお酒を持ってカトレアの元にやってきた。カトレアは美味しそうなお酒に目がくらみ、フタバを部屋の中に招き入れた。やたらと煽情的なパジャマだなー、などとドキドキしながらカトレアはフタバと共にお酒を飲み、そのままフタバに流されるままにベッドに横になった。
「えっ? えっ? えっ?」
「大丈夫。私に任せて」
突然のことに戸惑うカトレア。なぜか服を脱がされるカトレア。
妖艶な笑みを浮かべる煽情的な姿のフタバ。こちらも服を脱ぎ始める。
なお、詳細な描写は伏せさせていただくが、その後色々あった。
そして色々あって現在。フタバは震えながら土下座していた。
前世の世界でも、ノーマルな女の子を酒に酔わせてその道に引きずり込んでしまった時に一度だけ全裸土下座をしたことがあった。フタバの覚えている限り、この全裸土下座は二度目だ。
相手はカトレア。ただし、普通のカトレアではない。
邪神憑依状態のカトレアに対し、フタバは全裸土下座を敢行している。
「早速表に出れたと思ったら、まさかこんな状態とはね」
詳細な描写は伏せさせていただくが、フタバの超絶技巧に翻弄されて意識を飛ばしたカトレアは割とすぐに目を覚ました。その目を覚ました状態が、この邪神憑依状態のカトレアだ。
カトレアは自身の状態とフタバの全裸土下座姿を見て微笑みを浮かべる。
「仲良くしてくれてありがとう。私の予想以上に仲良くなっててくれてびっくりよ」
「はい! 申し訳ありません!」
「いいのよ。怒ってないわ。この子も満更でもなさそうだし」
カトレアの言葉にフタバは内心で「よし。次もヤレる」とニンマリと微笑む。土下座状態のフタバの表情はカトレアから見えていない。
「それにしても、私はどうやらこの子が気絶すると表に出て来れるみたいね」
「そうなのですか?」
「今のところ、そんな感じよね。あ、でも、前回の時の怒りに我を忘れて私が出てきた時よりも、今の方が動きやすい気がするわ」
カトレアは全裸のままベッドから地面に降りると、ぴょんぴょんと跳ねてみる。そしてその場で後ろ宙返りをしたりして体の動きを確かめていた。
フタバはその身体能力に驚きを隠せない。そして、カトレアのしなやかな裸体が目に焼き付いて大層興奮していた。
「んー。自由に動ける体って新鮮で良いわね」
大きく伸びをするカトレア。
纏っている雰囲気は禍々しさをジワジワ放出する邪神状態であるが、その表情や仕草は女性らしさが際立っており、フタバには魅力的に見えた。むしろ、魔性の女っぽい雰囲気が出て、大変よろしい! と思っていた。
そんなフタバの様子に気が付いたカトレアが微笑む。邪神とは思えない、天使のような微笑みだ。
「フタバちゃんだっけ? せっかく自由に動けるようになったし、ちょっと構ってあげるわ」
「えっ? えっ?」
フタバはカトレアに手を取られ、ベッドに転がされる。
カトレア(邪神ver)の身体能力の前に、フタバの抵抗は全く意味を成さない。
「生身の人間を相手にするのは数百年ぶりなのよ」
ぺろり、と舌なめずりするカトレアに、フタバは背筋が凍るような思いと、高揚感を同時に感じた。
色々と詳細は省くが、邪神は腐っても神であり、神業というものをその身をもって体験したフタバは、朝まで意識が戻らなかった。
そして翌朝。
「あは♡ カトレアお姉さま♡ おはようございます!」
「え!? なに!? 昨晩ナニが起きたの!?」
ユウキはおかしくなっているフタバと、顔を真っ赤にしてプルプルしているカトレアを見て、目を白黒させるのだった。
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