第37話とある男爵令嬢side(文官)
どうしよう。
「女性特別採用制度」が廃止された。
私は辛うじて廃止される前に受けたから文官になれたけど、そうじゃなかったら文官になれていたかどうか分からない。
今年は女性の文官の数が例年よりも圧倒的に少ない。
それでも少なからず女性はいる。ただし全員平民だけど……。
これからは平民の女性の数が多くなると上司が言ってた。「女性特別採用制度」が廃止された分、一般採用の人数制限が大幅に増えたから。そうよね。「女性特別採用制度」は女性のための採用制度だけど、実際は貴族女性のための採用制度。平民出身は会場にさえ入れない暗黙の規則だったから。……縁故採用と揶揄されていた。だから採用制度を利用するのは宮廷貴族出身の令嬢だけ。領地持ちの貴族は絶対に「女性特別採用制度」を受けない。出世に響くと言って。
廃止を提案したのが侯爵令嬢だって聞いた。
うちの家がウォーカー侯爵家とカルセドニー辺境伯家に損害賠償を支払った。私の家だけじゃない。友達の家の殆どが支払った。そして彼女達を蔑ろにした私達は社交界から
ほぼ追放された。その事を知らない貴族はいない。私の親兄弟、親戚だということで社交界で肩身の狭い思いをしてる。茶会やパーティーへの招待は一切届かなくなった。国主催のパーティーには出られるけど、そこに私達の居場所なんてない。全て取りやめ。行く先々で笑い者にされる友人達が多数いると小耳に挟んだ時は気が遠くなったわ。
身分を弁えない、理解していない貴族モドキ。
それが私達だった。
どうしてあんな態度が取れたんだろう。
相手は雲の上の存在。
五大侯爵家に楯突いた私達に明るい未来なんて訪れない!
五大侯爵家と辺境伯家にそっぽを向かれたら国は維持できないと頭では分かっていても、心が付いていけてなかった。本気で国を捨てるなんてありえないと。彼らに見限られたら明日の食事すらまともにできないのだと思い知らされた。
問題行動を起こした息子と娘を持つ家は、次があれば潰すと言われた。
王家もそれを承認している。
「不敬罪で処刑されてもおかしくなかった」と言われた。
二度目はない。
次は間違いなく殺されるだろう、と――――
息子を廃嫡した家もある。
除籍処分にした家も。娘を修道院送りにした家も……。
それでも「当時は未成年だった。家が責任を取るのが当然だろう」と言われ、許してもらえなかったとか。
息子と娘を家から出して縁切りしたところで責任逃れは許されない。
寧ろ、トカゲの尻尾切りだと嫌悪された。
どうしてこんなことに……。
後悔と恐怖しかない。
そのうち家から勘当されるんだろうか?そうなると平民になるの?わからない。
見合い話もなくなった。
きっと相手側にも私の話しが伝わったんだ。
家に戻る事ができない。
戻れば針の筵だと分かっている。
だから歯を食いしばって文官で居続けるしかない。
文官なら官舎に住めるから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます