第24話元義兄の駆け落ち2
ロザリンドからもたらされた情報によると、元義兄は王都から離れた港町に小さな家を構えて暮らしていらっしゃるとか。
「結婚はしてませんのね」
「というか、出来ない状態ね」
「どういう事ですの?」
「男爵令嬢の結婚相手の老人が『花嫁が盗まれた』だの『誘拐された』だの言って大騒ぎして、方々に迷惑をかけているみたいだから。見つかったら間違いなく連れ戻されるわ」
「警察には通報されませんでしたの?」
「できっこないわ。警察に駆け込んで万が一、自分の事を調べられたらそれこそ本末転倒。ちょっと調べたら埃塗れの老人は大変よね~~」
「それはそれは」
「ま、父親の男爵は、既に成人した娘が自分の意志で出て行ったんだから、もう放って置けといった感じで放置してるから捜索はこれから先もないでしょうね。老人がぽっくり逝くかそれとも新しい七番目の妻が出来るのが先か。それによって結婚できるかどうかだろうけど。後数年は無理っぽいわ」
「まぁ、お気の毒に」
「全然そう思ってない癖に」
「私、お義兄様の裏切りを知った日から一晩中泣いて、その翌日には一生分の涙を流したんです」
「ご愁傷様」
「ですから、私はお義兄様も相手の女性も許すことはできませんわ。幸せを祈る?ご冗談でしょう。呪詛されなかっただけでも感謝して欲しいくらいですわ」
「うわ~~。ミネルヴァ、意外と怖い」
「乙女の純情を踏みにじったんですもの。当然でしょう?」
「そうねぇ。乙女の純情を弄んだ罪は重いわよね~~。その男も一族も社交界で“透明人間扱い”されても文句は言えないわねぇ」
それがバルティール伯爵家の現状。
宮廷貴族が社交界で“透明人間扱い”されては貴族としてやっていけません。それは伯爵家がよく理解しているはず。だからこそ、今も足掻いてるのでしょうけど……。一体何時まで持つか見ものだわ。
「ミネルヴァ、今すっごく悪い顔してるわ~~」
「そうでしょうか?」
「そうよ~~。悪い顔なのに楽しそうに笑って」
「ふふっ。伯爵家が何時気が付くのかと思うと、つい」
「? 何に気が付くっていうの?」
「勿論、今の状況がまだマシだということ。自分達が緩やかに没落していっているのを気付けるかしら?気が付いたら恐怖に震え続けるのかと思うとね」
「こわっ!ミネルヴァ怖い!鬼畜!宮廷貴族が知ったら恐怖で泣くわよ~~」
「では秘密にしておいてくださいね。ロザリンド」
ニッコリ笑ってそう言うとロザリンドは「当然!」と笑った。
これでロザリンドは私の共犯者。ずっと親友でいてくださいね、ロザリンド。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます