第40話とある財務省事務次官side
なんてことだ!
宮廷貴族と近衛騎士団の振る舞いのせいで五大侯爵家と各辺境伯家からの税収が減ってしまった!
「事務次官!このままでは国の運営に支障が出てしまいます!!」
「そんなこと分かっている!」
ああ。なんて忌々しい!財務大臣のバカな令嬢のせいでこの始末だ!何故、よりにもよって侯爵令嬢と辺境伯令嬢の二人に喧嘩を売ったのだ!!
あのバカ令嬢は自分が何をしでかしたのか最後まで理解していなかった!大臣は立派な方なのに!娘が足を引っ張っている!!
来年からの予算。
どうすれば……。
無理だ。
どうやっても足りない。
辺境伯令嬢は留学して国にいない。
侯爵令嬢に掛け合い許しを得る他ない。
「謝罪に向かおう」
「事務次官!?」
「辺境掃伯家は無理だが、侯爵家ならば……」
「大臣もお連れしますか?」
「その方が良いだろう」
娘のことで謝罪されているし、賠償金も支払っている。
それでも許されない。当然だろう。王家に次ぐ侯爵家の後継者だ。寄り子貴族達も挙って非難している。
大臣は何度も謝罪に伺っていると聞いた。その都度、門前払い。手紙一つも返事がないらしい。それでも止める事はできないのだ。私の提案にも快く受け入れてくださった。何度も「迷惑をかける」「娘のせいですまない」と仰られていた。
財務大臣の娘は、国で最も厳しい修道院に入れられている。
北方の冬には寒さで死ぬ者もいるという極寒の場所だ。
長男の縁談も破談になったと聞く。次男は婿入り先から無一文で離縁されたと。
やらかした子息や子女は多い。
本人達だけでなくその家族をも不幸のどん底に落とした。
ある者は自暴自棄になり、ある者は屋敷に引き籠って出てこなくなったと聞いた。
許されない。
それでも許されるまで謝り続けるしか方法がない。
「大臣、行きましょう」
「……うむ……」
大臣と共に謝罪しよう。
許されるまでずっと。
そう思っていた。侯爵令嬢は怒っていたから。だからその怒りの矛先に我々も含まれていた事を理解していなかった。
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