ショートショート「ガチウサギとカメ」

あるウサギさんがカメさんに言いました。

「ねえ、ぼくといっしょにかけっこしないか?まあ君みたいなのろま、ぼくに負けるに決まってるよね。」

「なにを言うんだウサギさん。そんなのやってみなくちゃ分からないじゃないか。」

「そんなに言うんならやってみようか?」

「よし、がんばるぞ!」

というわけでウサギさんとカメさんはかけっこをすることになりました。ゴールはむこうの山のふもとです。


「よーい、どん!」

かけ声と共にウサギさんはあっというまにカメさんをおいぬきました。しばらく走ったところでウサギさんはどうせかてるだろうと思い、おひるねを始めました。ところがウサギさんがねているあいだに、カメさんはウサギさんをぬきかえしてしまいました。

ウサギさんが目をさましたときには、カメさんははるかとおくにいました。ウサギさんはびっくりしました。


そこでウサギさんは念のために用意しておいた音速ジェット機、ラヴィットU350-900に搭乗しました。ジェット機はもの凄い速さでカメさんを追い越しました。それどころか向こうの山を越えて、空の彼方へ飛んでいってしまいました。

ウサギさんのジェット機は周囲の酸素を取り込んで燃料を燃やすのではなく、独自に開発した酸化剤を用いて燃料を燃やすことで高圧のガスを噴き出して推進することができるので、とうとう宇宙にまで行ってしまいました。


ジェット機は月に到着し、ウサギさんは大喜びしました。

「わーい、お月さまにまでやってきたぞ。お祝いにお餅を食べよう!」

ウサギさんは臼と杵とJAXUSA(ジャクウサ)の技術を用いて密閉したもち米でお餅をつき始めました。


地球のカメさんが山のふもとで言いました。

「ぼくより速かったかもしれないけど、山のふもとに先に着いたのはぼくだから、勝ったのはぼくだよ。」

油断するのは良くないけど、ガチになりすぎてあらぬ方向へ行くのも良くないよね。


めでたしめでたし

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