ダンジョン都市を作ろう(戦国風美少女SLG)

あれい

#1

俺はしがないサラリーマン。

今の会社に勤めて早五年。

ハゲ上司のご機嫌をうかがっては小生意気な新人部下に気を使う毎日。

最近、ぽっこり出てきた腹がひそかな悩み。

そんなどこにでもいる平々凡々な奴だ。


この日、会社を退社した俺は少々浮かれていた。

なにせ明日からはゴールデンウィーク。

一週間、まるまる休みだ。

うちの会社は休みだけはしっかりくれる。

そのぶん給料ちょっぴり渋いが。

さて、連休中にやることと言えば……ゲームだよな?

寂しいとは言わせんぞ。

俺は自分の趣味に時間を使える栄えある独身貴族なのだ。

ハーハッハハ……はぁ。

……彼女、ほしぃ。


ちょっとおセンチな気分を味わいながらも、目的地に到着。

街の電気屋だ。

ここに来るのも久しぶりだな。

学生の頃はよく足を運んだものだが、社会人になるとなんだかんだ趣味の時間がとれなくなる。

最近は手軽にできるアプリゲーばっかりやっていた。

だが、今日のお目当てはPCゲーム。

ゴールデンウィークにがっつり腰をすえてやるつもりだ。


俺はゲーム売り場で足を止める。

うーむ、何にしよう……。

パッケージを手にとっては吟味していく。

多種多様な美少女、美女たちがえっちな衣装とポージングで俺を誘う。

が、なかなか俺の股間センサーにくるものがない。

え?もちろんR18指定のアダルトものだよ?それが何か?


そんなこんなで新たな嫁候補を探すこと数十分。

ふとカートのかごに平積みにされているゲームの山が目についた。

どうやら在庫処分のようだ。

近寄って中をのぞいてみる。

と、その中の一つに俺の目は吸い寄せられた。

タイトルは……「ダンジョン都市をつくろう(戦国風美少女SLG)」、か。

パッケージの表面は街のグラフィックのみ。

裏面も似たような街のそれ。

城郭のある城が写っているが、美麗でもなんでもなく、どちらかといえばチープ。なぜなら、3Dの全盛期にあって今時ドット調の2D絵。

しかもゲーム内容に関しての説明文は一切見当たらない。

……なんだ、これ。


戦国風美少女SLGと言うからには、パッケージに美少女の一人や二人のせないか、普通。売る気ないだろ、どこの会社だよ。

聞いたこともない会社だわ。

ちょっと失礼してその会社とゲームタイトルをスマホで調べてみる。

驚くことに検索結果ゼロ。

怪しい。怪しすぎる。

誰も買わないでしょ、こんなの。

在庫処分になるのも残当だな。


「ありがとうございましたー」


……買ってしまった。

気づいた時にはレジで財布を出していた。

ま、まあ、在庫処分価格でワンコインだったし、つまらなければ別のを買えばいいだけだし、なんの問題もないな!

さて、帰りにスーパーに寄っていくか。

今日の夕飯、それから連休中の食料を買っておかないと。


――#1――終――

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