#3(1)

「評定」のターンを終えた俺は缶ビールを片手に持つ。

もう一方の手でつまみ(裂けるチーズ)を取ろうとして、その手をぴたりと止めた。

俺の目はノートパソコンに釘付けとなる。

画面には1枚のCGが映し出されていた。

黒髪美少女の早希ちゃんが三つ指をついて頭を下げている。


>>……末永く、よろしくお願いします……。


「…………(尊死)」


ふぅ。危うく天に召されるところだった。

不意打ちは卑怯だぞ(もっとやれ)。

てか、この状況ってそういうことなの?あ、ログになんか書かれてある。


>>イベント/花咲早希/「一つ屋根の下」


これはもう完全に早希ちゃんの嫁入りで間違いない。

それにしても、新九郎くん、手を出すのが早いな。さすがはエロゲの主人公。この界隈では出会って即墜ち、即えっちも珍しくないから、まあ妥当か。

で、初夜は?ないの?ないのかー。

それは今後の楽しみにとっておくとして、最後にもう一度、CGを目に焼きつける。

せっかくの顔は見えてないんだが、耳を真っ赤にしているところがポイント高い。清楚な早希ちゃんの嬉し恥ずかしの感情が伝わってくる。


いつまでも見ていたいが、CGを閉じてゲーム内時間を進行させる。

今の年月は明禄8年の冬。

どうも春夏秋冬で進んでいくっぽい。

しかし、冬?

背景に犬山荘のあの寒村が見えているが、村の周りは緑の葉が生い茂った森が広がっているみたいだが……。

ダンジョン内だから常温なのだろうか。季節の意味とは?

でもまあ、これなら年中、畑で作物が育てられそうだ。

こんなイージーな環境で村人を飢餓寸前にさせていたのはやっぱり新九郎くんのお爺ちゃんが無能だったからで……お?


>>「訓練」中に花咲早希が「二段突き」を覚えました。


へいへい、新九郎くん、嫁に先を越されているぞ。

「真眼」なんていう思わせぶりな技能を持っているんだから、一之太刀とか燕返しとか覚えたりするんでしょ。だったら早くしないと……。


>>妖魔が犬山荘に攻めてきました。


あっ、間に合いませんでしたね。

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