ショートショート「一休さん」

「一休よ、この屏風に描かれた虎を捕まえてみよ。」足利義満は言った。

「将軍様、ではこの虎を絵から出してください。」一休は言った。

足利義満はこれに感服した。

 ここまでが現代に伝わっている話である。しかし、この話には続きがあった。義満はこの後、本当に虎を屛風から出したのである。実は絵に擬態させて、本物の虎を隠していたのだ。義満は屏風を取り外し、虎を出した。

「さあ一休、虎を捕まえてみよ。」義満は得意顔でそう言った。

しかし、一休は見事な縄さばきで虎を捕まえた。それどころか、虎を手懐けた。そして一休は虎に、義満を襲うように指示を出した。

 皆さんは不思議に思ったことがないだろうか。なぜ一休さんのお話は幼少期の頃のものしかないのか。なぜ足利義満の肖像画は坊主頭なのか。答えは簡単である。義満という存在は、一休さんに取って代わられたのだ。

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