第22話 仮想敵国
ルージュピーク演習場の一角に停留してる第2戦団の陸上戦艦『朱雀』に、御堂機と入鹿機は帰艦した。入鹿が
「ねえ。さっきの模擬戦、手加減した?」
「いえ、してませんが?」
「そう?」
「何か、僕の戦い方が変でしたか?」
「いや、そうじゃないんだけど・・・」
漠然とした違和感を感じたが、その理由がわからない。
(・・・まあ、いっか)
考えるのを止めて、気持ちを切り替えることにする。
「パイロットスーツ脱いで着替えたら、交流会に行こうよ」
今回の合同演習は、ホスト役をナーガオウ州軍が努めている。そのルージュピーク演習場の管制塔中央ホールで、帝国近衛軍・イルドラ公国軍・ナーガオウ州軍の兵士同士の交流を目的とした立食パーティが開かれる。ナーガオウ州軍からは「全ての兵士が積極的に交流を深めて欲しい」旨のアナウンスがされていた。
「司令からの通達を見てないんですか?」
「何それ?」
入鹿は、近くにいた整備兵から携帯端末を借りる。その端末で第2戦団の電子掲示板にアクセスして通達を御堂に見せた。
「
「え?」
通達は第2戦団司令官・
「帝国とイルドラ公国の友好関係を構築するイベントなのに、相手を仮想敵国みたいに扱うのってどうなのかしら?」
「第2戦団の仮想敵国ですから」
入鹿の即答に、御堂は首を捻る。
「じゃあ、何でこんな友好イベントの合同演習に第2戦団が参加したのよ?」
「イルドラ公国との開戦の口実を探してるんじゃないですか?」
御堂は大きくため息をついた。報道機関を通して、この合同演習は3国のみならず地表圏あるいは宇宙圏に伝えられるはずだ。衆人環視の中で不用意な行動を起こせるはずはない。
「あのねぇ。自分が猜疑心の塊だからって、有馬司令までそう言う人間だと決めつけるのは良くないわよ」
「貴女が馬鹿だからと言って、周りの人間全てが馬鹿ではないんです。馬鹿と鋏を使いこなせる人間がいるものです」
「どう言う意味よ?」
馬鹿と鋏・・・のフレーズが、御堂の感情を逆撫でする。反射的に、入鹿の
入鹿は返事をしないまま、更衣室へ向かって歩き出した。仕方なく、御堂もそれを追いかけた。
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