第21話バルティール伯爵side
ラシードを婿にと望む貴族が出た。
俄かには信じられないが令嬢の方が乗り気だった。
地方貴族の子爵家。
領地は狭いが立地の良い場所にあり、生産力はそれ程高くないが特産品がある。
交易で儲けている子爵家だった。
しかも子爵家は積極的に商売もしていて下手な伯爵家よりもずっと羽振りが良かった。はっきりいってバルティール伯爵家よりも遥かに金を持っていた。そんな子爵家がよくもまぁラシードを婿に望んだな?と不思議なほどだった。
最初はラシードとバルティール伯爵の評判を知らないのかと思ったが、そこは貴族兼商人。正確な情報を得ていた。
「実は娘は前からラシード殿に憧れていまして」
詳しく聞くと、なんと子爵令嬢は王立学園に所属していた。しかもラシードの一年下。
「なれない王都生活でラシード殿がなにかと声をかけて下さったそうです。ラシード殿は生徒会役員として対処していただけでしょうが、娘はいたく感動して……その、恋をしてしまったようです」
「なんと……」
「とは申しましても、相手は侯爵家と養子縁組なさっている伯爵家の御子息。身分的にも到底無理な事は分かっていたようです。ですがどうしても忘れられなかったようで……。王立学園を卒業した後は婿を貰わなければならないというのに、一向に相手を決めない有り様。娘に幾度も諭したのですが、本人は『ラシード様の事が忘れられないのに他の方となんて結婚出来ません!』と泣かれてしまいまして。ホトホト困り果てていた次第でして。そんな折に、バルティール伯爵家がラシード殿の結婚相手を探しているという情報を得まして。これはチャンスと思い婚約の打診をさせて頂きました」
「なんと……」
意外過ぎる展開に頭が付いていけない。
上手い話しには裏があるというが、今回に限っては事実だったようだ。
だが、ラシードは一度やらかしている上に未だに悪評が絶えない。
しかもラシードは未だに男爵令嬢に御執心だ。互いに政略結婚で恋愛感情がなければ、結婚後、子供を儲けた後で自由に過ごせばいい。大抵の場合は仮面夫婦として家庭内別居。互いに愛人を持ちながら、体裁だけは取り繕うという夫婦も少なくない。
私もサリムもラシードの結婚生活はそういうものになると思っていた。というかそれを織り込んで相手を探していた。
なのに……。
ラシードに惚れ込んでいるだと?
嫌な予感がする。
その令嬢はマトモなのか?
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