ショートショート「象が踏んでも壊れない」

 象が踏んでも壊れない筆箱って知ってますか?一時期話題になりましたよね。小学生の間でも人気になった筆箱です。あれね、開発にすごい時間かかったんですよ。そりゃそうですよ、頑丈な筆箱なんか中々作れないもんですよ。いや筆箱も苦労したんですけど、象の方も苦労しましたよ。実験やPRのために1頭飼ったんですけど、全然言うこと聞かないんですよ。  

 開発や象の購入に費用をだいぶ使ったせいで、調教師を雇う金もなかったんで、仕方なく社員で象を世話することにしたんですよ。しかし全員ど素人なうえに、象も気性が荒っぽいやつでしてね。毎回新しいの開発して実験しようとするたびに、社員の何人かが犠牲になってしまうんですよ。あの筆箱の裏にはそんなドラマがありましてね。

 その時、社員たちは絶対に自分は犠牲になりたくないと思って、何したと思います?筆箱の開発技術を自分たちの身体に転用させ、象が踏んでも壊れない超人間になったんですよ。できるんですよ、そんなことが。必死になればできてしまうんです。当時の社員たちはすごいことをしてしまいましてね。象が踏んでも壊れないどころか、鉄骨を捻じ曲げることができるし、刃物を通さないという体になってしまったんですよ。

 ということで遂に完成しました!「超人間が踏んでも壊れない筆箱」です!どうですか?買いますか?…え?これの開発の実験?もちろん何人か犠牲になってますよ。まあすぐ超人間になって甦りますけどね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る