第48話とある看守side

 あ~~~、この色ボケ爺やっと死んだか。

 まさかこんなに長く生きるとは思わなかった。歳も歳だ。直ぐにくたばるとばかり思ってたのに。


 爺さんの愛人と元息子二人はとっくにあの世だ。



「ふぉふぉふぉ。検体としても、もってこいの体じゃのう」


「先生、本当にその遺体持って帰るのか?」


「おう!許可も取ってあるぞ。それに誰も引き取りに来んじゃろう?」


「それはまぁ……」


「そんな遺体を有効活用するのが儂らの仕事じゃ」


「そうか……」


 何に使用するのかは聞かない。

 病みそうだからな。聞きたくない。


 給料の良い仕事だが、やっぱりロクな仕事じゃないぜ。看守ってのは……チクショウが!!


 平民にとって職業選択の自由はあってもないようなもんだ。どんな仕事であれ選り好みなんて早々できるもんじゃない。俺のような孤児なら尚更だ。


「ところで坊主、お前さん、まだこの仕事やるのかい?」


「他に良い仕事なんてないですよ」


「ここも大概じゃろ?お前さんなら軍隊に入れるぞ?」


「軍隊は……結構です」


「そうかそうか~。まあ、この仕事は似たり寄ったりだからのう」


 あそこは別の意味でヤバイ。

 近衛よりマシだろうが。ま、平民の俺じゃあ、近衛には入れないが。


「それじゃあの、検体貰っとくぞ」


「どうぞ」


「そうじゃ、一つ良い小遣い稼ぎがあるんじゃが、手伝わんか?」


「しません」


「欲がないのう。お前さんでも出来る仕事じゃぞ?遺体の分解」


「絶対にしません」


「そうか……それじゃあ、骨を砕く仕事はどうじゃ?」


「絶対に嫌です」


「ふぉふぉふぉ。残念じゃな。じゃが、仕事にあぶれたら何時でも儂のところへおいで。歓迎するよ」


 イカレタ爺さんだが、意外に面倒見がいい先生だ。

 もっとも仕事内容によるが。


なら大歓迎ですよ。先生」


「助手の仕事は普通じゃぞ?」


 そんな不思議そうな顔で見ないで欲しい。

 先生の場合『助手』といっても何をするのか分からないからだ。危険な仕事ではないだろう事は分かるが。絶対に碌なもんじゃない。精神的にきつそうだ。衛生面でも期待できなさそうだ。


 グロテスクな世界に飛び込むほど俺は人間を止めてないんだ。




 その後、先生がしたと新聞を賑わすようになる。


 実験体重犯罪者が役だったと笑いが止まらないらしい。

 もう90歳を超えてるっていうのに元気な人だ。

 あれは100歳まで生きるな、絶対に。



「儂は死ぬまで現役じゃ!死ぬまで医学の研究を続けるつもりじゃ!!」


 記者のインタビューにそう答えていた。

 そして今日も元気にこの地下牢にやってくる。


「坊主~~~!ケーキ買って来たぞ!受刑者の分もあるからぉ~~~」


 間延びした独特の高音。相変わらず元気そうだ。

 因みに先生、そのケーキどこで買ったものだ?そして受刑者用のケーキにはんだ?そこのところの線引きはやっておかないと不味い気がする。


「坊主は心配性じゃな。ちゃ~~んと国の許可は取っておる」


 ということは、国がこの地下牢を先生に明け渡したと……?

 そういうこと?


 俺、転職しようかな。


 この地下牢が先生の実験場と化す前に。



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